第2話
引き続きのお付きあい、ありがとうございます!
明日葉 晴です!
本日2話目ですね。
よろしくお願いします。
前回のあらすじ
ごく普通の高校生、川本 空は不遇の死を迎える。しかし!不思議体験の後、赤ちゃんへと生まれ変わったのであった…
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赤ちゃんとなったアタシは、それから戸惑いつつも『ソラ』として過ごしていった。
初めのうちはそれはそれは苦労した。なんせしゃべれないし、自由に動けない。取れる行動が泣くか、じたばたするかの二択しかないのだから。
だけど、不自由は意外と感じなかった。何故なら、お母さんが凄い。アタシの取れる二択を組み合わせた行動を、全て正確に読み取り世話をしてくれたのだ。お母さんの鑑だね。
わかったこともある。
まずここは地球ではない。これは確定。なんせ魔法なんてモノがある。絶対に地球ではない。
しかし、時間感覚は地球とほぼ同じらしい。
文明はそれほどでもない。魔法があるからなのか、殆どのことに不便は無さそうだ。
家族はアタシ、お母さん、お父さんの三人のみ。
アタシの生まれたところは、『ニィガ』っていう村らしい。名前のわからん王国の、これまた、名前のわからん領主の治める土地にあるらしい。
そうしてアタシは、少しずつ情報を集めつつ、成長していって、六歳になった。
「誕生日おめでとう、ソラ。」
「ありがとう、お母さん。アタシはもう準備出来てるよ。」
「相変わらず、しっかりしてるわね。そしたらじゃあ、行きましょうか。」
「お母さんの娘だからね。わかった。」
半分は嘘だ。精神的には二十一歳だから、そりゃしっかりしなきゃね。
だけど、お母さんもしっかりしてるので、普通に育ってもしっかりしてたと思う。
ちなみにどこに行くかと言うと、教会だ。
この世界の人は、六歳になると色々な適性を調べることになる。
一種の身体測定みたいなものだ。
と言っても、教会の人に祈ってもらって、その人の基礎的な身体能力とか、魔法の相性とか調べてもらうだけだ。
ついでに言うと、別にこの時、身体能力が悪いからと言っても、鍛えても無駄ということはないし、魔法と相性が悪いからと言って、魔法が使えないわけじゃない。要は努力次第だね。
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「マリン司祭。いらっしゃいますか?」
「はい。リンナさんね。お元気?」
「はい。マリン司祭も息災の御様子で。」
「私もまだまだ元気よ。今日はなんのご用かしら。」
「娘が六歳になりましたので祈りを上げに。」
「あらあら、もうそんな歳になったの?時間が経つのは早いわね。生まれた時に祈りを上げたのが、ついこの間のよう。」
「ソラです。お久しぶりです。マリン司祭。」
「久しぶりね、ソラさん。もう立派なレディね。リンナさんのしっかり者がちゃんと受け継がれてるわね。」
「ありがとうございます。マリン司祭。」
この人はマリン司祭。教会は、自治とは別の権力がある。この村の教会の人はマリン司祭しかいないので、村長とは別で権力者なのだが、村の人とはとても親しく接してくれる。
結構な歳のはずなのだが、最初にあった時から全く変わらない。
「では、祈りに移りましょうか。この円の中に入って頂戴ね。」
指示された場所に行く。
「そこでじっとしていて頂戴ね。」
言われた通りにしていたら、マリン司祭が祈り始めた。するとアタシの周りに光が降ってきた。
「はい、おしまい。色々わかったわ。凄いわね。」
早いな。というより、何が凄いのだろう。
「ワタシには、どのような適性があるのでしょうか?」
「そうね。まず、身体適性は普通より少し高いくらいよ。鍛えれば、騎士を目指しても問題ないわ。知能適性も高いわ。現段階で成人と同程度とわかったわ。これだけで十分凄いわね。」
知能に関しては当たり前だね。精神的にはもう大人なのだから。これで普通並みと言われたら心が折れる自信あるよ。知能が高く、騎士にもなれる身体能力となったらそりゃ凄いだろうね。
後は魔法適性だけど、マリン司祭のニュアンス的にまだ何か来そうだな。楽しみだ。
「最後に魔法適性なのだけれど、まず、属性は全属性に適性があるわ。そして、現段階の魔力でも、私はこれ以上を知らないほどあるわ。全属性でもほぼないのに、この魔力の量は、私が生きてきた中でもいないわ。」
魔力の量に関しては全くわからなかった。そもそも、マリン司祭がどんな人に会ってきたかわからないしね。
その代わり、属性に関しては想像がついた。
属性とは、地水火風と光と闇と無の七つだ。普通は大体一つか二つの適性で、良くて三つというのが基本だからだ。
それが七つというと、大賢者並で、過去の英雄譚等にしか出てこないほどのものである。
ん?でもマリン司祭は全属性でそこまで驚いてはなかった様な…
まぁ、きっと魔力の量の驚きで消されたのだろう。アタシにはわからなかったけど。
「まぁ…!全属性の適性に、マリン司祭でもわからない魔力ですか!ありがとうございます。この子には能力に傲らず、正しく成長出来る様に努めて参ります。それが私に出来る唯一のことですから。」
「そうですね。私にはそれが出来ると思っていますよ、リンナさん。そして、ソラさん。あくまで、今日言ったことは適性。生かすも殺すも、正しく使うも悪く使うも、あなた次第。これはどんな適性にも言えることね。あなたがどんな生き方をしても私は責めないわ。ただ、私の願望を許してもらえるなら、その高い適性を正しく生かして欲しいわ。」
マリン司祭はいい人だな。正しく、公正だ。
なにより、やっぱりお母さんは凄いな。アタシに凄い適性があっても、それを気にせず、変わらずに育てるみたいだ。
「わかりました。神に、マリン司祭に、何より、父と母に恥じぬよう、正しく生きることに努めたいと思います。」
言ってから思った。あ、これ六歳のセリフじゃないな。と。
まぁいいか。知能は成人並らしいし。気にならないか。
そうして、教会を後にした。
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その夜。
「ただいまー。」
「お父さん、おかえり。」
お父さんが帰ってきた。早い。アタシが誕生日だからかな?娘の誕生日に早く帰ってくるなんていい、お父さんだ。
お父さんの名前はトーマ、この村の衛兵だ。
アタシはお父さんに、今日の適性結果を伝えた。
「そっか!凄いじゃないか!でも、だからって他の人を見下したり、理不尽に暴力を振ってはダメだぞ?力っていうのは、誰かの為に使って、初めて意味を持つものなんだからな?」
アタシは、この世界の両親がこの人達で良かったと、本当に思う。アタシがどうであれ、変わらない愛情を向けてくれる二人だから。
同時に、前の世界の両親を思い出す。前の両親も、確かにアタシのことを愛してくれていた。性格も世界も違うけれど。
どちらの世界の両親も、アタシに確かな愛情をくれる。それだけで本当に恵まれていると思う。
「お父さん、お母さん、ありがとう。大好き。」
急に言ったアタシに、二人は一瞬驚いたが、すぐに微笑んだ。
「お母さんも、ソラを大好きよ。愛してるわ。」
「お父さんも、ソラが大好きだぞ!それは絶対に変わらない!」
そう言って、二人はアタシを優しく抱きしめてくれた。
2話目まで読んで頂き、本当にありがとうございます!
明るい話が好きだと言うのに、また少ししんみりしてしまいました。
一応、ここまでがプロローグみたいなものですかね。
次回からどんどん物語を進行させたいと、思ってはいます。
お付きあい頂ければ幸いです。