〜美しい花にはトゲがある〜
甘く.鼻に残る匂いが私を包んだ。振り返るとそこには大きな桜の木…
「桜…っ」
憎き桜。
姉さんを私から奪った桜。
許さない。桜なんて嫌いだ…
今日は高校の入学式。綺麗に咲き誇る桜を恨めしそうにみているこの少女、野田春菜。
「入学式…行かなきゃ」
桜から目を背けるようにそそくさと体育館へ行く。
校長の話がかすかな聞こえる中、春菜はただ一人の家族だった姉のことを思い出していた。
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姉の春香とその妹の春菜は幼いときに両親を失った…。
しばらくは親戚の家を転々していたが、2人でマンションを借りて住むようになった。
狭い部屋だったが春菜はココが一番好き。
ある日春香が言った。
「桜の木のところでね.素敵な人に会ったの!とてもかっこよくて!どうしよ、こんな気持ち初めて!!」
春菜は幸せそうに恋をする春香を見守っていた…
でも、そんな春香には少しずつ異変が起きていた。
春菜が話しかけてもぼーっとしてなかなか気がつかない。
だんだん症状は悪化し、ついに春菜の声に反応しなくなった。
目は遠くをみている。
でも…。
目に表情がない。人形のようで…
春菜があせり初めた頃、
春香が帰って来なくなった。
次の日、春菜は姉から聞いていた桜の木へ向かった。
何故だろう?
絶対春香がそこにいると思った。
小さな丘の上には、立派な桜の木が一本。
花びらが散っている。
春菜を花びらが包んだ。甘く、鼻に残る匂いがする。
木の下には見慣れた顔が安らかに眠っていた。
桜の花びらはそれを祝福するかのように…姉まわりに積もっていた。
「姉さん!!姉さん!!」
わかっていた。
もうかえって来ないことくらい。
もう一人ぼっちになったことくらい。
「…っ…いやぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
残されたのは高校の制服を着た姉の死体と泣きじゃくる小学生の少女だけだった。
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小学生だった少女は高校生になった。
姉と同じ高校。
「姉さん....」
周りが少しざわざわしている。
あぁ、入学式おわったんだ…結局なにも聞いていない。
教室に戻ると、入学式らしい光景。みんなおとなしい。
春菜にだれかが声をかける。
「あのぅ…席隣なんです!!よろしくね。私は南。」
そこには黒髪のストレートヘアの女の子。
「ぁ。よろしく。」
私に話しかけてくるなんて。珍しい子。
そう。春菜は見た目が怖い。いつだってムスッとしていて髪は赤茶色。肩につくくらいの髪にパーマをかけて、ピアノだってじゃらんじゃらんだ。話しかけてくる人なんてそうそういない。そうゆう格好に憧れているわけではないが、過去を忘れたくて、昔の自分を捨てた。見た目だけでも。
自分を変えたくて。
「桜好きなの?」
南が聞く。
「嫌い…すごく。」
中身は悪いわけではない。むしろ昔からの優しい春菜だ。
「さっき見てたから好きなのかなぁって思った。」
「……」
すると先生が入ってきた。会話はそこで中断。
でもこの日から、春菜と南はいつも一緒に行動するようになった。
南はどことなく春香に似ていた。
姉と一緒にいるような気がして、春菜は南と一緒にいる時間がすごく楽しくて、大切にしていた。
一年後。
いつものように南と投稿する春菜。
「でさぁ.それが本当にウケて!!」
「あははは!!本当…ー」
下駄箱にさしかかったとき南が突然言った。
「ごめん、ちょっと先教室いってて!!」 そういって昇降口からでていった。
気に留めず教室で待っていると、南が帰ってきた。
「どした?」春菜が聞く。
「聞いてょぉ!!桜の下で素敵な人に会ったの!一目惚れしちゃった!!」
-------------え……………??
南の話によると桜の木の下に人影が会ったので気になり言ってみたらそいつに会ったのだという。
桜
素敵な人
姉さん
まさか。
ミナミモウシナッテシマウカモシレナイ。
「だ…だめ!!そいつはダメ!!」春菜は叫んだ。
教室中の視線を感じる。
そんなことはどうでもよかった。
ダメ!!
「なに....私に好きな人できちゃいけないの?」南が悲しそうに言う。
「ちがっ…」
「そんな子だったの?」
南は話してくれなくなった。
そして。
南は日に日に遠くを見る人形のようにぼーってするようになった。
姉と同じように。
そして
南も…失った
桜の木の下に眠る南は姉と同じ顔だった。
違うのは桜の木が姉と違う木だってこと。学校では大騒ぎになった。
校庭の桜の木の下で、少女が死んでいた、と。
春菜は悔やんだ。なんでもっとちゃんと止めなかったんだ、と。
ごめん…南
私は桜を許さない。
心に誓った。
それから数年経った。
春菜は社会人だ。
某大手会社の社長の秘書となった春菜は見た目は黒髪のまとめ髪。きっちりと着こなしたスーツ。数年前の面影はなく、できる女性の代表のような女になっていた。
ある春の帰り道。今日も遅くなってしまった…
「明日も社長は忙しいなあ。しっかりサポートしなくちゃ!!」
なんて独り言をいいながら、ある公園の前を通った。
春菜をあの嫌な匂いが包む。甘い、鼻に残る匂い。
春菜は顔をしかめる…
オイデ
何か聞こえた気がした。
オイデ
やっぱり…!!!!
公園を見ると桜の木の下に綺麗な顔の男性が立っていた。
春菜はあまり思考回路が回らなくなっていた。
桜の麗しい香りに酔っているかのように。
体がかってに動く…
頭の中は真っ白だ………
男性の前まで歩いて来た春菜はもう警戒心など忘れていた。
きれいな瞳。
吸い込まれるような。
ねえ…さ…ん…
み…なみ…
金髪の少し癖のある髪。すらっとした身長。
なんて素敵な人…
ね…え…さ…
みな…
春菜は恋に落ちた。
春香や、南と同じように。
数日後。公園の前は大騒ぎだった。
黒髪の女性が桜の木の下で眠るように死んでいた。
彼女の死を喜ぶように桜の木は一層綺麗に咲き誇り、花びらを散らしていた。
桜は、人の魂を吸い取って綺麗にサク。
美しい花にご注意を。




