9.報復
応援くださっている皆様、ありがとうございます。
本日2回目の投稿です。
今日はこれで投稿おしまいです。
「ダイアナ様、おはようございます。」
朝の登校直後に、クリスティーナに話しかけられた。
ユージィンはまだ来ていない。どうやら私1人に用があるようだ。
「クリスティーナ、おはよう。何の御用かしら?」
内心動揺しているが、私のこの悪役顔では悟られることはないだろう。クリスティーナは単刀直入に要求を言ってきた。
「ダイアナ様にお願いがあります。ユージィン様を私に返してください。」
クリスティーナからすれば、私は恋人を奪った憎い恋敵なのだろう。気持ちはわかる。恋人だったのに、あの掌返しでは、人間不信になりそうだ。だけど……。
「私にはどうする事もできません。ユージィンに直接働きかけるべきでしょう。かつての私もそうするべきでした。あなたの邪魔をしないで、少しでもユージィン様と笑い合う努力をするべきでした。」
私、良いこと言った!と思ったのだが……。
「……そんなの、手にした者の戯れ言よ。わかったわ。実力行使に出るけど、恨まないでね?私、あなたが昔から大嫌いだったから、遠慮はしないわ。」
クリスティーナの合図で登場した数人の男――全員やたらイケメン――に私は拘束されてしまった。
場所は講堂。
講堂の中央、演台のある場所に私は拘束されている。
クリスティーナが私の前に立って言った。
「ユージィン様には金輪際近づかないと誓ってください。……でないと、ひどいことになるわよ?」
「どうなるのよ?」
かつて自分がしてきた数々の嫌がらせが脳裏に蘇る。教科書破ったり、水をぶっかけたり、ハンカチ踏みにじったり……。これが因果応報というやつか。
「ダイアナ様の服を切り刻んでその裸体を晒す。これからこの場所で学年集会があるのはご存知ですよね?そういうことです。」
……。因果応報というには、あまりにもお釣りがくる。
「ちょっと!ひどすぎない?!私はそこまでやらなかったわよ!」
思わず叫んでしまった。
「結婚前の女性が多数の異性の前で裸を晒すなんて、考えただけで破廉恥ね!これで婚約は破棄!あなたの社会的地位も……元々評判は最低だったけど……失墜!!」
すごい計画だ。ユージィン様……ダイアナも酷かったけど、クリスティーナも中々です。女運なさすぎです。
クリスティーナの取り巻きの男達がナイフを持って私に近づいてくる。
「誰か!助けて!!」
「無駄よ。内側から鍵をかけてるもの。最も、鍵が開いてたとしても、ダイアナ様を助けるような人は誰もいないわ。」
そんな事ない!1人いる!
「ユージィン――――!!!」
私が叫んだ瞬間、物凄い音がして講堂のドアが吹っ飛んだ。
砂塵やドアの木片の向こうに―――黒い髪が揺れた気がする。
「クリスティーナッッ!!!」
低い怒声に身の毛がよだつ。こちらに向かってくるユージィンは既に金髪だったけれど、その迫力たるや。
男達はほぼ全員恐怖で逃げ出した。逃げなかった者は、「悪魔…………。」と、呟きながら床にへたりこんでいる。クリスティーナの顔には恐怖が張り付き、歯はガチガチ鳴っている。
ユージィンが怒るとこんなに怖いんだ……。
ユージィンは私の元に来て、私の拘束を解くと、「怪我は?」と聞いてきた。
「ないわ。」と答えると、よし、と息をついて、「では今からこの者達を断罪する。私の本当の名を呼ぶがいい、ダイアナよ。」と言った。