6.学園
夏期休暇が開け、聖パトリック学園に学生達が戻ってきた。
聖パトリック学園は中高一貫の貴族や金持ちたちが通うエリート学校。
私やユージィンはこの学園の高等部2年だ。
「おはようございます、ユージィン様、ダイアナ様。」
声をかけてきたのは、クリスティーナという、青い大きな瞳と長いプラチナブロンドの髪が美しい女の子。
紫色の髪に紫色の瞳、釣り上がった目と、典型的な悪役顔の私とは正反対に、どこぞの物語の主人公のように愛らしい女性である。
覚醒前のユージィンはクリスティーナと仲が良かった。庶子であるクリスティーナは、特待生として高等部からこの学園に通っているのだが、私が12年も足踏みをしているというのに、あれよあれよと言う間にユージィンと打ち解けていった。嫉妬に狂った私は、ありとあらゆる嫌がらせをクリスティーナにしてきた。なのに、挨拶してくれるんだ……。今は申し訳ない気持ちで一杯だ。
「クリスティーナ、今まで、その、ごめんなさい。」クリスティーナに今更届くかはわからないが、心の底からの謝罪を口に出す。
「何のことでしょうか?それでは私は行きますね。ユージィン様、後ほど。」
まあ、謝ってすむ訳はないか……。
ユージィンと言われた悪魔の方を見やる。私のことを愛しいとかなんとか言っていたけれど、クリスティーナを目の前にしたらどう思うんだろう。
「……何てことだ。平和でつまらぬと思っていた学園だったが、覚醒した眼でみると違うものだな。」
「お前の好きだった過去のユージィンは、あのクリスティーナに惚れていたぞ。」
「……そうでしょうとも。」
ええ、わかってますよ。今ならはっきりと分かっています。でも、そのユージィンの顔で言わなくてもいいじゃない。
「それも致し方ない。お前ではあの娘には太刀打ちできない。」
「……そこまで言いますか!」
女のプライドがポッキリと根元から折れる音がする。そりゃあ、クリスティーナは可愛いでしょうね。性格だってひねくれてないし……。
「あの娘、魅了の属性がついている。クリスティーナの標的になった男性に抗う術はないだろう。」
……何だって?!
「クリスティーナも悪魔ってこと?」
「いや、悪魔ではない。しかし、何かは私にもよく分からぬ……。」
*説明しよう!*
クリスティーナは乙女ゲーム「ときめきプリンセス2」のヒロインキャラクターである。
魔王はその悪魔的能力で、乙女ゲームのヒロインの持つ恋愛の底力を感じ取ったのだった!!
*説明終わり*
「しかし、覚醒した私には効かぬ!」
無駄にでかい態度でえらそうにしているユージィン改め魔王であった。
一方の私は、肩身が狭くて仕方ない。
学生達の態度から、ここでも壊滅的に嫌われていることがひしひしと伝わってくる。
今まで気が付かなかったなんて、本当にどうかしてた。
「見よ、あの怯えた小動物のような瞳でお前を見る者共のことを!お前に悟られまいと、そっと姿を消す者共を!」
……やめてくれ。穴があったら入りたい!
私は人を傷つけたゴミ人間です!
「さすが私の愛する人だ。私も誇り高い。」
他の学生達に嫌われ、避けられている私を見て、ユージィンは大満足で誉めそやすのだった。