表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/18

3.変身

「キャ―――――ッ!!」

あまりの事に、私は絶叫した。

「うるさい。何だと言うのだ。」

ユージィンが不機嫌顔で睨みつけてくる。顔の造作はユージィンなのに、髪の色と目の色が違う。

「髪が!黒い!目が!紅い!」

叫ぶ私の言葉に反応してユージィンが鏡を覗き込む。

「ほう…。私の本来の姿に近くなった。何故だ?貴様の言葉に反応したのか……。貴様がユージィンの中の私に気がついたからか?」

なんだかブツブツ言っているが、勘弁して欲しい。こっちは、今まで自分が成してきた事の意味に気づいて傷心だというのに。

黒髪のユージィンは、ツカツカと私の目の前にやってくると、真剣な顔で言った。

「貴様に興味がわいた。その傲慢な心根に加えて、見せかけの虚構に騙されない真実を見抜く力を持っているとは。」

「ななな何を仰ってるんですか。」

そうして、あろうことか、私の手の甲にキスを落とした。

「――――!?」

真っ赤になって、とられた手を奪い返す。婚約者だけど、ユージィンにはこんなことされた事は1度もない。

「貴様が私の本当の名を口にすれば、私は私の姿で現世にいられるのかもしれない。」

何を言い出しているのだろう。訳がわからない。

「さ、言うんだ!大・魔・王・様と!」

「えっと、何かの冗談でしょうか?」

「冗談なわけあるか!さあ、早く!」

「絶対に嫌!それよりも、私の好きな人を、ユージィン様を返してよ!」

私の言葉に、黒いユージィンは、はたと考え込んだ。

「……そうであった。貴様は見た目には騙されぬ人となりだったな。」

いや、もはや明らかに見た目も違うのですが。

「まあよい。いずれ貴様の方から言いたくなるはずだ。貴様の身も心も、全てがいずれ私のものだ。」

「――――ッ!?」

顔が赤くなるどころではない。心臓が嫌な音を立て、頭がガンガンする。

「私と貴様は婚約しているのだったな。都合がいい。」

そういうと、黒いユージィンは、さも愉快そうにハッハッハと笑った。


約束の時間が過ぎると、メイドがドアを開けてそれを知らせてきた。青ざめている私を見て、メイドは若干嬉しそうな顔をしたが、すぐさま取り繕うように無表情になった。

ふと、ユージィンを見ると―――金髪碧眼に戻っていた。これでは、私が騒ぎ立てした所で私が変な人になるだけだ。

それに、自分で言うのも悲しいが、ここでの私の評判は地に堕ちている。誰も私なんかの言うことに本気で向き合ってはくれないだろう。

それにしても、さっき、あんなに悲鳴をあげたのに、どうして誰も来てくれなかったんだろう。

この日は何故かユージィンの両親も見送りにきた。今までありがとう、と何故か感謝の言葉まで貰った。


こうして私は、落ち着かない気持ちで家に帰った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ