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16.終章

本日3回目の更新です。

むくりと起きたフランシスを見て、私は衝撃を受けた。その容貌が―――なんというか、イケメンぶりに拍車がかかっているのだ。

一刻闇に飲まれた恐怖のためだろうか、この短期間の間に見た目として7kgくらいは痩せたように見える。元々は恰幅のよいタイプだったが、目の前のフランシスはスレンダーなモデル体型。陰鬱な雰囲気も出てきてミステリアスな魅力になっていると言えないこともない。

ユージィンはフランシスの前にツカツカと歩いていくと、片手を差し出して言った。


「貴様、悪魔と取引はせぬか?」




その後、怒りの収まらない私をよそにユージィンとフランシスは悪魔の契約……ではなく、ふつうのちょっとした、ビジネスライクな取引をしたようだ。

つまりは、この聖なる礼拝堂で悪魔は倒された。悪魔退治の功労者はフランシス。その生き証人がユージィンと私の2人。

これで学園からは悪魔がいなくなったことになるので、ユージィンはどこぞから送り込まれてくるエクソシストに追い回される煩わしさから解放される。

一方のフランシスは、悪魔退治の実績を手にし、卒業後は教皇の元でエリート街道を驀進である。

フランシスにも偉いところがあって、一番最初に礼拝堂のガラスを割ったのはフランシスが仕掛けた小型爆弾だった。

生徒達を安全な場所に避難させ、悪魔退治に一般生徒を巻き込まないようにするための仕掛けだったようだ。そうして、その後撒いたスモーク煙に包まれて悪魔を退治する算段だったのだとか。

こんなに派手なことをやらかして、もし実際に悪魔が現れなかったら一体どうするつもりだったのだろう。

どうして生徒達が集まる礼拝堂で悪魔退治を考えたのかというと、礼拝堂の聖なる力を借りるため、だそうだが。


「この礼拝堂は、悲しいかな、カネと腐敗の臭いしかせぬ。聖なる力などはまったく持ち合わせていない」

ユージィンに断言されてフランシスはショックを受けていた。

「このような場所でいくら祈った所で、神になど届かぬだろう」

「そうなの……」

さっき、あんなに熱心に祈りを捧げていた私の立場は一体……。

「そういえば、ダイアナも真剣に祈っていたが。何を祈っていた?」

……答えたくない。

答えようとしない私を見てユージィンが言う。

「私ばかりダイアナの質問に答えている。これでは不公平だ」

……全然不公平だとは思わないのだけれど!

ふう、と一息ついて仕方なく答える。

「……平和の祭典なので、ずっと平和でいられるようお願いしていました。ユージィンとずっと平穏無事にいられますようにって」

「なんだ、その程度のこと。神などではなく私に言え。私が叶えてやる。……ずっと一緒だ」

ユージィンは、優しい眼差しで私を抱きすくめる。

ずるい。この顔はずるい。私はこの顔にめっぽう弱い。

それに、私の祈りには“世界平和”も入ってるんですけど―――そう思ったけれど、言われた言葉が嬉しくて。

思わず騙された事を許してしまいそうになったが、振り回されっぱなしは悔しいから。

私は暫くは許さないふりをしようと心に決めた。



***




その後、学園に再び平穏が戻ってきた。

ぼっちだった私とぼっちが好きなユージィンが一緒にいるのは変わらない。

しかし、嬉しい変化もあった。

ユージィンは、私のご機嫌とりのために可愛い使い魔を召喚してくれた。

見た目は生後2ヶ月くらいの長毛の黒猫。瞳の色はキトンブルーだ。撫でるとスリスリ甘えてきて超可愛い。


そして、私はひとつの決心をしたのである。

今私は嫌がるフランシスに頼んで聖書の勉強をしている。

この間のような事がいずれまた起きるかもしれない。今回はユージィンの演技だったけれど、実際に究極の選択を迫られたら―――その時、私はやっぱりユージィンの事を「大魔王様」と呼んでしまいそうだ。

それなら、魔力の回復したユージィンを止められるだけの聖なる力を私が身につければよいのだ。自分で復活させて自分で封じるだなんて世話はないが、今のところこれが1番良いアイデアに思える。

……道は果てしなく険しそうだが、他に方法も思いつかないので、やれることはやっていこう。

ユージィンの話を聞く限り、フランシスには徳は備わってなさそうだけど、徳は別の方に教えてもらうとして、まずは悪魔祓いの形式的なところから勉強を始めている。



「ユージィンのいる前で悪魔祓いについてなんて教えたくないんだけど。」

「仕方ないでしょう。ついてくるんだから。それより!どのページからやればいい?」

「やめておけば良いのに。それに、1番大事なのは徳なんだぞ。ダイアナには無理だろう。」

確かに、今まで悪事の数々を働いてきた元・悪役令嬢。人間の心を勉強中の一年生にとって道のりは遠い。


それでも、私は私で頑張ってみよう。

ユージィンとずっと一緒にいるために。



END




ここまでお読みくださりありがとうございました!

また、ブックマークや評価、感想をくださった方、ありがとうございます!とても嬉しく励みになります。


またいつか、気が向いたら続編を書くこともあるかもしれませんが、ひとまずは終了です。

ランキングにも載れて嬉しかったので、何かしらの小話は近いうちに上げたいなあと思ってはいますが……。12話~13話の魔王視点とか……。需要はあるのか謎ですが……。


また、別の長編も書いていますので、よろしければそちらも見て頂けると大変嬉しいです!

「乙女ゲームの攻略キャラに転生したけどヒロインを口説きたくありません」

https://ncode.syosetu.com/n6288ev/

「ときめきプリンセス(無印)」が舞台で、出てくるキャラは全然違いますが、なぜかルノワール先生だけは出演しております(笑)

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