15.悪魔は悪魔
本日2回目の投稿です。
「ユージィン……ちょっと、待って……」
ユージィンが何度もキスをしてくるので、私は身を捩って少しバランスを崩してしまった。ユージィンの腕に私の体重がかかる。
すると―――グチッと何かが潰れるような音がして、見る間にユージィンの腕が赤く染まった。
「……何、これ」
「…………」
まずい、という顔をするユージィン。
「これ、血糊…………」
よく見れば近くにトマトのヘタも落ちているではないか。
「ユージィン、まさか、騙したの!?」
「…………」
その後、答えるのを渋るユージィンを揺さぶって聞き出した所によると。
血を吐いて膝をついたのは全て演技だった。
血糊は予め仕込んであった。口からは主にトマトを吐いた。
魔法陣に捕らわれて動けないというのも嘘だった。
聖書の詠唱で髪が黒くなったのは、詠唱が効いたから。これだけは本当。
出るわ出るわ、嘘の数々。もう、真っ黒!!
「どういう事よ!!」
あんなに心配したのに、全部嘘だったなんて!信じられない!!
「……学園に悪魔がいるという噂が流れたろう。その後、悪魔退治を画策する囁きを耳に拾ったのだ。別に大したこともないが、せっかくだし、ちょっと遊んでみようかと……」
悪魔の地獄耳……。
「あ、遊びで済むような話じゃなかったでしょう!!」
心配した分だけ、自然と怒りへの振れ幅が大きくなる。
酷い酷いと責め立てていたら、ついにユージィンが開き直った。
「……そもそもダイアナは私を知らなすぎる。あんな魔法陣が効くわけないだろう。図柄を描くだけなら子どもにでもできる。魔法陣も聖書の詠唱も、得の高い聖職者が布いてこそのものだ。学生ごときが猿真似で試した所で効果なんてたかがしれている」
「私の無知に責任転嫁する気!」
「お互いを知る良い機会だったと、そう思うことにしようではないか」
「その意味では今回の件は大成功だ。あなたの心が知れたのだから」
先程のしおらしさから一転、ついに笑顔まで登場させてくるユージィン。
「……!あれ、あんなのは誘導尋問よ!!」
ユージィンが死んでしまうと思ったからこそ、出た言葉だったのに。死ぬどころかピンピンしていたなんて!
「無理強いはしないと言ったろう」
言葉で言いくるめられても全く納得がいかない。あの優しげな眼差しに完全に騙された!
「私を心配するダイアナを、最高に可愛いと思ったのは本当なのだが」
「もう騙されない!!それでちゃっかり世界征服しようとするなんて、本当に悪魔!!」
「悪魔に悪魔と言っても仕方ないぞ、ダイアナ」
「うぅ……」
2人から少し離れた場所に倒れていたフランシスは、痴話喧嘩の声で目を覚ますと、「こんな、馬鹿なオチだなんて……」と呟いた。