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《『桜庭姉妹の日常』シリーズ一覧》

桜庭姉妹の日常6:宇宙からの侵略者

作者: 賀茂川家鴨
掲載日:2017/06/10

桜庭菊花「ちょっと戦闘機を操縦しようと思うんだ」

 僕は自分の研究室で寝ていた。コードが頬に当たって痛いよ。

 固定されたパソコンのモニターが、机ごと、ぐらぐらと揺れる。

「うん?」

 一拍遅れて、どーん! と爆発音がした。

 また実験の失敗でもしたのかな?

 隣の部屋あたりから、ばたばたと慌ただしい足音がする。

 防災行政無線から、喧しいサイレンが鳴り響いた。

「……うん? えっ? 何かな?」

 僕はパソコンを操作し、防犯カメラの映像を映し出す。

 僕の部屋、所長室、実験室、廊下、階段、入口、屋外試験場……おや?


 今日はまだ朝だよね。

 どうしてこんなに暗いのかな?




 妹の初花そめかは、栗色の髪を纏めて、小さなポニーテールをしている。

 僕達は、姉妹揃ってロリだよ。

 さて、もうすぐ初花が来るころかな。

 どたどたと足音が近づいてきた。初花の顔を認証したドアが、自動で開く。

「お姉ちゃん!」

 初花が僕の部屋にやってきたので、いつものヘンテコなポーズをとる。

「僕は桜庭菊花さくらばきっかだよ。長い栗色の髪が自慢の、いまどきのJKさ」

 髪をさらりとかきあげて、どや顔で格好つけてみせる。

「菊花お姉ちゃん! それどころじゃないのです!」

「うん。そうだったね」

「でっかいU.F.O.が小さなU.F.O.を出して、ビームがとんできて、それで」

「うん。モニターを見れば一目瞭然だよ」

 モニターの中では、銀色のメタリックな円盤が、ふよふよと浮いている。

 あれは母艦かな? 研究室の敷地面積と同じくらい大きい。発見時の記録映像をちょいと解析すると、ステルス機能を解除した形跡が残っている。なかなか手強そうな相手だなぁ。

 母艦の周囲を、小さな幾何学模様のさまざまな物体が飛び交っているよ。

 小さなU.F.O.は研究所めがけて青白い色の光線を放っているよ。レーザー砲か、はたまたメーサー砲か。とにかく、着弾地点が爆発しているから、相当危ないことはわかるね。もっとも、いまのところは緊急用防壁と企業秘密のバリアが防いでくれているから、研究所は安全だよ。

「父さんの開発した防衛用の無人戦闘機と地対空砲で正当防衛中だね」

「でも、あんまり戦えていないのです」

「戦闘兵器と優秀な防御壁があるだけ十分だよ」

「ここまま放っておいたら、都市のほうがぐちゃぐちゃになってしまうのです」

 一応、自衛隊がもうすぐ到着するはずだけよ。でも、ここは桜庭重工の私有地だから、普段は使えない〈アレ〉を試してみたいかな。

「僕達で食い止めないとね」

「そうなのです」

「非常事態だから、多少の兵器を使ってもいいよね?」

「核とか毒ガスとかはだめなのです」

「わかってるよ」

 僕はキーボードに暗証コードを入力し、無人戦闘機の遠隔操作権を握った。

「この機体は、僕がちょこちょこと弄って遊んでいた戦闘機だよ」

「物騒なのです」

「うん。まさか本当に使うときがくるとは思わなかったよ。こんなものが流通したら大変だから、戦闘装備だけバラしちゃおうかと考えていたところだしね」

 でも、ちょうどよかった。

 デバイスにお手製のゲームパッドを繋いだ。自作のソフトウェアを用いて、ゲームパッドと機体の操作システムと同期させる。あとは、マイク付きヘッドフォンを装着して、これでよし。

 僕の腕の見せどころだね。



 機体の自動チェックが完了し、モニター越しに周囲を確認する。

 僕は内戦を開いて、研究室全体に繋いだ。

《父さん、聞こえる? いまから僕の機体を遠隔操作で飛ばすよ》

 マイクに声を入れると、部屋中に僕の声が響き渡る。

 即座に、画面の隅に表示中のローカルSNSに、父さんから「OK」と通知が届く。お許しも出たし、ひと暴れしようか。

《周辺に異常なし。緊急発信!》

 僕は多少格好つけて発進した。

 機体は旧加速し、空気を切り裂く高い音がヘッドフォン越しにうなる。

 初花は爆音が轟くたびに、びくびくしている。

「お姉ちゃん。怖いのです」

「まあまあ、ここは安全だから。のんびりと見といてよ」

「のんびりできないのです!」

 初花は、僕にしがみついたまま離れない。

 しょうがないなあ。

 僕は視界に入った小さな鉄器を追尾ミサイルと機銃で撃ち落していく。

《敵機撃墜》

 僕は母艦を探した。ステルスで隠れてしまったようで、見当たらない。

 けれど、レーダーにはしっかりと映っている。映像モードを切り替えてワイヤーフレーム表示やサーモグラフィー表示してみると、丸見えだね。

《鉄器発見、レールガンを照射するよ。カウントは三秒》

 僕は周辺の無人機に一時退避命令用のコマンドを送る。

 僕の目前にいた味方機体が、自機の背後で援護をはじめた。

 ちょうど逆V字型になっている。

 僕は機体を減速させて、その場で滑空する。

 後方の味方機体は近くの小型敵機を誘導ミサイルで撃ち落していく。

 戦闘データを一瞥したところ、機銃だと効かないみたい。硬い!

 研究所付近からも誘導ミサイルを発射して、しっかりと牽制する。

 敵の機銃は、バリアとで弾き返すよ。

《三、二、一、照射!》

 爆発が起こり、母艦のステルスが消える。

 ぽっかりと穴のあいた空中母艦は、爆発、煙を噴き上げて炎上した。

「わお……」

「すごい爆発なのです。映画を観ているようなのです」

 いやいや……。ふつう、こんなに爆発するものかな?

 弾薬庫でもやっつけたのかな。核爆発だったら困るなぁ。

 まあ、U.F.O.だから、内部構造なんてよくわからないけどね。

 小型機は統制を失ってポトポト堕ちていく。

 母艦は傾き、ゆっくりと浮力をなくす。

「お姉ちゃん、このままこっちに堕ちて来たら、危ないのです」

「バリアがあるから平気だよ」

「周りの施設にバリアはないのです」

「う、それは困るなぁ」

 ミサイル発射装置は、バリアの外に置いてある。

 バリアの展開と安定は結構複雑な機構でできているので、いちいちバリアの展開と解除をする暇はない。バリアの中でミサイルを撃ったらミサイル発射装置が砕け散るので、バリアの外に置いてある。

 僕としては、ミサイル発射装置よりも、U.F.O.母艦のパーツがなるべく壊れないような形で、回収できたらいいな、と考えている。

「うーん……どうしよう」

 あ、そうだ。

 僕はオートパイロットにして、全機体に帰還命令を出した。

 マウスとキーボードを操作して、アレの準備に入る。

《コード三! 急ぎ目で!》

「どうするのですか?」

「僕達を格納すればいいのさ」

 研究所やミサイル装置は、一斉に地下へと格納されていく。

 強力なエアー衝撃吸収機能つき。本来はほとんど揺れを感じない。

「揺れているのです」

 急ぎ目だから、ちょっと揺れる。

 格納が完了し、別区画からのカメラが敵母艦の墜落を確認する。

 ちょうど自衛隊機が応援に来た。

 お父さんは自衛隊に周囲の安全確認と敵機体の監視を要請した。



《調査班は僕についてきて》

 別区画から陸上作業用ロボットを遠隔操作して派遣した。

 前面黄色で、ところどころ黄色と黒の警戒色になっている。キャタピラ式で、マジックハンドみたいな鉄製のアームが二本ある。メインカメラは全方位に対応している。作業用だから、戦闘能力はほとんどない。僕がこれを戦闘用にするなら、加工をがんばって、全パーツをチタン製にしてみたいな。経費がすごそう。

 僕の機体の後ろには研究員が操作する同じ型のロボットがついてくる。

 上空には自衛隊のヘリが一基、滑空している。

 調査をはじめるよ。




 安全の確認ができたので、研究所は地面から生えてきた。

 僕はU.F.O.の分析結果をまとめている。

「何だろうね、この素材」

「鉄に見えるのです」

「地球上の物質じゃないみたいだね」

「つるつるで、ひんやりしているのです」

「軽いのに、とっても硬い」

 細かい分析はお父さんが主軸になってやっている。

 でも、変な性質ばっかりで、まだまだ、よくわからないみたい。

 調べてみたら、動力炉やレーザー発射口らしきものが見つかったけれど、これは素材を除いて、桜庭重工の企業秘密レベルの技術なら作れそうなものだった。似たような素材で代用できそうだ。

「うーん。不思議な素材だ」

 もし加工ができるなら、今度は宇宙船でも造ろうかな。



 今日の特別報告書。U.F.O.が襲来、正当防衛として、これを撃墜した。

 U.F.O.の目撃情報が相次いだけど、襲ってきたのはここだけだった。どうしてここを襲ってきたのかは、わからない……。いろいろな最新技術が結集していることに恐れをなして、侵略しにきたのかもしれないね。

 

 今日の反省。調子にのって、ミサイルを撃ちすぎたこと。

 経費がすごいことになったよ!

 うん。お父さんが頭を抱えるくらいだから、相当だね。

 何かこの埋め合わせをしたいのだけれど……。


 僕は菊花にある提案をされて、さっそくモデリングにとりかかる。

 数時間かけて印刷し、表面をやすりで削る。

 スプレーで油を落とし、塗装する。

 調子に乗って動力もつける。それから……。


 後日。

「お父さん、これあげる!」

 僕が動かした戦闘機の100/1フィギュアを作ってあげた。

 ラジコン操作で飛ばしてみせたら、泣いて喜んでくれたよ。(了)

 賀茂川家鴨「桜庭重工という環境、ピエール・ブルデューのいう『文化資本』、社会階層……」

 桜庭菊花「かもさんがまた電波発してる。ねえ、かもさん。U.F.O.キャンディー食べる?」

 賀茂川家鴨「はあ、ではひとつ。……何ですかこれは。メタリックな色合いですが」

 桜庭菊花「くるくるキャンディーのU.F.O.デザインだよ。メタリックな味がするよ!」

 賀茂川家鴨「鉄の……個性的な味がします……」

 桜庭菊花「鉄分たっぷりだよ!」

 桜庭初花「美味しくないのです」

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