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てことで始まりました。
VRMMOで書こうと思ったら、なぜかメカモノに……。
誤字脱字駄文がフンダンに盛り込まれておりますが、一文字でも読んでいただければ幸いです。
四月。ほとんどの人が新たな生活を始める月だ。例年よりやや寒く、まだ微かだが雪が残っているのは土地柄だろう。
歩道のあちらこちらには、溶けかけの氷が張っている。普通に歩くにはあまり気にならないが、日陰だとまだ溶けていない氷がトラップのように路面を占領していた。
この時期に履く靴だと転倒は免れない。
街の中心街を歩くのは通勤途中のサラリーマンやOL。それに学生が主だ。碁盤の目のような構造をしたこの街はところどころに信号が設けられており、一定間隔で切り替わる。
そんな道を歩いている人々は春用のコート着たりマフラーのみを首に巻く。おろしたての制服を身に纏う学生たちも例にもれずだ。
数名のグループで歩いているのがほとんどの中、最後尾にポツリと一人の少年が歩いていく。
「少し鈍い。ネオ、反応速度をプラス5に修正」
少年は首のチョーカー型マイクに手を添えてこの場にいない人物に話しかける。
『了解しました。反応速度をプラス5に修正……完了しました。いかかですか?』
「うん、イイ感じだ」
『マスター、本日の路面状況はあまりよろしくないようです。お気をつけて』
「姿勢制御は任せるよ。まだ歩いてるって感覚がどうもしっくりこない」
『私もです。車イスと違い、歩行者補助装具は不慣れなのです。ですから、あまりご無理はしないで下さい』
歩行者補助装具――下半身に何かしらの障害を抱えた患者が身につける装具。腰から足の先まですっぽりと身に着けるのこの装具は、主に患者の歩行のみを補助する装具。その中でもAI搭載型は高価で、挙動をAIが管理し装着者の指示で微調整ができる。中々手に入らない代物だ。
車イスに代わるこの装具をリハビリも兼ねてつける患者は多い。強化外骨格:PSの技術を医療に発展させた簡易版PSだ。
『前方、赤信号に変わります』
「見ればわかるよ」
通常、この装具に搭載されているAIは装着者の歩くという行動のみを補助する。道に小石があろうがそのまま踏みつぶし、目の前から車が突っ込んでこようがそのまま進む。それはAIの管轄外で、装着者の意思で回避する。装着者の周囲の状況を把握するような高度なAIは搭載されないのだ。
この時、たしかに数歩先の信号は青信号が点滅している状態だった。
「こりゃ、目を瞑ってても安全に着くな……やってみるか?」
『御冗談を。それにお忘れですか? 私は方向音痴なのですよ』
「あぁ……やめとこう」
『それが最良の選択です。それに、今日は車の通りも多い』
信号が変わるのを待ちながら、ネオと呼ばれる高性能? AIと談笑をする少年。
道路を走る車の量は、ネオが言うように通勤ラッシュと合わさってやや多い。
車道も歩道と同じような状態らしく、行き交う車は速度を落として安全運転している。現に、車道の上にに設けられた電光掲示板では、速度規制四〇キロと表示されていた。
信号を待っていると、先を歩く生徒たちを見ながら少年はあることに気付く。
「これ、捕まったか?」
一定間隔で信号が設けられていた信号の中でも、ここの信号は特に変わる頻度が遅い。
『どうやらここが一番交通量が多い道のようですね。残る信号の数と今の歩行ペースだと――――』
「クソ、間違いなく遅刻だ」
信号は今だに変わらず。少年が少しイラつきを見せ始めていると、
『おや、後ろからまだ来るようです。走ってこちらに向かってきてますね』
少年が振り向くとネオが察知した通り、後ろの方から息を切らせながら小走りで走ってくる女生徒が一人。長く明るいブロンドヘアーを靡かせながら、寒さと走っているためか、頬は少し赤く蒸気している。
「ハァ・・・・ハァ・・・・」
息を切らしながら、少年の横で膝に手を当ててやっとここまで来たという感じで息を整えている。
『どうやらお仲間がいたようですね』
「いや、仲間がいようがいまいが遅刻という事実からは免れないからな」
そんな少女を横目にネオと少年は言う。
少女は息を整え終えたのか、一つ深呼吸をしてから少年を見て、
「ふぅ……貴方も一年生?」
「そうだけど、君も?」
「そうよ。今どの辺りかしら?」
「えーっと……ネオ」
『残り620メートルほどでしょうか。』
「ネオ?」
少女が首をかしげながら言う。
「あぁ、スピーカーモードオフのままか」
そう言うと、少年は首のチョーカー型マイクのスイッチを押す。
『御初に御目にかかります、私がネオ。この方のAIで御座います』
「ずいぶんと流暢で抑揚のある声でしゃべるAIね……」
蒼い瞳を丸くして驚く少女。
「初めはこんなヤツじゃなかったけどな――ってそんなこと話してる場合じゃないな」
『一回でも信号で足止めされれば、遅刻確定の時刻です。急いで』
いつの間にか進行方向の信号は青に変わっていた。
少年と少女は一度顔を合わせ、そろって駆けだす。ここからは信号に捕まったら最後。全速力で走る。
『ここから信号までの距離はさほどないです。このまま速度を緩めずに行けばギリギリ――』
だが、少年と少女の速度はだんだんと差が出てきた。
先ほどまで走っていた少女は、額から汗が出るほどで苦しい表情に。かたや少年は歩いていたためまだまだ余裕な表情。
「くっ……貴方は先に行って。私を待つ理由はないでしょう」
息を切らしながら、細々とした声で言う少女に、
「女の子一人残して、一人悠々と先に行くほどクズじゃないよ」
「貴方バカなの?」
「バカで結構。次の信号で一旦止まるぞ」
そこで少女の表情が一変した。苦悶の表情から鋭く突き刺すような眼差しを少年に向ける。
「いいから行って! 私に恩でも売るつもりでしょ? そんなことさせない!」
「はぁ? 何言ってんだよ」
「私をカルヴァート家の娘と知ってお近づきにでもなろうって魂胆でしょう?」
「カルボナーラ家? 美味そうな家名だな」
『マス――――』
「貴方! 侮辱する気?」
『マスター、前方!!!』
少年と少女のやりとりを遮ったネオの声で二人は我に返る。
信号は赤に変わり、車が行き交う。
チョーカー型マイクから危険を知らせるアラートが鳴り響く。
「ヤバッ!!」
少年は信号すれすれで急停止できた、が――――
「きゃっ!!」
すぐ後ろを走っていた少女は止まろうとした途端、目下の氷で足を滑らせた。
勢いそのまま車道に突っ込む。別車線の信号は青に切り変わった状態。
そこに、猛スピードで突っ込んでくるスポーツカーが現れた。速度規制を無視した速度で、少女目がけて突っ込んでいく。
『マスター、急接近する車を感知。このスピードでは衝突します!』
「ネオ! プリセットⅡに変更、制御任せる!!」
『プリセットⅠからⅡに移行。ソフトアクチュエータをフルパワーで解放、行けます!!』
身に付けた歩行者補助装置に備わった人工筋肉が地面を蹴る力を感知。生体筋肉の何十倍というパワーを生み出す。
その力が舗装されたコンクリートの地面を陥没させ、少年はたった一足で弾丸のように車道へ飛び出す。
「間に合えええええええぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」
車道に飛び出した少女に気付いた運転手はブレーキをかけているが、減速しきれていない。
(ぶつかるッ!!)
自分の死を一瞬想像し、少女は恐怖で涙をためた瞳をギュッと閉じる。
スピードを殺しきれないスポーツカーがもう目の前にいた。
車と少女がぶつかる。次の瞬間、
何かが触れたのを少女は感じた――――
ガンッ!!とぶつかった音がする――――
しかし、その衝撃は少女の身に降りかかる一歩的な質量をもった衝撃音ではなく、
少女は怖々と片目だけ開く――――
必死な表情で歯を食いしばる少年がいた。
少年は空中で少女を受け止めて――――スポーツカーとすれすれでぶつかり態勢がくずれたが、かまわず反対側まで一気に飛ぶ。
コンクリートの地面を少年は少女を庇いながら、勢いよく転がる。
やっと止まったころには、おろしたての制服は汚れ、一部は裂けている有り様だった。
数人の通行人が二人の傍に近寄り、声をかける。
「君たち、大丈夫かい!」
反応がない。応答がないことに焦った通行人。
「これまずいぞ! とりあえず救急車呼ばないと!」
「んっ……」
そこでぼんやりとだが少女の意識が戻った。
体の所々に痛みはあるものの、生きているということだけは理解できた。
「女の子のほうは意識が戻りました! もう一人、男の子はまだです! はい! お願いします!!」
通行人が電話で救急車を呼ぶ。
そんな中、一人の通行人の女性が少女に問いかけた。
「大丈夫? どこか痛む?」
「だ、だいじょう、ぶ」
「良かった。今、救急車呼んでるからね!」
「は、はい……」
そこで少女は助かったという安堵からか、また意識が飛んだ。
ほどなくして、救急者が到着。
少年と少女はそのまま最寄りの病院へ搬送された。
はい、今回はここまでになります。
次回更新は……未定です。
なんせ、突発的に書いてるものなんで、設定やら諸々は穴だらけ。
片目過ぎたら書く前に燃えつきてしまうのですw
仕事の合間や休みを使って頑張ります。
ではでは。