番外編~『お悩み・質問投書箱』でみんなの悩み、質問に答えてみよう!~
俺の名前は鳴海宇宙太。都立星海学園高等部の二年生。突然だが、俺のクラスには『金星人』の女生徒が留学?をしている。
細かいことは省くが、今から数か月前、突如東京上空に宇宙船が飛来した。それに乗っていたのが今俺のクラスにいるシルキーという名前の女生徒なのである。
そして、俺は彼女と、もう一人学年が一つ下の美空翠ちゃんの三人で、『お悩み相談部』といった部活動をやらされている。
毎日放課後に集まっては、様々な生徒の悩みを聞き、それの解決を目指す活動だ。基本的には。
「宇宙太ー!なにぼさっと外なんか眺めちゃってるの?孤高の一匹狼気取りなの?」
「違うわ!俺だってぼーっと静かにしていたい時があるんだよ」
「なにそれ、青春の無駄遣いじゃん」
「やめて悲しくなるから」
シルキーは性格が明るく、誰とでも気楽に接することができるタイプなのだが(本人曰く、地球人に興味があるとのことだった)俺に対しては時々辛辣な言葉を投げかけてきたりする。ほんとやめてほしい。
「こんにちは~。お二人とも、いつも仲良いですねえ~」
そんな的外れなことを言いながら、後輩の翠ちゃんが部室へとやってきた。初めてここに来たときは悩みを相談する側だったためか、おどおどと緊張している様子だったが、今ではすっかりここの空気にも馴染んできているようだ。
「翠ちゃんおつ~!さて、今日は二人にお仕事があります!」
「ん?仕事?」
「いったい何ですかね~?」
「それは、ジャン!これです!」
そう言って手に持っていた箱を長机の上に勢いよく置く。
置かれた箱には『お悩み・質問投書箱♪』と書かれていた。とてもカラフルな文字で。
「なにこれ?こんな箱あったっけ?」
「ほら、悩みはあるけど直接話すのは恥ずかしい人とか、私たちに聞いてみたいことがある人とかいるかもしれないじゃん?と思って今朝設置しておいたの!私賢い!」
「ふ~ん・・・。で、仕事ってのは投書された内容に対する返答ってことか?」
「そういうこと!宇宙太一ポイント!」
「そのポイントって集めたら何かいいことがあるんですかね」
「それは内緒!翠ちゃんも頑張ってポイント集めてね!」
「はいっ!頑張ります!」
いやいや、そんな謎ポイント集めてどうするんだ・・・。翠ちゃんも、律儀に返事しなくていいと思うよ?
そんなやり取りをしつつ、俺たち3人は投書箱の中身の確認を始めることにした。うわ、結構入ってるな。
「それじゃ、3人で順番に読んでいこっか」
「はい、あ、私ホワイトボードに回答記述する係やりますね」
「翠ちゃんありがと~!一ポイント!」
「やった!」
「じゃあ宇宙太から、はい!まず一枚目!」
「お、おう。じゃあ読むぞ。えっと・・・『シルキーさんの好きなタイプを教えてください』だって」
「え?私??う~ん・・・好きなタイプ、と言われても・・・。まだ地球に来たばかりだし、どんな人達がいるか知らないし・・・。」
「テキトーでいいんじゃないか?こういうのは、『優しい人』とか『気遣いのできる人』とか、当たり障りのないこと言っとけば質問者も納得するだろ」
「そうゆうもんなの?じゃあそれでいいや!」
「いいのかよ、ほぼ俺の意見じゃねえか」
「えっと・・・『優しくて気遣いのできる人』っと」
「はいじゃあ次!私の番ね!『僕はクラスでぼっちです。同じぼっち仲間として宇宙太君とお友達になりたいです』だって!あははは!宇宙太ぼっち扱いされてる~!!」
「おい!ちょっと待て!俺は別にぼっちなわけじゃねえ!!」
「宇宙太先輩・・・可哀想・・・」
「翠ちゃん?俺別にぼっちじゃないからね?そんな哀れんだ目で俺のこと見るのやめてくれる?」
「で、回答は?ぼっち同士仲良くしてあげなよ~!あははは!」
「お前はいつまで笑ってんだよ!別に友達になるのは構わないけど、どっちにしろ一度ここに来てくれたらいいんじゃねえの?」
「『ぼっち同士仲良くしようぜ!一度部室に遊びに来いよ!待ってるぜ!』っと。こんな感じですかね」
「翠ちゃん?いや翠さん?だから俺はぼっちじゃn」
「翠ちゃんナイス!一ポイントあげる!」
「なんで今のでポイントゲットなんだよ!おかしくない!?」
「はい次いってみよ~!翠ちゃんよろしく!」
「おいスルーすんな」
「それじゃ次読みますね。『私には今好きな人がいるのですが、相手にどう思われてるのか気になって夜も眠れません。何か良い方法はありませんか?』だそうです」
「そうだなぁ・・・眠れないなら、私が星から持ってきたよく眠れるお薬を」
「そっちじゃねえよ!この場合、相手に好意を持ってもらってるのか気になるって方が本題だよ」
「あ、そっちか。じゃあ私の星の秘密兵器の一つ、『心理分析ゴーグル』で気になる人を見れば一発解決!」
「こないだも思ったけど、シルキーってドラ○もんみたいだよな」
「ドラ○もん?なにそれ、地球に存在する生き物?」
「いや違うけど、お前みたいにいろんな便利道具出してくれる奴だよ」
「へ~、もしかして同じ星の生まれかな?でも私より先に金星の宇宙船が地球に来たって報告は聞いてないなぁ・・・」
「話が脱線しちゃったけど、結局これの回答はどうすんだ?そのなんちゃらゴーグルってやつを使うってことでいいのか?」
「そうだね!ぜひ一度部室へお越しください!」
「『あなたの悩みを解決する良い方法がありますので、ぜひ一度部室へお越しください!』っと」
「はいどんどんいくよ!次、宇宙太の番!」
「『シルキーさんは地球へ平和的国交を結びに来たとのことですが、侵略する気は全くないんですか?』なんだこの物騒な質問・・・」
「侵略なんて怖いことしないよ~。あくまで私たちのモットーはみんな仲良く!だからね」
「でも初めて宇宙船が来たときは大騒ぎになったもんだよな」
「ですねぇ。私もあの時のニュースは見てましたけど、ちょっと怖かったですし」
「いや~、恐怖心を与えるつもりはなかったんだけどねー・・・。思った以上にこの星って言語が豊富だったせいで、情報収集とかが忙しくて・・・」
「全世界同時放送とかしてたもんな」
「異星言語翻訳機に言葉を登録するのに一週間もかかっちゃったし、悪いことしたな~と思ってるよ?私の星は言語は一種類だけだから、こんなにあるとは思ってなかったよ。もう地球語とか作って統一しちゃえばいいのにね!」
「そうしてくれれば俺ら学生としても助かるんだけどな・・・」
「私も英語苦手なので、そうしてほしいです・・・」
「地球人って大変だね・・・」
「えっと、纏めると『侵略する気はありません、あくまでみんな仲良く!がモットーです!』でいいですか?」
「うん、それで大丈夫!ありがとー!じゃ、次読むね!『地球や金星のほかにも文明のある星ってあるんですか?』」
「これって答えていいやつ?」
「どうなんだろ・・・。正直に言えば、あるんだけど」
「シエルの住んでた木星にも文明ありますよね。最近よくシエルが母性のお話してくれます!猫ちゃんたちの住む惑星って一度行ってみたいな~って思います!」
「最近流行りの『猫カフェ』みたいな感じなんだろうか・・・」
「たくさんモフれますね!モフモフ!」
「ん~・・・これはノーコメントにしておこうかな。知られたくない星もあるだろうし」
「それが無難だな。これが原因で星間戦争なんかなっても困るしな。ならないだろうけど」
「『すいません、ノーコメントで』っと。でもノーコメントって、遠回しに肯定してるのと同じような気が・・・」
「まぁ、それはそれってことで・・・」
「はい、じゃあ次!」
「次は私の番ですね。えっと・・・」
こんな感じで投書された内容を一つ一つ答えていった俺たち三人。
『効率よく痩せれるダイエット方法を教えてください』『寝てても勉強ができる方法とかないっすか?』等の悩みから、『フヒヒ・・・シルキーたんのスリーサイズが知りたいです・・・』『翠ちゃんのこともっと教えて?♡』等の返答に困る質問まで、その内容は多種多様だった。こうして答えていった内容を翠ちゃんがホワイトボードにまとめ、俺とシルキーで答えをまとめた掲示物を作成し、この日の仕事は終わった。気づけば既に時刻は18時を過ぎており、三人ともとても疲れた表情をしている。
「疲れた・・・」
「疲れましたね・・・」
「予想以上に反響良かったねこの箱!また置いとこ~っと!」
「「勘弁してくれ!(ください!)」」
俺も翠ちゃんも、暫くはこの質問責めにはこりごりだった。
ちなみに次の日、俺らの作った掲示物を見た生徒たちが放課後に部室に殺到した。そりゃ内容の半分ぐらいに、「ぜひ一度部室へお越しください!」と回答していたのだから仕方ない。というか、これって当初の目的とずれてね?
そして、途中途中で与えられていたポイントについてだが、二ポイント集めた翠ちゃんが勝利をおさめた。
「で、ポイント勝負は翠ちゃんの勝利だったわけだけど、何か景品でもあるのか?」
「わくわく!」
「あ、忘れてた。んー・・・じゃあ、はいこれあげるね!翠ちゃんおめでとー!」
「・・・?なにそれ?」
「えーっと・・・なんでしょうかね?」
シルキーから翠ちゃんに渡された景品は、緑色のぶよぶよした液状の何かだった。俺らの知るところで言えば、スライムにとてもよく似た・・・てかシルキーこれどこから出したんだ?
「あのー・・・シルキー先輩、これなんですか?」
「それは私の星に生息してるペットみたいなものかな。手触りがひんやりしてて気持ちいいんだよ~。」
「へ、へ~・・・。あ、でも確かに丁度いいひんやり加減・・・。」
「よ、よかったね翠ちゃん」
「はい!大事にしますねシルキー先輩」
「喜んでもらえてよかった!あ、でも一つ気を付けてほしいんだけど、その生き物よく動き回るから、逃げないように管理はしっかりしてね」
「シルキーそれフラグ」
「えっ?きゃっ!急に飛び跳ね!?あぁっ!!」
「おい逃げたぞ!急いで捕まえないと!」
この後、三人がかりで学校内を逃げ回るスライムモドキを追いかけるハメになったのだが、それはまた別のお話・・・。