10カ月後
目を閉じる。
目を開ける。
まばたきの間に世界が変わることなどない。
でも、
10か月も目を閉じていると・・・どうだろう?
目を開けたとき、
世界は変わっているのだろうか?
わたしはゆっくりと目を覚ました。
白で覆われた清潔さと透明感で包まれた部屋。
わたしの視界に、女性の後ろ姿が映る。
彼女は制服を身に着けている。
きれいな白衣に厚紙のような白の帽子も着用している。
( ここは、病院・・・・? )
わたしは、硬直したかのように動かぬ重い身体にゾッとし、
どうにか動かそうと試みるが 思うように動かない。
そのわたしの小さな動き、微かな衣擦れの音に反応するように
わたしに背を向けていた女性が、ゆっくりとわたしに向き直る。
わたしと目が合うと、彼女は驚愕の表情と共に
わたしの元へ駆け寄り、
わたしの手をゆっくりと握り締め、
『 ・・・・・。 』
と、何か呼び掛けた。
わたしには、その一声は届かなかったが
次の言葉は、よく聴こえた。
『 奇蹟だ。 』
涙ながらの表情に変化した彼女の若々しい表情も良く見えた。
自分の身に何が起こり、どのような環境に置かれているのか
全く把握できないわたしは、
( この看護婦さん、可愛いな )
くらいしか、そのときは思わなかった。
しかし、その後の医者の説明で
10か月に渡る意識不明の状態だった事実を告げられたときは、
あまりのショックに、気を失ってしまった。
~つづく~