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序章
何もしないで、ただ座っていると
『 どうしたの? 』
と訊ねられることがある。
何もしていないことを相手に伝えると、
相手は笑って
自分のしたがっていた話をし始める。
笑い声を交え、相手は いつしか上機嫌だ。
その光景に、わたしの頬も少し緩む。
でも、どうしてだろう?
しばらくすると、
わたしの頬を涙が伝う。
どうして・・・?
その様子に
相手は慌てて、わたしの側に駆け寄り
手を握った。
わたしにとって、その意味はわからなかったが
相手がそのあと、ゆっくりと
わたしにキスをしたので
相手は わたしの恋人なんだと思う。
わたしは
何もしないで、ただ座っている。
そんな出来事を、夢のように憶えている。