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第四話 気にしませんよ


「じゃあ、ご飯食べましょうか」

「分かったわ。ご馳走になるわね」


絶賛フリーズ中の妹を放置して、僕とリーシャさんはご飯を頂くとする。

まぁそのうち妹も復活して元気にご飯を食べるに違いないので、大丈夫だろう。


「ちょっ、ちょっと待って......。え?兄貴、ホントにその人のこと拾ったの?」


ヨロヨロと立ち上がりながら妹が聞いてくる。

割と立ち直りが早いヤツである。


「そうだよ。ねぇ、リーシャさん?」

「はい。合っています」

「ど、どうゆうこと?」

「それがな、僕が畑を見てたらだな------」



-----------------------

-------------------

--------------


「えーーっと、どなた?」


僕は今の現状に戸惑っていた。

家の畑に来てみたら、獣族ケモノの、しかも猫族が寝込んでいたので驚いたのだ。






獣族とは、モンスターが人間とコトを致して、低確率で産まれる人間のことだ。

普通、モンスターは人間と交わろうとしない。

しかし中には、生殖本能が強く、どんな種族とも交わろうとするモンスターが稀にいる。

そんなモンスターが村を襲い、村の女性片っ端から犯す。

しかしそれが子供になることは多くはない。が、あくまで多くはない、なのである。

そうやって産まれた子供は、大抵の場合忌み嫌われ、蔑まれる。

しかし、それを奴隷として買おうとする高尚な趣味を持っている貴族もいる。

そんな相手に高く売りつけるため、産んですぐに売り払われて金を得ようとしているのは、割と有名な話だ。





そんなわけで、そうそうお目にかかれないレアな人間を見て、動揺しているのである。

一応声を掛けてみたものの、未だ寝惚けているのか、ぼーっとしている。

さてどうしようかと悩んでいると。


「はれ?ここはお屋敷.......じゃない!?どこここ!?!?」


どうやら覚醒したようだ。

あちこちに顔を巡らせているその様子は、本物の猫のようだ。


「えーーっと、とりあえず、ここはセンデブルクのアイモネアですよ?わかりますか?」

「えっ?ちょっと待って........ここって、ストリルクよね?」


ストリルクって確かセンデブルクから大分、というか1番遠いと言われる国ではなかろうか。

...........謎だ。情報が足りない。


「その口ぶりから察するに、貴女はストリルクの方なんですか?」

「ええ、私は--------」


そこで彼女は身だしなみを整え、優雅に一礼しながら言った。


「お初にお目にかかります。私はサカロス領主、エドラ・サカロス様の第7メイド、リーシャ・ウェルドと申します。どうぞお見知りおきを」


おおっ!

凄い。本職のメイドさんの一礼ってこんなにも綺麗なものなのか。

流れる様な身体の動きに合わせてスカートが舞い、そのスカートを最後につまみ上げながら礼をするその姿は可憐と美しさを共に内包したようだ。いや、している。

フッ、これがあればあと10年は戦える.....!


「御丁寧にありがとうございます。僕はここの、センデブルク、アイモネアで暮らしているカイ・トランドと言います」


心の内に溢れる激情を抑えながら、僕も挨拶する。


「..........」

「..........」


しかしそれ以上会話が続かない。

今の現状を理解し、戸惑っているのだ。

そのまま暫くの後。


「.....まぁ、いいか」

「えっ?」


僕は納得することにした。

べ、別に考えるのが面倒くさくなって放棄したとかじゃないんだからねっ!

そんなことより、現状を確認すべきだ。


「あの~.....リーシャ、さん?」

「は、はい、なんでしょうか?」


僕の問いかけに対して辛うじて笑顔で答えるリーシャさん。

こんな時でも笑顔とか、メイド強すぎ。


「まず、今がいつなのか分かりますか?」

「えっと.....初夏の季節の12日目だと記憶してますけど.....」


日付はこっちと合っているようだ。

あとは....言語は通じるし....。

あ、一応聞いてみるか。失礼かもしれないけど。


「貴女は、その、獣族の、猫族、ですよね?」

「はい、そうです。お母さんに売られて、奴隷として、サカロス様に買われ、メイドになりました」


うん、ちゃんといろいろ通じる。

というか、自分のことそう淡々と話して大丈夫なのだろうか。

まぁ、表情が変わってないから、折り合いはつけているのかもしれない。


「で、目覚める前はどこで何をしていたんですか?」

「自分の寝床で寝ていました」

「そして起きたら僕と出会った、と」

「はい」


つまり、話を聞いてこれを信じる限り特別な何かはしてないと思える。あくまでも信じるなら、だけど。

でも、その点は信じても良さそうだ。

まず、美しいし可愛いしメイドさんだし、ここに来る意味が無いのと、リアクションは本気のようだった。何よりメイドさんだし。

大事なことは2回言わねば。

以上の理由から、僕はメイドさん-------リーシャさんを信じる。


「分かりました。とりあえず、家でお茶でもどうですか?」

「えっ?わ、私のこと、信じるんですか?」

「はい。なにか?」

「だって、突然こんな事言われたら、普通怪しいと思うんじゃないんですか?」

「まぁ、そうですけど.....。でも、貴女は、リーシャさんは信じるに値する人だと判断しました。な、何より、その......か、可愛いので.......」


うわ僕恥ずかしッ!

本音がつい出てしまった!!

顔から湯気出るわ!!!


「あ、ありがとう、ございます.......」


でも、リーシャさんも照れてる。

.......やっべぇ、鼻血出る。

顔真っ赤にして俯いてるメイドさんとか。


そうしてふたりして照れながら、時間が少し経ち。

ようやく落ち着いたところで、僕は再び提案した。


「まぁ、もう少し詳しく情報交換する為にも、家へどうぞ」

「あ、でも......」

「なんでしょうか?」

「さっきも言いましたが、私は獣族、ですし....」


やっぱりそういう自覚はあるのか。

でも。


「気にしませんよ、別に。だって、同じ人間じゃないですか」

「....そう、ですか」


まぁ、実際見たのが初めてだし、普通に会話もできてるし、メイドさんだし。

忌み嫌い蔑むなんて恐れ多くて出来ない。


「......分かりました。私も貴方を、カイさんを信じます」

「それはどうも、ありがとうございます。別に敬語じゃなくていいですよ?」

「じゃあ、お言葉に甘えて、カイ!」

「はい、リーシャさん」

「私のことも名前で良いよ?」


ぐはぁっ!こ、これが.....メイドのお願い、か.....!!

やっぱり、メイドさん強いわ。恐れ多いわ。


「いや、これは....その、癖なので」

「そうなの?じゃ、いいわ」




-----------------

-------------

---------


「まぁ、そういう感じで、いろいろ話してたんだよ」

「へ~.....そうなんだ」


妹はとりあえず納得してくれたらしい。怒りも幾分か収まっている。


「.....というか、」

「ん?なんだ?」


あれ?何だか妹の目が心なしか冷たいような......。


「兄貴、引く」


ぐはぁっ。

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