第二話 うちのメイドさんっ!
妹を見送った僕は、箒を片手に早速各部屋の掃除に取り掛かる。
使ってない部屋も隅まで綺麗にし、荷物などを片付ける。
掃除の次は洗濯だ。
自分と妹の分の二人分を洗う。
二人暮らしの最初のほうは下着を自分で洗っていた妹だが、もともとめんどくさがりな性格なことと、僕が妹の下着を見ても触っても何も反応しないことから、僕に任せるようになった。たった二人の家族なので欲情もくそもあったものではないのだが。
せっせと洗濯を終わらせて、次は家の畑に植えてある野菜の収穫と管理。
今の季節は初夏なので、キャベツやジャガイモなどが実を結んでいる。
その中でも大きくなったものを収穫し、他の野菜には水やりや病気になっていないかなどを観察していく。
そうやって見回っていると、向こうの茂むらに何か揺れているのが見えた。
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こんな感じでぴっこぴっこ揺れている。
「なんだこれ?」
そう言って不思議そうに近づいていくと、茂むらの中から飛び出ているのは動物の耳だった。
「ッ!?」
思わず後退りじっと観察する。
この大きさ......結構な大きさのモンスターだ。
しかし僕の警戒をよそに、それはゆっくりと体を起こし--------
「ふぁぁぁぁ~.....あれ?ここどこ?」
--------大きな欠伸と伸びをして、寝惚け眼を擦った人間だった。
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「たっだいまー!兄貴ぃ!ごはーーーーん!!!!!」
私、ナナ・トランドは夕暮れを背に家の扉を開けた。
今日はいつもより遠出したし、何よりモンスター一体一体がなかなか強かった。
いくら強力な「稲妻」が放てるとはいえ、放てる回数は体力に比例している。しっかりとモンスターの動きを読み、なるべく少ない回数で効率よく倒していかなければならない。
よって上手くモンスターを1箇所に集める必要があるため、立ち回りが重要になってくる。
ほとんど一日中走りっぱなしで足が石のようだ。
それにお腹も減った。
気が利く兄貴の事だから、きっとボリュームのあるものを作ってくれているに違いない。
そう思って家に入ると。
「あぁ、そんなことがあったんですね。さぞかしその王様は驚いたことでしょう」
「そーなのよー!もうほんとに、あの時の王様の顔といったら.......。今でも笑っちゃうわ!」
「でも、怒られたんじゃないんですか?」
「うっ......」
「いくらなんでもコソコソするのは良くないですよ」
「うぅぅぅ......。カイはメイド長と同じこと言うんだね!ふーんだ、どうせ私は悪いメイドさんですー」
「いいえ、コソコソしてるのがバレなきゃ良いんですよ」
「え?」
「つまり、コソコソしてるのがバレないように堂々としてればいいんですよ。そうすれば誰もあなたを怪しみませんよ」
「なるほどー!!カイってやっぱり頭いいんだねー!でねでね、その次の日には------------」
バァン!!!
..............シーン。
私の机を叩く音で兄貴と、兄貴と楽しげにおしゃべりしていた女の人は気付いたようにこちらを黙って見た。
.........てゆうか前に聞いたことのある、人に効果的な、強制的に黙らせる方法を実践してみたけど、結構痛いのね、これ。
そんなことはさておき。
そのまま兄貴をキッと睨みつけ、大声で叫ぶ。
「兄貴っ!その人誰っ!?あとご飯!」
「ご飯ならもう出来てるよ、さぁ、みんなで食べよう」
「兄貴?話、逸らさないで。その女の人は誰なのっ!?ちゃんと説明してよ」
すると兄貴はなんとも言えない、困ったような迷ったような、とにかく形容し難い表情をした。
しばらく黙っていると、意を決したように兄貴は言った。
「この人は----------うちのメイドさんっ!てへっ☆」
意味の分からないことを。