プロローグ
高層ビルが建ち並ぶ街並み。
多くの企業が覇を競う様に、次々と巨大なビルを立て続けた。
そんなコンクリートジャングルの中に、一際巨大なビルが存在する。
地上高約九百メートル。
世界最大の高さを誇るそのビルの壁には「SAKURAYAMA」の文字が。
そして、その超高層ビルの一室に、俺――桜山明人は居る。
滝のように流れる汗を無視し、俺は目の前の男を油断なく見つめる。
俺の視線の先には、黒の燕尾服を着込み、片眼にはモノクルつけた白髪の老人が、ただ一人立っている。
「ほっほっほ。坊っちゃんも、かなりの腕前になられましたな~。クラウディスは感激しておりますぞ」
「・・・余裕綽々のくせによく言う」
「わたくしは坊ちゃんの師ですからな。ヤセ我慢しているのですよ」
そう言った老執事――クラウディスは、わざとらしく腰を叩く。
相変わらず食えない爺さんだ。
一見無防備に見えるクラウディスだが、その実まったく隙が無い。
今年七十歳になる人物とは到底思えない。
「ふむ。坊ちゃん、そろそろ時間でございます」
クラウディスは腕時計に視線を落とし、そう告げる。
「ちっ・・・。これで99戦99敗か」
俺は呟きながら、椅子にかけていたタオルを肩にかける。
俺の呟きが聞こえていたのか、クラウディスはゆったりとした足取りで近づいてくる。
「相変わらず、坊っちゃんは負けず嫌いでございますなぁ」
クラウディスは苦笑しながらそんな事を言ってくる。
そんなクラウディスに、着ていたタンクトップとハーフパンツ、それから下着を投げ渡す。
「当然だ」
シャワールームへと向かいながら、一度だけ振り向く。
「俺は――王になる男だからな」