5話 青年と“疾風雷神”
またもやちょっと説明会入ったきが・・・。
結局青年回にはならなかった(苦笑
だいたい三時間ぐらいで収集は終わった。アクトに渡された大き目な袋は何故か質量を無視した量が入り、重さもまぁかなり重たいが青年はなんとか担ぐことができた。
アクト曰く、この袋は特別なもので入れたものを100分の1サイズに収縮し、取り出すときには元の大きさに戻せるらしい。
理由は袋に使われている皮がある特殊な魔物の皮だかららしい。
(便利すぎる・・・。)
収集が終わりさらにいくつかの扉をくぐっていく。魔物は何回か数体遭遇したが、三人は問題なく蹴散らしていく。
ちなみに最初に遭遇した魔物の軍は、たまにあるらしく、そのかわりたいしたレベルの魔物はでてこないらしい。
今戦闘している大型のトロールのほうがよほど強敵だとレインが戦闘を二人に任せ青年にいう。相変わらずの瞬殺だが。
風の谷のギルドのBランクというのはやはりというかかなり優秀らしい。
ランクはF~Sまでの完璧な実力順でFの次がE、Sの前がAである。平均的なランクはE~Dがほとんどらしい。
そう考えればこの“疾風雷神”のメンバーが飛びぬけて強いのが青年には納得できた。
ちなみにこの世界ではDランクで一人前の冒険者と名乗ることができ、Bランクは才能や血の滲むような努力が求められるらしい。
Aランクは英雄、Sランクは人間をやめた人らしい。三人でかかってもSランクにはかすり傷つけられないだろうと嫌な顔をしながらレインが青年に語る。
青年にとって三人は既に化け物の分類にカテゴリーされているため、苦笑いで返すしかなかったが。
こうして迷宮やギルドのあれこれを丁寧に説明をされた青年はいったん休憩にしようとアクトの意見に迷宮の岩場に腰掛け携帯食料などを手にかける。
中身は干し肉や、乾燥したパンなど味気ないものであったが、青年は特に気にすることなくぼそぼそと食事をする。戦闘をしていないとはいえ、かなり歩いたり、収集を長時間行ったが青年にあまり疲れはなかった。
『ところでボウズ。記憶がないってことはわかったが、なんか覚えてることとかはないのか?
自分の住んでた場所とか、周りの風景とか。』
アクトがそう言う。ここまであまり触れられていなかった話題だが、やはり心配されているのだろう。
青年はとても短い付き合いだがこの三人にはかなり信頼を置いていた。
『覚えてないですね。なんとなく常識とかは覚えているんですが・・・。』
だが、本当に言えることがなかったため青年は困った顔をしながらそういうしかなかった。
アクトの質問に青年は少し嘘をついた。
青年は自分の住んでた場所はぼんやりとは覚えていた。だがそれはこの世界には明らかに存在しない文明であったため、青年はそのことを口に出すのはやめた。
記憶障害まで起こしていると思われ、これ以上三人に迷惑をかけるんのはよくないと思ったからである。
『何かヒントになるもんがありゃなぁ。ガキの服装は見たことないし、黒髪、黒目なんかこの辺じゃ見たことねえしなー。
まぁ私達は基本アズワールの城下町のあの宿屋にいるからな。
なんかありゃあ相談ぐらいなら乗ってやるぜ!荷物持ちぐらいなら連れてってやるさ。』
そう言うとオルトは笑いながら青年の髪を乱暴に撫で回した。オルトは青年のことを何気に気に入ってるらしい。
苦笑いしながらもその乱暴な撫でまわしを青年は受け入れた。
『と言っても、やはり記憶がないというのはかなり困ったことに違いはありませんけどね。
身分の保証になるような物もないでしょうし、どうですか少年。ギルドに入りませんか?身元の保証は私達がしますよ?』
『ギルドですか?』
『はい。ギルドの一員となればある程度アズワールでは身分が保証されますからね。
私たちが長期の任務でいない間でも、薬草摘みなどの簡単な依頼でしたら君にもできるでしょう。
それに君自身これから何をするにしても、生き残る術を手に入れることは重要ですからね。』
『なるほど。その通りですね。三人が保証人になってくれるならありがたいです。何から何までお世話になりっぱなしですいません。』
『いえいえ。困っている者を見捨てるのは目覚めが悪いですからね。』
(この人達良い人すぎんだろ。この世界の人たちってみんなこんなんなのかな?)
デインの願ってもない話に青年は飛びついた。そもそも今後のことについては全く考えていなかった青年はよくよく考えれば三人がいなければ城下町すら入れない身であったことを今思い出した。
これからの生活には必需品になるものだろう。
ちなみに青年をアクトはボウズ、デインは少年、オルトはガキと呼ぶ。
青年はおそらく18歳だということを言っているが三人にとっては子供にしか見えないようだった。
(ガキはどっちみちひどくないっすか姉御・・・。)
それから探索を再開した四人は危険らしいところは全くなく、城下町の美味しい飲食店や、おすすめの武器屋や防具や、昔オルトにナンパをふっかけた冒険者の末路談など他愛もない話などをしながら迷宮を進んだ。
そして遂に迷宮の最終地点だろうか?今まで見た扉よりも数段大きな鉄扉が四人の前に立ちふさがった。
先頭を歩いていたアクトが立ち止り青年に振り返る。
『ここが39階のボスの間だ。迷宮には一階一階こういったその階を代表する魔物みたいなのがいる。この先にそいつがいるのさ。さすがに俺達でもてこずるからな。ボウズはここで待機しててくれ。』
『一応これを持っててください。もし私達が30分近くここから出てくるようなことがなければ、これにここから出たいと念じてください。そうすれば最初の転移装置のところまで戻ることができます。』
アクトの説明の後にデインが鈍い青い輝きを放つ手のひらサイズの石を青年に手渡す。青年は少し混乱しながらもその石を受け取る。
『これは転移石です。ボスの間に入ってしまえば扉もこういった脱出アイテムなどもそのボスを倒すまで扉は開かないし、使えなくなってしまうんですよ。』
デインの言葉に青年は理解しきれていないようだ。手に持った転移石とデインを交互に見回す。
『えっと、これを俺が持つ意味ってあるんですかね?』
『もちろんありますよ。』
頭にハテナマークを浮かべながらも青年はデインに尋ねる。
『私達が死んでしまえば少年は帰れなくなってしまうでしょう?』
『!?』
当たり前のことを言うようにこちらに疑問を投げ返すデインを青年は唖然と見つめる。この三人が死ぬ?そんなことあるわけないじゃないか。青年はそんなことをこれまでの迷宮内での戦闘を思い返しありえないものを見るように三人を見回した。その考えを読まれたのかオルトがははっと笑いながら、
『おぃ。ガキ。私らは確かに強い。だけどな。決してその強さに奢ってはいけねーんだよ。
この階の攻略にだってもう10回は入ってる。だから道にも迷わねーし、敵の行動や癖、戦闘パターンなんかも当然頭に入ってる。
だが、このフロアのボスは一回しか挑戦できねぇ。殺すか殺されるかのどっちかだ。それが今日だ。
ガキ。もう一回言うが私らは強い。だけどそれは絶対じゃねーんだ。殴られたら痛いし、斬られたら死ぬことだってある。
だから覚えときな。魔物のいるところじゃ何が起こるかわからないってな。』
まぁ死なねーけどなっと青年の頭にポンッと手を乗せたオルトは軽く笑いながらも強い目で青年を見つめる。
アクトもデインも同じように青年を見ている。
(これが風の谷のギルドBランク冒険者“疾風雷神”・・・・・。)
青年は改めてこの三人が本当に強い人なんだと感じた。身体だけではなく心も強い。青年は初めて人を尊敬するような感情を覚えた。
『まぁ俺達は死なねーよ。ここには魔物が出てくることはねえから、青年はのんびりその辺にでも座って俺達が出てくんのを待っとけ。』
アクトがニヤリと笑いながらそういうと、今日はボウズも一緒に宿屋で祝杯だなと三人と共に扉を開け入っていった。
扉を開けた先には全身甲冑を着た騎士のようなものが見えた。
あれがおそらくこのフロアのボスなのであろう。青年がそう認識した時扉が重い音を立て閉まった。
(あの化け物三人が負けるはずないだろ。)
一人になった青年はのんびりと近くにあった岩場に腰掛け三人の帰還を待つのであった。
もしこのとき青年が一緒に扉を入っていれば、青年の運命は少しだけ変わっていたのかもしれない。
今青年の運命の歯車が大きく動きだそうとしている。
とりあえずフラグみたいなもんを立たせて頂きました(笑
次回こそは青年回です。
拙い文章ですが応援してくれるとうれしいです。