4話 青年と戦闘
やっと戦闘シーンです。書いてて思いましたが・・・なんかいろんなものが足りませんね(笑
扉の先は洞窟の空洞のような場所だった。馬鹿みたいに広く、高さもかなりある。
その先に見えるのは魔物の群れ。それも次々とさらに奥にある光の中から出現してくる。既に魔物の数は150近くいるのではないだろうか。鎧を着た骸骨スケルトンナイト、緑がかった肌と角が特徴的なグレムリン、巨大なゴーレムや自分の巨体ほどのこん棒を軽く素振りするように歩くオーク、こちらの様子を伺いながら空を飛んでいるのは口から火を噴き威嚇するワイバーンや腕を組み険しい視線をこちらに向ける石造のガーゴイル。
デインの背後からひょっこり顔を出して様子を確認した青年はその光景に唖然とするしかなかった。
(え?何これ?戦闘じゃなくて戦争レベルだろ・・・。)
どう見ても三人でどうにかなるように見えない。幸い敵との距離はかなり離れているため、これは逃げるしかないだろうと前にいるデインに青年は声をかけようとするが
『オルト!大型は任せた!!デインは飛んでるやつを頼む!!俺は数が多い小型を蹴散らせてくる。』
そんなことを平然と言ってのけるアクトに青年は耳を疑いながらもアクトの方に思わず目をやってしまう。
『え・・・?』
すでにアクトとオルト共に姿は見えなくなっていた。はるか前方に目をやるとそこには信じられない光景が広がっていた。
スケルトンナイトの首を無造作に刎ねては、一瞬で姿を消しまた背後から一瞬でグレムリンの首を刎ねる。
まるで作業であるかのようにたんたんと獲物の首を刎ねていくアルト。誰も彼を止めることも、ましてやまともに視界に納めることができていない。
後方から確認している青年すらも彼を目で追うこともできずにただいきなり首と身体が離れていく魔物の奇妙な光景を目にすることとなった。
(何そのチート・・・・。)
対照的に魔物の群れの中から現れたオルトは青年にもはっきりわかるように、のんびりと歩きながらゴーレムとオークの目の前に立つ。
オルトが射程範囲に入ったためか、ゴーレムはプログラムされているかのような自然な動作で剛腕から拳をオルトに振り下ろす。対してゴーレムと違い感情があるのか舐められていると感じたのか、オークはその凶悪な腕力で振り下ろされたこん棒を怒りの形相でオルトの頭上目がけて振り下ろした。
広場が爆発したかのような爆音とともに、近くにいた小型の魔物も風圧に吹き飛ばされる光景を青年はただ茫然と見ていることしかできなかった。
だが風圧で砂埃が晴れた光景を目にしたとき、青年はさらに唖然とする。彼女は両の腕でそれぞれ拳と、こん棒を受け止めていた。
二体の魔物はそれぞれ、彼女に抵抗しているように力を入れ続けているように見えるが、全く彼女には通じている気配はない。
しばらくそうしていると彼女は飽きたのか二体の獲物を掴んだまま両手を上に大きく掲げた。どのような理屈で彼女の様な小さな体格でそのようなことができるのか、二体の巨体が真上に投げ飛ばされた。
オークは投げられた際こん棒から手を放してしまったのだろう。
下に落下しながらオークが見た光景は、
獰猛な顔をしてこん棒をバットのように構えるオルトだった・・・。
『ぶっ飛べやぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!!!』
彼女のフルスイングは見事落下中のオークの頭をとらえ、脳味噌をぶちまけると、そのまま貫通するようにゴーレムの核となる胴体もぶち抜き周りの魔物を巻き込みながら完全に二体を鎮圧させた。そのまま彼女はこん棒が気に入ったのか、オークの血がべったりついたままのそれを担ぎながら他の獲物を狩るために歩き出す。それはまさに・・・
(鬼!!あの人絶対人間じゃねぇだろ・・・あ。獣人か。いつか怒らせて殺されそう・・・。)
青年はただ単純に恐怖を覚えていた。
デインの後ろにいながらも状況を確認している青年だが、そのデインはというと淡々と弓を打っていた。といってもその狙いは正確で魔物の頭を狙い空にいるワイバーンやガーゴイルを確実に落としていっている。たまに弓からは雷をまとっている矢が発射される。その矢は石造のガーゴイルすらも貫き、問題なくその数を減らす。既に戦場は彼らの独壇場だった。二人の異常な暴れ方は次々と敵を殲滅していく。多少撃ち漏らした敵もデインの弓によって沈められる。もはやデインと青年に近づくことは不可能に近かった。
青年はそんな阿修羅運とした光景を見ているとふと
(みんなすごすぎるだろ・・・。でもデインさんはすごいけどちょっと地味かな?)
こんなことを考えてしまったからだろうか。
『そろそろ良いですかね。』
デインがふとそう呟いた。青年は彼の言っていることがよくわからなかった。現状確かに敵は減っていく一方だ。大型の魔物もかなり減っているがそれでも奥の光からは魔物がいまだに出現している。
『良し。やりますか。』
デインがいまだに何をしようとしているか青年はわかななかったが、アクトとオルトが暴れまわる戦場のど真ん中に小さな落雷が落ちた。それが合図だったかのように二人が一瞬でこっちまで戻ってきた。相変わらず見えない青年はびっくりしたがアクトが青年に声をかけた。
『おいボウズ。耳閉じとけ。』
アクトとオルトがこれから面白いものが見れるぞ。っという風に青年をニヤニヤと見たため、何がなんだかわからないが青年は手で耳を閉じた次の瞬間だった。青年の視界が真っ白に染まった。その数秒後、
『ドガァァァァァァァァァアアアアッッ!!!!!!!!!!!!』
強烈な雷鳴が青年の閉じている耳をこじ開けるように響き渡る。視界が開ける目の前には魔物が全滅している光景だった。奥にあった光も消滅していた。デインの雷電が炸裂したことを青年は理解した。
『ふぅ。終わりですね。さて、これが“疾風雷神”です。みんな凄くてかっこいいでしょう?』
みんなというワードをかなり強調している様に感じるがデインはとても良い笑顔で青年に問いかける。心なしか青年にはデインの目が笑っていないように感じる。
『皆さんすごいですね!いやぁ俺尊敬しちゃうなぁ・・・。』
若干戸惑いながらも青年は精一杯の笑顔で答えた。
(やべぇ!!!この人俺の心読めるのかよ!?こぇぇぇ。)
内心震えながらビクビクしていると
『おいボーズ。そろそろお前の出番だぜ。今からここの魔物の素材全部集めていくからな。ガンガン袋に入れてくぞ。』
青年の目の前に広がるのは魔物の死骸死骸死骸死骸・・・・・etc
『これ全部ですか?』
『当たり前だ。金になるものは全部集めるのが冒険者の使命ってもんだろ!!』
アクトが笑いながら短剣を二本取り出すと、一本を青年に渡す。どうやらこれで魔物の部位を切り分けるようだ。他の二人もナイフを持つと死骸に向かって歩き出す。
『これ何時間かかんだろ・・・。』
ぼやきながら三人についていく青年。彼の迷宮探索はこれからが本番だった。
(つーか俺何してんだよ。ほんと。)
次回はそろそろ活躍する場が全くない青年を動かしていこうかなと思っています。
拙い文ですが応援してくれるとうれしいです。