1話 青年と異世界と
今回初めて作品を書こうと思い投稿さしていただきました。
拙い文だと思いますが、気ままに書いていくので応援してもらえたらうれしいです。
青年は準備をしていた。
今青年はアズワール王都という国の城下町の宿屋の一室を借りて(銅貨8枚)準備をしている。これから迷宮なるものに入るため携帯食料などをリュックに詰めている。ちなみに剣や防具などは持っていない。服装もパーカーにジーパンとここで生活している住人と比べてみるとひどい違和感を感じる。
(どうしてこうなった・・・。)
いろいろはしょっているがここまでの道筋を説明しようと思う。
青年は草原の上で佇んでいた。まず青年がここにいる理由だが、全くわかっていない。気づいたら王都城下町に入るための門の前にいた。ちなみに持ち物なし。一張羅だけだ。
さらににここに来る前のことについても何も覚えていない。ただなんとなく自分の住んでいたところと、それなりの常識、こういったことだけぼんやりと覚えている。
だからだろうか?ここが自分の知ってる世界と違うこともなんとなくわかった。そして記憶が曖昧すぎて混乱することよりも、ボーっとつったって門を見ていた。
何分ほどそうしていただろうか。ふと後ろから声がかけられた。
『ボウズ。どうかしたか?』
後ろを振り返ると、3人組の男女がそれぞれ鎧や武器を持ち怪訝そうにこちらを見ていた。全員見た目は25~30歳ぐらい。そのうちの一人は猪のような何か大きな動物を担いでいる。どうみても一人で担げるようなものではない。
『わかりません。』
青年は素直にそう答えた。これからどうしたらいいか、なぜここにいるのか全く青年にはわからないからそう答えるしかないだろう。
おそらく最初に声をかけたであろう人物。男が青年に声を再びかける。
『ここで何してる?』 『わかりません。』
『あん?ボウズ家はどこだ?』『ありません。』
『名前は?』 『わかりません。』
『家族とかは?』『おそらくですが、いません。』
『ここに来た目的は?』『わかりません。気づいたらここにいました。後何も覚えていないんです。』
『・・・。』 『すいません。困っちゃいますよね。僕もどうすればいいかわからないんです。』
青年は苦笑いしながら、そう答えた。別に馬鹿にしているようではなく本当に困ったような顔をしていたため思わず男は考え込んでしまった。
3人はお互い顔を見出し青年に聞こえないようにヒソヒソと相談しだした。
『なあ。デイン、オルト。どう思う?』
青年に声を掛けていた男が、どうしようか相談するために二人に問いかける。
『どうって・・・私に聞かれましても。記憶喪失というやつでしょうか?
嘘を言っているようにも見えませんけどね。
髪も瞳も黒というのは少し不気味ですが、服装もここらでは見られない格好ですが素材は良さようです。
痩せこけているわけでもないですし、どこかの貴族の商人とかではないでしょうか?』
デインと呼ばれた男が困った顔をしながらも自分の推測をそう伝える。
『いやいや。今は帝国と戦争中だぞ?
どう考えても最南のこの国に帝国の領土を渡ってここまで来る物好きな商人なんていねえだろ。
貴族ならなおさらな。それよりアクト。こいつ重てーんだから早くどうするか決めろ。』
オルトと呼ばれた女が粗暴に答えながら抱えている猪を指さし愚痴る。
青年に声を掛けたアクトはオルトに苦笑いしながらもどうしたものかと青年を見る。すると青年から声がかけられた。
『あの、皆さん武器やら、防具やらを着込んでますが、それはいったいなんででしょうか?』
『あ?そりゃボウズ俺達は冒険者だからな。魔物倒そうって思ったら当然だろう。』
何当たり前のこと言ってんだと顔に書いてあるかのようなことを言うアクトに青年は思った。
(え?ここ魔物とかでんの?コスプレパーティーとかじゃなかったんだ・・・。いやまあ猪みたいな角生えた化け物担いでるけどさ)
青年のいた世界には魔物なんかいなかった。そもそも城なんてものもなかった。まあもしかしたらあったのかもしれないが、青年のかすかな記憶にはそんなものはなかった。城はともかく魔物なんて確実にいなかったはずだ。
どうしたものかと青年は頭を抱え座り込みそうになるのを耐えつつも思考していると。
『おい。お前行く当てがないんだったら、今日一日私達に付き合え。金なら少しぐらい払ってやるからよ。
つーかいい加減町に入りてえ。こいつ重たいって言ってんだろ』
オルトと言われた女性が青年を睨むようにそう言うと確認をとるようにアクトとデインを見る。
『お前迷宮にこのボウズ連れてくきか!?
このボウズどう見ても戦闘向きじゃないだろ。どうすんだよ?殺す気か?』
『アホか。荷物持ちだよ荷物持ち。どのみちアルトがいなくなって三人なんだ。
一人補充入れなきゃ素材やらなんやらまともに持てねーじゃないか。後ろに引っ込ませときゃ大丈夫だろ。』
『まあ。私達が注意していればそうそう危険なことはないでしょうけど・・・。
それでも安心とは言えないですし、危険なことに変わりませんよ。
賛成はできかねますね。』
オルトの意見には二人ともあまり良い顔はしなかった。さらに考え込む二人を見てもともと、猪を担ぐのもいい加減いらいらしていたのだろうオルトが怒鳴るように
『んじゃどうすんだよこいつ!捨てていくか?どうせ通行証も持ってないだろうし、そのうち魔物に食われんのがおちだぜ。まだ私らが見てるほうがましだろ。
町に入れてやったところで稼ぎ口なんてそう見つからないと思うしね。
貧困街にいくのが目に見えるね!』
二人を睨むように吐き捨てるように言う。反論することも賛成することもできない二人が顔を見合わせていると、
『あのすいません。なるべく邪魔にならないようにしますので、連れて行ってくれませんか?
俺金もなんも持ってないんでできることがあるなら精一杯やらさせてもらいます。』
青年が自信なさげに反論した男達二人を見る。
『本当に危険なことがある可能性があるんですよ?
私達が守れないような状況だって出てくるかもしれませんし・・・。』
デインは青年の発言に困ったようにそう伝える。別にいじわるで言っているわけではなく青年を守れる保証ができないとうことを言っているのだろう。すなわち“死ぬ”可能性があると。青年にはそう感じられた。
『構いません。
オルトさんが言ったように、このまま何もできないよりはずっとましです。
だから連れて行ってください!』
(てかこのまま置いていかれたら本当に困ります。頼むから連れて行ってください!!!!)
青年の心の中では意外と焦っていた。ここまでただぼんやりと考えていたが、オルトの発言により今の状況が結構危ないということを理解した。生きるためにはまずこの人達に着いていくしかないだろうと。
青年は決意したかのように真っ直ぐ三人を見る。
『ほら、ガキもこう言ってんだしいいだろ別に。髪も瞳も黒ってのは見たことねーがどう見ても非力そうなガキだし危険でもねーだろ。
よし!ついてきな。まあ、私が守ってやんだから多分安全だぜ。
あと「さん」付はやめろ。背筋がうずくなる。』
オルトが笑いながらそう言うと青年の腰を掴みそのまま背負うようにして門に向って歩き出す。左には猪を担ぎ、右は少年を担ぐ。
(なんか俺も捉えられた獲物見たいじゃん・・・。てかこの人力強すぎるだろ。)
抱えられた青年は困ったように後ろの二人を見る。後ろの二人も困ったように少年を見上げ、やれやれと首を振られ諦めたように歩き出す。
その後アクトの連れということで城下町に入ることができた青年はそのまま担がれたまま三人がいつも使っている宿屋に入り、銅貨30枚と携帯食料を渡され、一室を借り準備をしてくるようにと言われる。
そして冒頭に戻るのであった。
(なんか流れでこんなことなってけど、俺大丈夫なんだろうか?)
ぼんやりと考え込む少年に答えるものは誰もいなかったが、カーテン越しの昼の太陽は穏やかに微笑むように少年を照らしていた。
少し見やすくなるように修正しました。