9話 籤引と職人
籤引と職人
「ふあああああ!よく寝た!」
気が付けば夕方4時。8時に寝たので8時間睡眠。
「さ、今日の準備するか」
宿屋を出ると
「あれ?人が増えてる」
昨日よりも増えていた。
「なんでだ?」
考えてもわからないことは考えない。とりあえず、今日は折角なので防具をそろえようと思う。なぜなら昨日防具くじ引き換券(梅)を手に入れたからだ。できれば、いいのがほしいな。まぁその辺りは運なわけだが……。
「さぁ、くじ引きはいかがかな!?」
あのガラガラと音が鳴る巨大な回すタイプの抽選機がおかれた店を見つけた。店員は額に鉢巻、メガホンを首から下げ、はっぴを着た女の人だ。可愛いのに服装のせいでいろいろ台無しだ。
「すいません、防具のくじ引きはどこですか?」
「あいよ!防具のくじだね!?1回どうぞ!」
目の前にレバーが出てきて回せと表記されている。当然、思いっきり回す。
「当たれ!」
小さな玉が1つ出てきた。色は銀色!
「ktkr!」
「はい、4等の狼のフードだよ!」
俺と同じ狼系か。でも銀で4等って……。
「これでも梅で出るアイテムとしては一番いいアイテムなんだよ?」
「そうなの?」
「ほかの人なんて消費アイテムがほとんどなんだから!お兄さんついてるね!」
『アイテム、狼のフードを手に入れた』
『装備しますか?』
もちろんイエスを選ぶ。頭にオオカミの頭が付いたフードが現れた。てかもう食われているようにしか見えない。
「これに合う防具を買うしかないな」
「ちょっとそこのお兄さん」
丸眼鏡で作業服の女の人が話しかけてきた。髪はぼさぼさで服も油まみれ。いかにも職人といった感じだ。
「その帽子に合った防具ほしくない?」
「いえ、間に合ってます」
キャッチセールスの類だな。
「いや、ちょっと待って!お願い!防具つくりたいの!」
「なぜ?」
「私生産職で、今、アイテムがなくなって戦闘系の人に頼らざる負えなくなったんだよ」
で、っていう。
「次のステップの防具がオオカミの毛皮を使ったものなの。だから、お願い!オオカミの素材を取ってきてくれない!?」
「なるほど、利害の一致か。良いぞ」
「ホント!?」
「ああ、狼の素材ならちょうどあるしな」
「え?」
ウソだろ?みたいな顔されても。
「オオカミって夜しか出ないんだよ?」
「ああ、知ってるよ。倒したし」
「お、狼ってレベル5はないと厳しいんだよ?」
「え、そうなの?」
今レベル7だけど当時はレベル2で倒していた。
「中ボスの方か?」
「中ボス!?あなたもう、中ボス倒したの!?」
え?もう?レベル2の時に倒したけど早かったの?
「中ボスはレベル7ぐらいやっと倒せるのよ?」
「えっと……ごめん、レベル2で倒した」
その「うわっ廃人捕まえちゃった」みたいな目で見ないでください。
「と、とりあえず、工房の方で話ししようか」
「ああ、てか面倒だから素材を言え、渡すから」
「えっと全身造るならオオカミの毛皮×10、オオカミの爪×10、オオカミの尾×4、オオカミの骨×10、オオカミの牙×10、オオカミの脚×4、それから蝙蝠の羽が5枚、ヘビの皮2枚が足りない。あ、鉄鉱石とかそういうのはあるから安心して」
「あー、オオカミの毛皮、牙、爪、尾が足りないな。まぁ、2~3個だからすぐ手に入るからちょっと待っててくれ」
「あ、それならフレンド登録しておかないと」
「良いぞ」
あ、なんだかんだで初めての登録か。あれ、なんかさびしい風が胸のあたりで吹いた気がする。きっと気のせいだよね。ハハハ……ハハ…ハ……。
「じゃあ、行ってくる。先にこれ渡しておくから作れるのから作ってくれ」
「え!?ちょっ!まっ!」
素材をすべて渡し、日の沈み始めた森に向かった。