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46話 見舞と終幕

見舞と終幕



目を覚まして驚いたのは、日付だ。

日付を見ると、ゲームを始めた日から三日しか経っていなかった。

場所は自宅。ちょっとフラッとしてしまうと自分の腕に点滴が繋がっている。

最初に感じたのは空腹だ。

「腹減った!」

 父さん、あなたはまたセリフを取る。

「腹減った~」

「お腹すいた~」

「あらあら。でも、動けないわ」

 数分後、看護師が現れ、点滴を抜いてくれた。

 とりあえず、家に有った、冷凍食品とカップラーメンを食べる。

「テレビ付けるよ~」

 三日で、この事件はやはり大きく取り上げられていた。

 攻略サイト、運営側の公式サイト、すべてロキが乗っ取っていた。運営側は記者会見を開き謝罪していた。当の我々はさほど大きな衝撃は無かった。

「三日なら有給使えたし問題ない」

「学校も休みだったしね」

 意外と訴訟は起きなかった。理由は

「面白かったから」

「半年なら怒ってたけど、三日なら問題ない」

「怖かったけど、死ぬわけじゃないし」

 死傷者は0だったのもあった。

「でも、このままだと、確実にあのゲームできなくなるよな」

「……あのゲームで知り合った人、いっぱいいるのにね」

「だな。なぁ、みんなで、手紙とかメールとか書いて送ろう。で、続けてくれって」

「不謹慎かもしれないけど。続けたい。あんなに面白いゲーム潰してほしくない」


 思いのたけを書き、メールを送った。


 結果はメールで来た。どうやら同じ考えの人は多くいたようだ。

 再開までに時間はかかるが、必ず再開するといった旨のメールだった。


 先生たちからメールが来た。

「再開したら絶対一緒にやろう」

「もちろん。でもその前に白雪に会いに行きたい」

「よし。会いに行くぞ。オフ会だ」

 白雪のいる病院は同じ県内だった。ちょっと離れている。先生たちは3つほど県が離れている。高速道路があるから、大丈夫と言っていた。

 近所の駅まで迎えに来てくれるそうだ。



「じゃあ、行ってきます」

「ちゃんとお見舞いの品持った?」

「うん」

 花束と、俺の好きな本を一冊。もしかしたら、読めないかもしれないので電子データのものにした。

 服装は三日前に買った

 駅に行くとメールに書いてあった灰色のバンが止まっていた。

その中で待っていたのは非常に無愛想な男女だ。

「先生?」

「冬か?」

「はは、ほとんどまんまじゃないですか」

 思わず笑ってしまう。

「悪いな。ちょっと弄っただけで、ほぼ本名プレイだったからな」

「じゃあ、虎鉄先生も?」

「そうだ。乗れ。カーナビにはもう住所入れてある」

「花は、バラじゃなくて良かったのか?」

「か、からかわないで!」

 などとからかわれながら病院へと向かった。


大きな病院で、施設もしっかりとしたところだ。受付の人曰く、3階の病室にいる。3階は重病患者が多いとのこと。長らく見舞に人は来ていないことなどを教えてくれた。

3度ノックして部屋に入る。

いたって普通の病室だが、ベッドは一つ。窓際におかれている。本当に見舞いに来る人は少ないのか、花瓶は空だ。

『先生ですか?回診にはまだ早いんじゃないですか?』

 電子音が響く。

「白雪」

『冬?』

 彼女の容体は思わしくないらしい、呼吸器をつけ、点滴を打ち、ベッドの横には長らく使っていないと思われる車いすがある。

 しかし、見た目はゲームと同じ白雪だった。

「ああ、先生たちも一緒だ」

「白雪、元気か?」

「馬鹿、元気だったら入院なんてしないだろ」

『ふふふ。先生たちは相変わらずですね』

「声、出ないのか?」

『出にくいから、音声ソフトを使ってるの』

「そっか、これ、お見舞いの花。飾っとくな」

 空の花瓶に活けようと備え付けの水道から水を入れて活けておく。

「手は動く?」

『うん。本は読めるよ』

「じゃあ次から電子書籍じゃなくてちゃんとした本買ってくる」

 電子書籍データをベッドテーブルの上におかれたノートパソコンにインストールする。

『ありがとうございます』

「ゲームの復活、するってさ。またパーティ組もうな」

『もちろん』

「冬の無茶をサポートできるのは白雪だけだからな」

「ん?……朗報だ。MOO半年後には訂正版が出るらしいぞ」

『想像以上に早いですね。私は、1年ぐらいかかると思っていました』

「あの一件であそこに所属するプログラマーが増えたらしい。またロキのようなAIを作らないためだとか」

ロキの行動はプログラムだったのか。否か。

ゲーム終了後の論点である。

彼は最後に「これは自分の意志である!」と叫びデリートされている。

しかし、その発言もプログラムだったのか?

監禁された時間はたったの3日だった。果たしてどっちだったのだろうか。

「賛否は両論、だが私はあのゲームは面白いと思う。出たら間違いなくのめり込む」

「時間軸はロキが弄っていたから、ゲーム内での2日が現実の1日になるらしい。のんびりと楽しむさ」

「そうだね。復活すればまたみんなでやろう」

「おう」

「そうだな」

『うん。他のみんなにも会えるかな?』

「戻ってきたらまた滅茶苦茶やろうぜ」

「滅茶苦茶やった自覚はあったんだ」

『意外です』

「そういえば、嬉々とアテナから連絡あった。近くに住んでたから有ったらそのまんまの人間だったって二人とも言ってた」

「つまり、二人とも変な人だったと」

「君が言うな」

「さっきから酷い」

『まぁ、冬くんが変な人間だったからあそこまで出来たんだと思う』

「「だな」」

 変人は確定なんだ。

「そろそろ帰るか」

「白雪、近かったから、頻繁に来るけど良い?」

 電車を使えばそんなに離れていない、はず。いざとなったら自転車に乗ってくる。

『うん。ありがとう』

「妹とか、桜花とか連れてくる」

『うん、楽しみにしてる』

彼女に別れを告げ、部屋を出た。

「おいおい、告白しなくてよかったのかよ」

「巨大なお世話!」

「じゃあ、帰るか。また時間のある時に俺たちも見舞いに来るよ」

「じゃあ俺は電車で帰るよ。今後も使うから覚えないと」

「だな」

「そうだ。MOOが始まるまでの場繋ぎでまた新しいの見つけたから今度みんなでやろうよ!」

 ソフトも無料で今度はホラーらしい。

「ああ、じゃあ、ソフト名メールしろよ。どうせ冬の事だから忘れたから白雪の前で言わなかったんだろ?格好つけ」

「うっ」

 図星。

「じゃあ、またな」

 先生たちとも別れ、バスに乗った。駅から病院前までバスがあって、そのあと、電車で片道30分。休みの日でないと来れないな。小遣い足りるかな。お年玉残ってるから何とかなるか。

駅からいつもの町並みを歩いていると、あの道に来る。

学校からの帰り道。近所のオフィス街。いつもなら通り抜けるだけで終わるビルが立ち並ぶ街。

裏通りを通れば呆れるくらいに人が少ない。自転車なら人通りの多い表通りよりもこっちの方が時間短縮になる。

そう、すべてはこの道から始まったんだ。


「だ、だれか!ど、ドロボー!ひったくりだ!」

「そうそう、こんな感じでってえええええええええええええええ!?」

 黒い帽子にサングラス、マスクをつけた如何にもな男がこちらに向かって走ってくる。

 その向こうにはサラリーマン風の男性が一人。


 さて、次はどんな事件に巻き込まれるのか。


とりあえず話はここで愛知県、名古屋、終わりです。

番外編をちょっとだけ書いて完全な終幕とします。

今までお付き合いいただいた皆様本当にありがとうございました。

では、グロリゲスの次回作があれば今後とも御贔屓によろしくお願いいたします。

2014年2月6日

グロリゲス

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