40話 死亡と罰則
死亡と罰則
「いってぇぇぇ!」
そう叫びながら起き上ったのはこのゲームにログインした時に立っていたストーンヘンジのような遺跡、に似た場所だ。おそらく北の遺跡だろう。
痛みの元である、腹の周りにはべっとりと血が付いており、防具には数か所巨大な穴が開いている。喰われた右腕も損傷が激しい。防具の状態は破損。ああ、アテナに叱られるな。
なぜこんなことになったか。きっとロボに胴から上を食われたのだろう。
「えー死んだことによる、ペナルティは経験値の減少と3日間HP、MP共に1、か」
このゲームでは死んだ場合経験値の減少以外にペナルティが付く。内容は死に方により変わる。
「う、うごけねぇ……」
HP1は重症。死にかけ。動けば激痛が走る。唯一の救いは内臓は見えていないという事だ。
誰かにヘルプ貰わないとな……。白雪が迎えに来てくれると幸せだけど、実際は力的に虎鉄先生かランスあたりかな。
「冬!」
遺跡に飛び込んできたのは白雪だった。
「し、白雪?な、なんで?」
「大丈夫?!」
「あんまり、大丈夫じゃない。3日間HPとMP1だって」
「ば、ばかぁ……。ぐす、……なんですぐ復活しないのぉ……?みんなの話聞いてずっと待てたんだよ?ボスが特別なモンスターで死んだら復活できない仕様になってたらどうしようとか、半殺しのままつかまってたらいろいろ、いろいろ、考えちゃって……」
どうやらもう一つペナルティがあったらしい。しかもそれは復活時間の遅延。普通なら強制ログアウトになってしばらくログインできないというものなのだろうが、今回は意識を失っていたのだろう。
「ごめん……でもデスペナの一種らしくて」
「ぐす、ぐす……」
何とか動く腕を白雪の頭の上に乗せ。
「ありがとう、俺のために」
とだけこぼした。
「二人とも、イチャイチャしてると所悪いがそこにいるとみんなの注目の的だぞ?」
村雨先生の声に促され辺りを見回すといろんな人が集まっていた。虎鉄先生も一緒にいた。
「先生、動けないから助けて」
白雪は顔を真っ赤にしながら離れた。
「わかった。ほら、貴様ら、散れ!見せもんじゃないぞ!」
村雨先生が道を開けさせる。
「大丈夫か?」
虎鉄先生が肩を貸してくれる。
「あんまり。とりあえず、横になりたい」
「一応回復魔法してみますね」
白い光が体を包む。痛みは消えたが体は動かない。
「ごめん。痛みは消えたけど体は動かない」
腕も足もピクリともしない。虎鉄先生の背中に運ばれる。
「そうか……しょうがないな。3日はギルドの中でおとなしくしていろ」
「はーい……」
虎鉄先生に運ばれギルドまでたどり着いた。
ギルマスとしては情けないこの為体。
「大丈夫か?」
「体動かないよ」
へらへら笑い取り繕う。しかし、動けないというのは不便だ。
「飯食って寝てろ」
ベッドに捨てるように寝かされた。
「すまない、主人……」
ランスが頭を下げてくる。
「気にするな。俺が選んだことだ」
「ぎゃあああああ!防具に穴が!」
「ば、バグナウが圧し折れている……」
武具担当のそれぞれアイテムを抱え発狂している。
「ロボ許すまじ……」
「修理してもいいが、これが通用しないらな強化しないとダメだな……はぁ……けど、冬、傷ぐらいはつけてきたんだろうな」
「目に一撃。それだけ」
「マジか。お前の攻撃力で一発だけかよ」
「固いな」
「目にあたったことでたぶんクリティカルヒットだ。けど、体力が高すぎる。人を集めても攻撃が通らなけりゃ何の意味もないぜ?」
0に何を掛けても答えは0。当然でありながら何とも残酷だ。
しかも、血を浴びる者やオールアップのようにステータスを上げる効果も使っての0である。厳しい。
「ロキが……果たしてそんな無茶をやるだろうか」
「?」
「あいつは、ずるがしこく滅茶苦茶だが、そういう無理は言わないと思う」
「確かに、意地は悪いがちゃんと経験を積んで工夫すれば倒せない相手はいなかった」
「今回もそれに該当しうると?」
「ああ、何かヒントがあるはずだ」
「敵の名前はか、「ロボ」でしたよね?」
「ああ、確かにそう名乗ったよ。自分が狼王だと言っていた」
「狼王ロボはシートン動物気に出てくる実在した狼です」
白雪は続ける。
「ロボは狼の群れのボスで体も大きく賢い。シートンの仕掛けた罠を全て看破した」
「ふむ、シートン動物記でもっとも有名かもしれんのう」
「ロボには白い狼の連れ合いが居ました。ブランカです。シートンは彼女を先に捕らえ、その後助けに来たロボを捕まえています」
「……つまり、ブランカを先に捕まえろという事か?」
しかし、先ほど出会ったとき白い狼はいなかった。いないのか?いや、戦闘になると解って逃げたか?ダメだ。ロボの印象が強すぎて周りの事が思い出せない。
「白い狼を探して捕獲か、撃破。それが目標ですね」
「なんで捕獲?」
「ブランカはロボの愛妻。下手に殺すと攻撃力とか上がりそうですよね。でも捕獲なら人質として使えるかと」
「メタ読みか。だけど仕方ないな。そうでもしないと攻略できそうにない」
「こちらのリアル知識を試してきているな」
「白雪とじいさんが居なかったら気付けなかったかもな」
照れ笑いの白雪マジ天使。
「白雪、探索頼む」
おそらく白雪の知識と目の付け所は確実に
「わりました」
「ランス、白雪の護衛を頼む」
ステータスを見たところ防御が最も高いのはランスだった。ただし片手剣と盾持ちの時だが。
「ジャッさんとクロスも一緒に行ってくれ」
この面子ならほとんどの敵に対応できるだろう。
「残りで街の情報収集を頼む。生産職組はアイテムの作成と武具の強化を頼む」
「わかった。で、冬の面倒は誰が見るの?」
「え?」
「だって基本寝たきりでしょ?私嫌よ?防具直さないといけないし」
アテナさん、俺は防具以下なんですね。嫌、わかってたけど。
「儂も嫌じゃのう。なんで男の世話を焼かねばならんのじゃ」
「俺は折れたバグナウの修理と強化だ」
「料理以外は苦手なんすよね」
「私が回復アイテム作らないと困る人が多いんだよ~」
全員拒否とか悲しい。
「僕がやりますよ。僕、そういうの得意なんですよ」
トヨ、お前がまぶしい。だが、男だ。
「あ、畑の様子を見に行く時間はくださいね」
「おう、それは解ってる。別に四六時中一緒にいてくれって言ってる訳じゃないしな」
「基本的に困るのは飯と風呂の時だけかな?」
トイレは?と聞かれるとこのゲームでは不要となっている。虎鉄先生の話ではリアルの方がどうなっているかは不明だが、ログアウトで来た頃は長時間プレイが出来ない様に設定されていたという。再ログインにも時間が経過しないと入れない様になっているため、その間に用を足していたらしい。
風呂は温泉等を楽しむために設定がある。もちろん、全裸ではなく、水着でだが。
「風呂だけ誰か手伝ってくれよ」
「湯船に浮かべとくだけでいいか?」
虎鉄先生、それは残酷すぎやしませんか?下手したら溺死ですよ?
「風呂の事は後回しだ。じゃあ、頼んだ」
全員が出て行った。
あれ?意外と一人はさみしいぞ?
復活しました。
ただ、忙しいので更新速度を週一から月一に変更します。
暇になったら週一に戻します。




