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39話 凱旋と撤退

凱旋と撤退



 集めた情報は次の通りだ。

・狼は2週間ほど前から増え始めた

・ボスが従えているのは狼系のモンスター

・配下にあるモンスターは普通のモンスターよりもレベルが高い

・巨大な狼を森の中で見かけたらしい。

・襲撃イベントは定期的に発生する。

・猟師数名が犠牲になっている。

・狙いは人と家畜。

・NPCの話だと狼が増えたというよりはそれ以外の動物が減っている。


 森が汚されている原因がいまだに不明。


「狼たちは強い。十二分に装備を整えてから……」


「回復アイテムは大量に作ってありますよ」


「飯も用意してあるっす」


「武器の修理と新調もしたぞ」


「防具も同じくよ」


「儂は素材作りしかせなんだよ」


「そ、その素材で罠作っておきました。設置型の罠です」


「わかった。使うよ」


 狼は数が多いから、足止めに使えるだろう。


「チームを防衛班と索敵班の二つに分けよう」


「組み合わせは?」


「さっきと一緒で……」


「いや、チームを変えよう」


「なんで?」


「白雪はジャスティスと、虎鉄とクロスは交代だ」


「「なぜ?!」」


 虎鉄先生とハモった。


「ミクロンとジャスティスを組み合わせると君らが無茶するからだ」


 完全に女性陣と男性陣で分断された。


「こ、こっちに回復役が……」


「ハイ、回復薬」


 ひ、ひでぇ……。


「え、遠距離が」


「ジャスティスが銃使えるだろ?」


「んなぁ?!」


 虎鉄先生が明らかに不機嫌だ。


「まぁ、全員が前衛職だから大変だろうな。まぁ、物は試しだ。やってみろ」


 ひ、ひどい。




「大きい狼いた?」


「ダメだ、ちっとも危険予測に反応しない」


「ジャスティス、レーダー!ダメだ。全然反応しない」


「説明しようジャスティスレーダーとは、スキル複眼を使用し、広範囲にわたり、敵の探索を行うスキルなのだ!」


 ただし、夜は暗視が無いと使用できない。


「いえーい!」


 ジャスティスとハイタッチを交わす。


「お前ら、仲良いな」


「ジャッサンはいい奴!」


「冬は強い!」


 数回の戦闘でお互いを認め合ったのだ。二人でプロレスしているみたいで楽しい。投げて、飛んできたのに対してカウンター、タイミングが合わなければ、ランスか虎鉄先生に受け流し。これで斬殺されないオオカミは一匹もいない。


「けど、じゃっさんって呼び方は正義っぽくない……」


「でも呼びやすいんだよね」


「納得いかぬ!」


『人だ、美味そう』


『人だな、美味そうだな』


『喰っていい?喰っていい?』


 狼男の声がする。


『王の御前だ、つつしめ』


『献上する』


 王?


『王も働いている。女王のために、群れのために』


『すべて、人が悪い。俺たち飯へった。なら人を喰う』


『人を喰らえ、群れのために、王のために!』


 狼男どもが飛び出してくる。数は4。草むらの向こうに巨大な敵影。


『お前も狼の血を引くものだろう?王の御前だ。頭を垂れよ!』


 狼どもが吠える。


「聞こえないなぁ。俺は俺の群れのボスだ」


『ならば、敵対勢力とみなす。やれ』


 数匹のオオカミと狼男が飛び掛かってきた。


「切裂き」


 手刀を使い、狼を一閃、一撃で屠る。


「ジャスティス、キーック!!」


 蹴りで敵が爆発するのを特撮以外で初めてみた。足の裏にトヨ特製の地雷をつけたのだとか。地雷の威力+キックの威力で狼は消し飛んだ。


「狼の串焼きが出来るな」


 ランスが槍を狼に突き立てる。


 虎鉄先生も無言で近づく敵を一掃していく。


「掃討完了。虎鉄殿、オールアッパーをお願いする」


 スキル:オールアッパー。全ての能力が上昇する魔法。MP消費大。


『わおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!』


 周囲に遠吠えが響く。その気配に身の毛がよだつ。




1893年秋。

ある博物学者がアメリカ南西部の草原へ向かった。

西部改革が終わろうとする時代、彼の任務は最後の無法者、狼を追い詰める事であった。

しかし、2週間で片付くと思っていた仕事は長く厳しい戦いになった。

その戦いは彼の心を揺さぶったばかりではなく、ついにはアメリカ国民の自然に対する見方を大きく変えることになる。

すべてはある、驚くべき動物との出会いから始まった。


彼の名前はアーネスト・トンプソン・シートンである。




冬たちの眼前に姿を現したのは全長10メートルは有ろうかという大きな狼であった。


『俺の名はロボ。この辺りを統べる狼のボス。群れの連中は俺の事を狼王と呼ぶ』


 彼はそう名乗った。


『お前の名は?』


 こちらを見ながら言う。


「狼の寝床のギルドマスター、冬だ」


『冬か、お前は狼の血を引く者。俺の傘下に入れ』


 目の前に


『ロボの誘いに乗りますか?はい/いいえ』


 という選択肢が出てくる。俺はもちろん。


「ノーだ」


『ハッハッハ!その心意気や良し!』


 ロボをその巨大な爪を振るう。


 危険予知が教えてくれる。まともに当たれば即死であると。


「全員回避!受け流し!」


 籠手をうまく使い、爪を受け流そうとしたが、その圧倒的なパワーは腕に凄まじい衝撃を残していく。


 力がありすぎて受け流しでもダメージを0にすることはできないようだ。


「おい冬、大丈夫か!?」


「大丈夫。けど、次喰らうとたぶん骨が折れる」


『貴様らは敵と見なす。冬の心意気を買って全力で殺る』


「当然だろ」


 ニヤッと余裕ぶって笑ってやるが、正直、勝てる気がしない。


「行くぞ!」


 ロボの懐に一瞬で飛び込み、手刀で切りかかるが、体毛に拒まれる。


『どうした!威勢だけか?!』


「ちっ!」


 スキル遠吠えも相手の方がレベルが高ければ効果が薄い。連打、殴打も実際の所、切り裂きより手数が良かったり、攻撃範囲が広いだけで威力は変わらない。斬撃か打撃かその程度の違いでしかないのだ。


「連打!」


 20発の猛撃を繰り出すが、少しのダメージしか与えられない。


『所詮この程度か』


「全員退避!今は勝てない!撤退だ!」


 しかし、先手を取られるほどのスピードを持っている。


「俺が注意を引く!貴重品と金は預けておく!」


『その考えは群れのリーダーとしては不正解だ』


「狼ならな!」


「わかった。みんな、行くぞ。ランス気持ちは解るが、これは冬の決断で、命令だ」


「……了解」


 3人分の駆ける音が聞こえた。


「追いかけないんだな」


『俺も群れを担うもの。愚問だろ?』


 ロボの顔が笑ったように見える。


「じゃあ、精いっぱい時間を稼がせてもらうぞ!」


 ロボの脇に回り込み、飛びつく。しかし、ロボは俺のくっついている方から地面に転がる。


 とっさの所で飛び退くがそこから牙で追撃。片腕が食われた。代わりに目に一撃手刀をくらわせる。弱点だったのかダメージが入る。


「ぐあっ!!」


 傷口はジクジクとした痛みを伴いながら血を流している。


 片腕でも食らいつかねば、未だ、時間が足りない。


『くっくっく……さすが群れのボスか、意地は見せてくれる』


 目に刀傷を負ったロボが言う。


『その気概に免じて、お前の命だけで許してやろう』


 その言葉を聞いた瞬間ロボの目の前に飛び出し、眉間目掛けてバグナウを突き刺そうとするが、バグナウが折れた。


「なっ?!」


『飛んで火にいる、なんとやら』


 ぐしゅっと音を立てた瞬間腹の辺りに激痛を感じ暗転した。



『あなたは死亡し、狼王ロボとの戦闘に敗北しました。ペナルティが発生します』



おまけ

冬「虎鉄は全員を統率!ランスは退路を開け!」

虎鉄「で、でも……!」

冬「聞こえないのか!!ジャスティスを連れてギルドに戻れ!!」

ロボ「何この茶番…」


作者より

この狼王ロボはシートン動物記に出てくるハイイロオオカミです。

体の大きいロボは一説によるとタイリクオオカミではないかという話もあります。

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