36話 親子と預言
親子と預言
面接の最後に来たのは……。うげぇ……。
「はーい、こんにちは」
そこには2人のプレイヤーが立っていた。一人はどこかで見た顔。もう一人は忘れたくても忘れられない恐怖の象徴。
「うわ……最悪、なにしに来てんだよ」
「あら、両親に向かってその言いぐさはひどいんじゃない?」
その言葉を聞いて目を丸くするのが数名。
「人んちのギルドの面接に殴りこんでくる方がひどいと思うけど?だろ?夫婦ギルド「鴛鴦」のギルマスとサブマス、大和の甲虫と加速魔女」
「か、加速魔女!?魔法使いでも指折りのトッププレイヤーじゃないか!」
先生が飛び退く。
「ていうか父さんまだ生きてたのか。見かけなかったから死んでたのかと思った」
「ひどい!っていうかデスゲームじゃないからな、これ!」
「リアルでは社会人として死にそうだけどね」
2カ月以上も無断欠勤。確実に首だね。
「そういう事言うなよ……これは事故だから、事故だから!」
まるで自分に言い聞かせるように父が叫んでいる。
「お前もおかしいと思っていたが両親譲りだったのか納得」
「春ちゃんも強いしね」
「あらあら。随分と可愛らしい子がいるわ。あなたも隅に置けないわね」
「!?」
白雪の方を見ながら言う。白雪の白い肌が赤く染まる。
「ばか、うちのサブマスだよ。狼の魔法使いだ」
「あら、この子が白光狼さんね」
「じゃあ、そっちの人が狼の懐刀の2人ね」
先生たちの事だ。
「それにしても、随分警戒されてるわね」
「最近、ギルド同士のけんかが目立ってるからな。うちもこういう事をするなら大事に巻き込まれるだろうと踏んでいた」
「なるほど、でも、安心してほしい。私たちの目的は息子に会いに来ただけだ」
「ふーん。俺は別に父さんに会いたくなかったけどね」
「なんなの?さっきも娘に拒否されたし」
「なんだ、春の所にも行ったのか」
「最近の騒ぎの事もあるからね」
「狼騒ぎだろ?」
NPCが口々に話すのだ。
「最近、オオカミが増えて困るわ」
「昨日森に入ったら狼に飛び掛かられた!持ってた鍬で撃退したが危うく死ぬところだった!」
などなど。被害の声を上げるNPCが続出している。
「私たちはあれをイベントのフラグだと思っているの」
「それが妥当か。ただ、一筋縄ではいかないだろうけどな」
あのロキが発動したイベントがまともとは思えない。
「狼の話は北と東で話されている」
「南と西では別の話が出ている」
「母さんたちは東で活動してるんだっけ?」
「ええ」
「あそこのトッププレイヤーはどうするつもりだ?」
「さぁ?あの人は気まぐれだから」
「?トッププレイヤーは母さんたちじゃないのか?」
「そうね、そうよ、と言いたいところなんだけど違うよ」
「ああ、あるソロプレイヤーが間違いなくトッププレイヤーだ」
「そんなに強いのか。名前は?」
「強い。名前は……」
「ピンポンパンポーン!」
ちっ!あの声だ。
「やあ、やあ。みんな、オオカミと虎に苦戦してないか?そんなに強いレベルには設定してないけど、数が数だからねw一定数倒すとイベントが発生するよ。頑張ってね」
「こ、これは罠……か?」
「そうは思えない。単なるクリアのためのイベントじゃないのか?」
「そうですね、足止めに来ているのか、誘導されているのかわかりにくい所ですね」
「とりあえず、合格者を集めるぞ。会議に参加してもらう」
先ほど合格した面々を集める。
「あー諸君。集まってくれてありがとう、俺がここのギルドのマスター冬だ。狼でレベルは50だ。新人諸君は面接に合格した。おめでとう。さくっと自己紹介だけ頼む」
自己紹介は割愛。
「全員終わったな?では本題へ。あのバカが、イベントをやるという事だ。このイベントリスクがかなりデカいと俺は踏んでいる。とんでもない化け物と戦わなければいけなくなる。そんな予感すらする」
「狼のイベントと見て間違いないでしょうね」
「とりあえず倒していくというのが手っ取り早いか」
「2チームで行く。俺と白雪とランスとクロス・クロスのチーム。虎鉄先生と村雨先生とジャスティスとミクロンだな」
「了解。残りのメンバーは回復アイテムや強いアイテム作成をやってみるわ。トヨ君は罠作成ね」
「はい!」
変声期がまだなのかトヨは高い声で返事をする。
「では出発。イベントがいつ発生するかわからないけど夜には一度集合しよう」
という訳で予定通りお父さんとお母さん登場です。




