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35話 面接と人材

面接と人材


ギルドができて1週間がたった。

『狼の寝床』は知名度を増していった。

 フィールドに出るたび何かしらの成果を得ていた。


「西北西の沼」の発見と突破、北西の丘陵の発見。

新しい素材を使用した防具生産と流通。新しい金属加工の技法の開発に着手。


探索、生産の面においても彼らの話が出ない日は無かった。


目立つというのは良い事もあったが、悪い事もある。


良い事は、俺が一切NPC扱いされなくなった。

悪い事は、ギルド加入希望者の増加だ。確かに現在戦闘が4人、生産職が3人と心許無い。

しかし、明らかに格下の寄生と呼ばれる者、甘い汁を吸いに来るもの、冷やかしがほとんどで対処が面倒になってきた。


しかし、人材不足は否めない。今週は探索を控え人材の確保を行う事にした。


「第5回狼の寝床会議を始めます。どうやって人材を集めますか?」

 白雪が問いかける。


「そうだな。普通ならパーティを組むための施設、酒場を利用するのが普通か」

 村雨先生が提案する。


「じゃがそれは結局寄生やらなんやらが集まってくるだけではないかのぉ」

 ニコラのいう事ももっともだ。


「フィールドに出てスカウト」

「相手がギルドに入ってたらどうするの?」


 このゲームにおいてギルドを作るだけなら簡単だ。中央街に行って申請すれば名前を決めるだけで作れる。規約や規律はゲームの規約を守っていれば基本的に任されている。すでに有名なギルドは存在する。


武闘派ギルドだとヘビのギルマスが指揮する「サーペント」、和服装備で統一された「塚田道場」、中二の集まった「PAIN」。魔法使いが中心の「ピエール魔法学校」など。


生産ギルドだと、ひたすら鉄加工をする「匠の鍛冶場」、肉や乳製品、牛革や羊毛の扱いに長けた「アースの牧場」、防具の大量生産を行っている「順風呉服店」、木材加工のプロが集まる「モック木工店」などである。


今紹介したのがすでにお金を集め家を購入、建築したギルドである。どこも人が多く所属する大ギルドか自分たちで建築が可能なメンツである。


逆に家を持たずに放浪状態、仮宿状態でも有名なギルドはいる。


夫婦、カレカノだけで集まったリア充ギルド「鴛鴦」、愛猫家だけで集まったギルド「猫カフェ」、猫カフェの敵対勢力「犬小屋」、傭兵集団「砂風」だ。


生産ギルドのほぼ全部が家を自分たちで作れるほど金をため込んでいた、ないし、建てることができた、建てられる人とつながりがある、という状態だ。


「大ギルドがいい人材をスカウトしていくから良いプレイヤーはほとんどほかに所属しているぞ」


 ちっ。どうしたものか。


「しょうがないな。面接でもするか?」


「無難かな?」


 結局面接にした。人が集まるといいが……。




急募!我々「狼の寝床」は生産と戦闘両面から人材不足を感じています。よってメンバーを募集します!採用は面接を通して行います。募集人材はレベル20以上で生産職、戦闘職、どちらでも可。後衛、前衛2人ずつ、生産職は料理人、そのほか。マイナーな職業の方でも気軽にどうぞ。



果たしてどれだけの人が集まるのか。



 酒屋の掲示板に張り出された一枚の広告。それには大勢の人が集まっている。


 僕は商店ギルドを探しにここに来た。取引相手を探すために。店売りでもいいのだが、正直、取り扱っている商品が思った以上に安いのだ。絶対に役に立つはずなのに……。


他のギルドにも行ったが、どこも安値でしか買い取ってくれない。


「悪いね。家じゃ需要が無くてね。この半値なら買っても」


 大人は汚い。それならNPCに売った方がまだマシだ。


「こっちはいつロキの気まぐれでデスゲームにされるかわかんないんだよ!冷やかしなら帰れ!」


 それでも僕は諦めない。


「よう、少年。気合いの入った目だな」


 一人の男が声をかけてくる。


「君みたいに生きのいい新人が入ってくるとうれしいな。ぜひ、面接に来てよ」


 男はそういうと紙を一枚渡して白い女性と店を出て行った。


「?」


 ギルドメンバー募集と書かれた紙だ。生産職でもいいのか?ええい自棄だ!行ってしまえ!




「お前は首だ!」


 そうギルドマスターから言われたのが1週間前。理由はどうしても譲れない騎士道なのだ。


「剣を持たせたら一流、足も速い。なのに不意打ちはしない。騎士道?馬鹿か!」


 そういわれて喧嘩になり、ギルドをやめた。


 そこからそのギルドによるひどい嫌がらせにより、私は誰とも組めずにいた。独りで何とかできなくもないが、正直回復薬がいないと厳しい。


 無駄骨と思いつつ、掲示板を見るとちょうど誰かが貼っていったところだった。後ろ姿は黒と白のプレイヤーだ。オセロ?しかし、二人のオーラはその辺のプレイヤーよりも数段上の気配を感じた。


 何の気なしにその掲示板を覗くと、ギルドメンバー募集のチラシだった。生産も前衛も?珍しいギルドだ。ダメもとで面接を受けてみよう。





ああ、もう、金がない。死にすぎたのだ。最悪だ。デスゲームなら980回は死んでいる。何とかしないと。

「お、おい、あんた、なんか食わせて……」


「大丈夫かのう?」


 爺の袖をつかんだ。渡されたのはパンだった。


「う、美味い!くそっ!俺にも材料があれば!」


「あら、料理人?なら、うちのギルドを受けてみるといいわ。はい、これ」


 爺の隣に居た女性が牛乳とチラシをくれた。


「あ、ありがてぇ!」


「頑張ってね」


 ギルドメンバー募集?なん、だと?あの人たちに恩義を返すために、受けに行くぜ!





「正義」それが俺の掲げてきた、信念、生き様である。


「悪」と戦う正義の戦士。それが俺の憧れていた、ヒーロー像である。


 そしてロキは悪である。これは誘拐である。俺が必ずみんなを助ける!


 しかし、ヒーローも孤独では倒せない敵がいる。何人かと協力して戦ったが、どうやら彼らは一般人。俺の事を理解するに至らなかった。


 今日も今日とて悪を倒すために、一人、フィールドで戦う。 


 出てきたモンスターをひたすら倒す。


 そして草から出てきたもう一匹に攻撃を仕掛ける。


「うお?!危ない、危ない」


 俺の攻撃が、止められた?


「生きが良いな。急げ、そろそろ始まるぞ?大体君は……」


「あー、悪かった。だから、急ごう」


「ったく」


「あ、そうだ。これ」


 俺の攻撃を止めた黒い犬系統の男は紙を一枚こちらに渡してきた。


「ギルドに所属してなかったらよろしく」


 ギルドメンバー募集?ふむ、良いだろう、あいつが正義か、悪か、俺が見定めてやろう!




ボクはここまでラッキーだった。敵からの奇襲は無かった。すべて見つけることができた。運がいい。マイナーな武器でも使い方を間違えなければ、十二分に戦えることを知っていた。でも、いい加減、誰かと組まなければ戦えない。でも、私の武器は……正直チーム戦に向いているとは言い難い。奇襲や待ち伏せといった戦い方が向いている。


 何かないだろうか……。


「いらっしゃい。ああ、あんたか。あんたも馬鹿だな。こんな武器コストが合わんだろ?いやいや、俺はそういう馬鹿が好きでね。俺もギルドに所属したからには仕事しないとな。ほら、これチラシ。家のギルドのな。あんたみたいに面白いのがいる方が、俺も楽しい。もちろん他の奴らがあんたの実力を認めれば、だけどな」





 生産職。それは孤独。だが……

 もういやだ!誰かと話したい!かといって馬鹿にされるのは嫌だ……ウウ……どうしよう。


「おや、今日も来たのか。家の材木だろ?持っていきな。あ、そうそう。あんたソロプレイヤーだろ?これ、持っていきな」


 一枚の紙を渡される。


「いやね、うちのお得意さんが、ソロプレイヤーやギルドに入ってない奴に渡してくれってよ。寄生じゃなかったら良いんだと」


 こ、これはチャンスなのか?でも、うーどうしよう……。




 集まった人間は全部で40名。採用枠は何名でも、と言いたいところだが、正直まともなのが10人いるかどうか……。


 案の定最初の10人は完全に寄生だった。


「俺、レベル低いっす。助けてほしいっす」


「初心者なんでわからないんですぅ~。だから回復アイテムとか援助してくれると助かるなぁ」


 ウソつけお前ら、レベル20以上あるだろうが。こういうタイプは絶対努力しない。努力する寄生なら大いに結構。入ってもらって後々貢献すればいい。



「はぁ、頭が痛い」


「そうでだね。次の方はまともであることを祈りましょう。では次の方」


「は、はい!」


 緊張した声と共に一人の少女が入ってきた。高校生、というよりは中学生ぐらい。5年後が楽しみな美少女って感じ、服装はデニムのオーバーオールだ。


「では、ユーザーネームと種族、レベル、武器を教えてください」


「ゆ、ユーザーネームはトヨです!種族は、植物系のセイヨウリンゴです。れ、レベルは32で、生産職です!」


「そんなに緊張しなくていいよ。しかし、初の生産職か」


「何を作ってるんですか?」


「は、はい!えっと、野菜とか薬草とか毒消しとか」


「一次生産職だな。有名なギルドだとアースの牧場だな。あそこは肉や羊毛、乳製品の取り扱いにたけたところだが、確か農業もやっていたはずだ。なぜそっちに行かなかった?」


「えっと、断られて。そういうのは足りているし、そこまで需要が無いって言われて」


 一次生産職はNPCがほとんどだ。NPCから購入しても安値で手に入る。需要は低いか。


「自分で短所を言うなよ」


「はう!?」


「でも、土と野菜、薬草以外の匂いがする」


「そうですね」


 獣人化して嗅ぐと木材と火薬の匂い。


「あんた、何を作ってる?」


「えっと、罠を少しだけ……。そうしないと畑が、モンスターに襲われるので」


「なるほど、どんな罠だ?」


「えっと、見てみますか?」


 そういうと少女は鞄の中から円盤と石ころを取り出した。


「これは?」


「簡易地雷です。石の方はとりもちです。今は固いですけど、強い衝撃を与えると広がって相手の動きを封じます」


「すげーな!これ、需要がなかったの!?」


「基本的に待ち伏せようですからね」


「いや、十二分に強力ですよ」


「むしろ、一次職は重要だろ。細かい経費が減る」


「えっと……」


「ありがとう、トヨちゃん。これで面接は終了。聞きたいことは?」


「えっと、僕、男なんでちゃん付けは……」


「は?」


「男です」


「お、男の娘だと!?」


 変態が飛び込んできた。


「帰れ」


「いいじゃん。別に。終わった後何人か家で使えそうなのをもらっていこうかと思ってただけだ」


「たちの悪いヘッドハンティングだな」


「いいじゃん、ケチ」


「帰れ。帰らないなら殺す」


「はいはい、帰りますよ。トヨくん、落選したらおねぇさんの所にいらっしゃい」


「行かない方が良いぞ」


「失礼だな!でもめぼしいのは大体声かけたし、帰ろう」


 モックが退出した。


「ったく。で、他に聞きたいことは?」


「えっと、合格不合格は?」


「ああ、明日連絡する。と言ってもみんな決めてるみたいだな」


「そんな心配そうな顔しなくていいよ。メールを送る。送ったら来てくれればいい。嫌なら、まあ、断ってくれてかまわない」


 それは答えを言ったのも同様だ。だけど、気付かなかったようだ。純粋なのか鈍いのか。



 それからは不作。4人がチームで来て、名前が欲しい、でもアイテムも分けてほしい。ほかの連中も暴れて帰る馬鹿が居たり、別のギルドの奴が「うちの島で~」というのでボコボコにして追い返したり。



「次の方~」


「ハイ」


 入ってきたのは剣を腰に携えた人だ。種族は馬だ。なぜわかったかって?獣人化して入って来たからだ。


「その甲冑、イメージはナイトかしら」


「うむ、私の名前はランス。騎士だ。種族はマスタング」


「マスタングって?」


「野生種の馬ですよ」


「強い?」


「戦えば解るものと」


「おk。デュエルシステムを使う」


 デュエルとはプレイヤー対プレイヤーの決闘である。負けるとデスペナルティの代わりに1時間動けなくなる。


「どちらかのHPが一定数量減ったら終わりでどうよ」


「先に半分減った方の負けでどうだ?」


「この数日、まともに戦ったのは数日だけだったからな」


 指を鳴らし、武器を取り出す。


「久々の戦闘だ」


『デュエルシステムが選択されました。決闘方式は1対1。デュエルが開始されます。両者準備をお願いします』


 お互いに用意されたリングに入るとアナウンスが流れる。


『両者準備が整いました。開始まで3、2、1、デュエル、スタート!』



「さぁ、勝負!」


 まずは様子見で軽く打ち込む。ランスは剣を構えたまま横に飛ぶ。早い。さすが馬か。


 何の躊躇もなく素早く剣が振り下ろされる。その一撃はこちらの首を狙っている。一撃必殺狙いか。


「受け流し」


 軽くいなし、カウンターを打ち込む。


「ぐっ……」


「かてぇ……」


 ナイト系の特徴は重厚な防御力。いくら俺でも4分の1も削れたらいい方だ。だが、あと一撃入れたらこちらの勝ちだ。


「うむ、私が一撃入れられるとは思わなかった」


「早いもんな、あんた」


「あんたもな」


「いやいや良いナイトだ。早い、固い、剣も上手い」


「俺の聞いた話も正しかったんだな。狼の寝床の主は化け物級だって」


「おいおい、どんな噂を聞いてきたんだよ」


 にらみ合ったまま動かない。


 互いに間合いに入ったら終わりだ。


「ここで試合終了だ」


「?」


「あなたの実力は解った。私が仕えるに相応しい人物だ」


「おろ?」


「私の名前はランス、円卓の騎士のランスロッドから取った」


「おk。合格だ」




「魔法使い来ないな」


 生産職1、前衛職1。いい獲得率だが、後衛職が欲しい所だ。


「次に期待ですね」


「失礼します!!!」


 人一倍大きな声が部屋に響く。


「俺はヘブン!天国に連れて行くほどの料理人だ!」


「あれ?あんたは、死にかけてた人」


「アザース!覚えててくれたんっすね姉さん!」


「私はあんたの姉じゃないわよ!」


「長老も!アザース!」


「うむ、若いのぉ」


「料理人か、トヨとの相性に期待だな。肉は俺たちで取ってくれば大丈夫だ」


「でもなんであんなところで死にかけてたの?」


「いや、食材を手に入れようとフィールドにでたら死にまくって」


 戦闘の才能がなかったんですね。


「金も食材もなくした」


「ど、ドンマイ」


「でも長老と姐さんのおかげで助かったッす!恩返しがしたいっす!」


「そうだな、今ある食材でどの程度の料理が作れるかだな」


「おうよ!野菜はあるか?肉は?牛?スゲーな!」


 ヘブンが食材を持って一階のキッチンに入る。キッチンに入ると目の色が変わる。


「……」


 包丁を手に野菜を切っていく。フライパンの前で口を開かず、ひたすらに腕を振るう。


 寡黙。どんなにお喋りな人間でも職人であれば作業に入った時口を閉ざす。


「酢豚だ。パイナップルは抜いてある」


 男はそういって全員の前に料理を置いた。俺と白雪の前には肉のみの酢豚。


 口に入れた瞬間酢の甘酸っぱい味と、肉の程よい弾力が口に広がる。


「美味い!採用!」


「単純だな」


「アザース!」





「次の方~」


「とぉう!」


 扉をぶち破り、一人の男が飛び込んできた。


「俺の名前か!?俺は正義の戦士ジャ……」


「おい、扉、直せよ?」


「あ、はい、すいません」


 男が扉を閉めてこちらを向く。


「では、名前、種族、それと武器を」


「俺の名前は正義の戦士ジャスティス!俺は悪の組織に飛蝗人間に改造されたが悪を倒すために活躍する正義の戦士だ!武器は己の拳と脚だ!」

 

 うん、最初からわかってたけど、めんどくさいのが来たな。


「貴様!貴様は悪か!正義か!答えろ!」


「お前の悪はなんだ?」


「ロキ!」


「ならお前にとって俺は正義だ。俺の敵は人工知能、ロキだ」


「なるほど、なればお前は俺の友だ!一緒に戦おう」


 めんどくさいが、強いという事だけは解る。


「武器は?」


「ナックルとブーツ!」


「お!ナックル仲間!」


「ああ、通りで同じ匂いがすると思ったわ」


「ブーツか!これだ!これが良い!」


「おお!いっつぁひーろー!」


 おおよそ面接と思えないやり取りでジャスティスのスカウトに成功した。




 今の所前衛が2人、生産が2人か。やはり後衛が欲しいな


「つぎ~」


 しかしそれ以上に疲れた。


「ラッキーだったよ!」


「ん?」


「ごめんなさいだよ。ボク、ちょっと寝坊したんだけどまだ、面接やってたよ!」


「おお、そうなのか。よかったな。じゃあ、名前と種族と武器を言ってくれ」


 見た目で女性と分かった。しゃべり方はボクっこか。年齢は俺と左程年齢も変わらないな。


「名前はクロス・クロスだよ。種族はトビウオ、武器はボウガンだよ」


「でたな、不遇武器」


「またか」


「ボウガンや弓は消費量が多くて扱いも大変なんだ。それにリロードに時間がかかる。クロスボウガンにもよるけど連射タイプでも3発程度だ。その分重くなるし、扱いづらい。銃は大きさも大きくないし、リロードも楽だからな」


 どんな武器でもデメリットはある。そのデメリットがメリットを超えてしまうと不遇なのだという。

 ましてや銃は弓やボウガンから生まれた武器、メリットが大きいのも至極当然である。


「もちろん俺のボウガンならそれを解決したものはあるけどな」


 嬉々が久々の不遇武器でテンションが上がっているのか語り始めた。


「ボウガンの良い所っていうのは敵に突き刺さるってところなんだよ。それによる継続ダメージや楔として扱う事で近接ダメージを与えた時に追加でダメージを与えることができる矢があるんだよ。銃なら炸裂、散弾、通常弾ぐらいしかないけど、ボウガンや弓にはもっとバリエーションがあって楔、火矢、フック、ネット、毒矢など様々なバリエーションがあるんだよ。もちろん銃でもそういう弾を作れなくはないけど、大抵、貫通してしまうし、連射した方が効率いいなんて意見もあるんだ。ま、ボウガンの方が威力低いし当然なんだけどな。ボウガンもちゃんと素材にこだわってやれば高威力が出るのに先人たちがサボったばっかりに……っとしゃべりすぎたかな」


 一人べらべらしゃべっている嬉々をぽかんと口を開けて眺めてしまう。いかん、興味のない話だと眠くなる!


「この人いい人だよ!」


 ボウガン仲間を見つけたと笑顔の少女に


「そいつ不遇武器の専門家でね。家のプレイヤーの戦闘職はみんな世話になってる」


「知ってるのだよ!この人が紹介してくれたのだよ!」


「あれ?嬉々が誘ったの?」


「何だよ?ダメだったのか?戦力的に申し分ないだろ?」


おや?これは?


「合格しなかってもまた来ていい?武器の手入れとかしてくれる人がいてくれると助かるのだよ」


「いいぜ、でもみんなの反応が結果を教えてくれてるけどな」


 思わず、にやにやしてしまった。


「?」


 少女は不思議そうな顔をしていた。



 もう残りの人数も減ってきた。頼む、そろそろ魔法使いを……。


「し、失礼しま~す」


 ハエの止まりそうな話し方で女性が入ってくる。


「はい、名前と種族、生産職か、戦闘職か、生産職なら何を作っているか、戦闘職なら武器、魔法を答えてください」


「名前はミクロンと言いま~す、種族はカエルで~す。生産職と魔法も使いま~す」


 魔法使い来た!よかった!ほっとした!


「兼任か?」


「はい、えっと、生産してるのは薬で~す。魔法は火と毒で~す」


「へぇ、…毒?」


「ああ、風と土でできる魔法だな。低レベルでもできる応用魔法の一つだ」


「毒と火ってまた奇妙な組み合わせだけど?」


「えっと毒をばら撒いた後火の威力が上がるんで~す。どか~ん!みたいな~?」


「それって君、粉塵爆発では?」


「こ、怖いわ……巻き込まれたらシャレにならん」


「大丈夫で~す、粉の範囲は狭いのと広いのが選べま~す」


「よかった。で、薬って?」


「は~い。薬草を使ったり~、木の根っこをつかったり~?そうやって薬を作ってるんで~す」


「かなり優秀なんじゃないか?正直錬金術との違いがよくわからんけど?」


「そうじゃのう、錬金術と違い回復アイテムにボーナスが付くんという説明だったんじゃが薬剤師で作ってもそんなに変わらないという話じゃったのぅ。ただのバグだと思っておるよ」


「あ~それはですね~。薬剤師のスキルをつかって~薬草の種類と根っこの種類をうまく組み合わせないといけないの~」


「それは新知識か。ちょっと手間かも知れないが、便利だな」


「今、効力は~5割増し~スキルレベルが上がったら回復量もあがってるんですよ~」


「すごっ!?」


 つまり、他の回復薬を4回使っている間に6回分の効力があるという事である。


「魔法も使えるし、一石二鳥だな!」


「採用ですね」



 最後は2人になった。





名 前 トヨ

性別 男

レベル 36

類 植物

種族 リンゴ

個体名 セイヨウリンゴ


詳細:農業をやっている、美少年。幼い顔ときれいな金髪は少女を思わせる。罠を作るスキルがあり、罠などを売っていたが、需要なしとみなされ買われなかった。



名 前 ランス

性別 男

レベル 45

類 哺乳類

種族 馬

個体名 マスタング


詳細:騎士道を貫く男。貫きすぎて前のギルドを首になった。そもそも前のギルドマスターに信頼を置いていなかったためあっさりと抜けた。頑固。剣、槍を使いこなす。



名 前 ヘブン

性別 男

レベル 25

類 鳥類

種族 鶏

個体名 名古屋コーチン


詳細:死にすぎて金も空腹度も経験値もなくした文無し、財産なしの男。戦闘のスキルをまともに取っておらず、戦闘が異様に苦手。料理人としての腕は一流。



名 前 ジャスティス

性別 男

レベル 44

類 昆虫

種族 バッタ

個体名 トノサマバッタ


詳細:自称正義の味方。子供のころからヒーローにあこがれてる。馬鹿。あくどい事はあんまり好きじゃない。武器はグローブとブーツ。ブーツは蹴り強化。内容はナックルと同様でリーチが短い。必殺技はジャスティスパンチとジャスティスキック(ただの連打ととび蹴り)



名 前 クロス・クロス

性別 女

レベル 40

類 魚類

種族 トビウオ

個体名 アヤトビウオ


詳細:ボクっこのボウガン使い。嬉々に誘われて面接に登場。それまではボスに挑まず、いろんな土地で戦闘してレベル上げをしていた。妙に運がいい。



名 前 ミクロン

性別 女

レベル 39

類 両生類

種族 カエル

個体名 ガマガエル


詳細:のんびりした性格のソロプレイヤー。リアルではのんびりし過ぎて馬鹿にされていた。薬剤師兼魔法使い。


おまけ

ジャス「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!悪を倒せと俺を呼ぶ!聞け!悪人ども!俺は正義の戦士!ジャスティス!」

冬「やめろ!石ノ〇プロの人に怒られるわ!」

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