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25話 中央と状況

中央と状況



 中央街は人でごった返していた。理由は様々。ここにはアトラクションの類がそろっているとか、生産の流通の関係があったりとか、初心者向けイベントがあったりだとか、俺たちのようにくじ引きや、防具や武器の引き換えができたりするのだ。


 やはりというか当然というか、くじ引き屋にたどり着くまでにいろいろ声をかけられる。防具や武器の客引き、パーティの誘い、ナンパ。最後に関してはもちろん連れの方にだが、そういうのは俺のレベルを白雪に見えないように見せて拳を鳴らせば一目散に逃げていく。小物が、二度と声をかけてくるな。


 防具や武器に関しては今つけている物以上のものは見当たらなかった。ましてや武器は今からくじ引きに行くのに買うわけにはいかない。


 それと中央には土地を買うところもある。先生に電話したら金額を確認してこいとの事だった。


 白雪には現在の情報を収集するように命が下っている。先生に言わせれば俺にはそんな細かいことはできないとの話だった。


 うん、先生がギルドを仕切ればいいと思う。



「あれがくじ引き屋だ」


 がらポンと呼ばれる機械の前に再びやってきた。あれから数日、かなりの人数がここに集まっていた。どうやらほかのクエストでもくじ引き券が貰えるようだ。


「さぁ、くじ引きはいかがかな!?」


 そしてあの女だ。さすがNPC。以前と変わらず、某カメラ屋のような格好で出迎えてくれる。


「すいません、武器のくじ引き1回」


「あいよ!武器のくじだね!?どうぞ!」


 目の前に出てきたレバーを握りこれでもかと回す。これで逆回転だったら恥ずかしいな、とか一瞬よぎる。


 コロンという音が聞こえてほっとした。でてきたのは銀色の玉。


「はい4等の星光のケインよ」


 ケインってなんだ?受けっとってみるとどうやら杖の類のようだ。


「あいつはずれ引いた」


「うわっ俺なら泣くぞ」


「折角4等だったのにあれかよ。ホントにこのゲームあげて落とすの上手いよな」


「あれ、えぐいよな」


 なんでそんなこと言うの?ひそひそ言うなって!傷つく!ケインへの理解がないのと、このひそひそ感がつらくて泣きそうだ。


「私の番ですね!」


 白雪はゆっくりとレバーを回す。カランと乾いた音がした。


「はい、5等の亀甲剣です!」


 亀の甲羅でできた盾と剣のセットだ。防御力はありそうだな。


「ああ!なんでだ!」


 後ろに並んでいた青年が崩れ落ちた。


「え?」


「おれ、それ狙ってた……」


 まぁ、確率的に連続で同じものが出るとは言い難いな。


「うへっ……案の定はずれか……」


 彼が手にしているのはナックルに剣の付いたバグナウだった。


 カッコいい……。このケインと交換してくれないだろうか。


「君、このケインと交換してくれないか?」


「え、ケイン?って、それ、星光じゃないですか。はずれ武器ですよ」


「なんで?名前カッコいいじゃん」


「ケインって魔法に使う武器ですよね」


「そうです。で○光っていうのは光の魔法を指しています。で星○は専用というのを表しています。つまり、光魔法専用ってことです。回復魔法なら光を少しだけやって、別の魔法を使えば別の種類でもちゃんと回復魔法を覚えられるし、回復しかしない魔法使いなんてほとんど需要ないんですよね。どうせならバフやデバフ使える方がいいし」


 魔法も覚えているスキルによって覚えられる魔法が変わるようだ。


「なんだそんな事か。白雪、これあげるからそっちの亀甲剣ちょうだい」


「え?良いんですか!?」


 この星光のケイン。かなり白雪との相性がいい。白雪も気づいていたのか手に取った瞬間にやにやしている。それを青年は不思議そうに眺めている。


「で、この亀甲剣となら交換してくれる?」


 男はちぎれんばかりに首を縦に振っている。


「了解。交渉成立!!」


「ありがとうございます。これでさらに防御力があげれます!」


「何?君、防御力あげるのが好きなの?」


「ええ、一緒にやってる人が遠距離の攻撃特化なんで俺が最前線で敵の攻撃を防がなきゃいけないんです」


「あ、もしかして、彼女さんですか?」


 白雪の問いに男は顔を赤らめ頷いた。前の俺ならここで爆ぜろとか言っていたが、今は違う。


「そうか!その気持ち、よくわかるぞ!頑張れ!」


 思わず肩をつかんで応援してしまった。


「君、名前は?」


「桜花です。種族は亀です」


「俺は冬、種族はオオカミ。個体名はハイイロオオカミだ」


「え!?」


 ふふん、驚いただろ?


「もう、レベル20超えてるんですよ。すごいですよね」


「え、ああ、はい、そうですね……」


「?あ、もしかして彼女の方もレベル20超えてるとか?」


「え、ああ、そうなんですよ。まさか何人もいると思ってなくて」


 そういう驚きだったのか。ちぇっ……。


「私は17だからみんなすごいですね。桜花くん、貴方のレベルはどれぐらいですか?」


「俺は19です」


「へー!すごいですね!」


「そんなことないですよ。今戦闘職の平均が17ぐらいなんでそこまで高い訳じゃないですよ。いろんなパーティに参加してるんですけどレベルの高い人の大半が遠近どっち付かずなプレイヤーが多いですね」


「なるほど、まぁ仕方がないですね。レベルだけにこだわればそうなりますよ」


 もちろんそれが悪い訳ではない。ステータスは安定するし、臨機応変に戦うことができる。ただそれは、無駄があるとも言える。例えば、魔法で攻撃したとする。バランス型が2回の魔法で倒せたが、極振りなら一回の魔法で倒せたとする。それはMPの消費が少なく済んだというのとともに、余計な被ダメージ、余計な時間を使わずに済んだという事だ。これは効率を優先するうえでは実に大きな意味を持っている。


「生産職だとレベルは30近い人もいるんですけどね」


 いろんなことを試す生産職に関してはかなりレベルが上がりやすい。しかし、基本的にDEXかINTぐらいしか上がらない上に戦闘系スキルをほとんど覚えていないのでさほど戦闘に有効ではないとされている。


「因みに、冬さんはレベルどれぐらいなんですか?」


「ああ、今は……25だな」


「……生産職ですか?」


「……いえ、戦闘職です」


「遠近両方?」


「いえ、接近戦のみです」


「ぶ、武器を毎回変えて……」


「ないです。ただ只管にいろんなモンスターと戦ってます」



「……間違いなくトッププレイヤーですね。俺たちはいろんなパーティに参加していますけど、今の段階で何か一つでレベルを20以上にする人なんて数えるほどしかいないと思います。ましてや25なんて片手で足りると思います」


「何人かいるのか?」


「ええ。有名どころで西の砂漠で活躍するアトスとか東の大河で活躍するスペード。ソロプレイヤーなら平原で一度会ったシュラーツがダントツでしょうね」


 どれも聞いたことがないな。でも地名は前に先生が言ってたような気がするな。


「因みに、ボスは倒せましたか?なんか森のボスが強くなってて」


「ああ、そうですね。βから比べると随分難易度が上がっていますよね。砂漠の大怪鳥にはずいぶん苦労しましたよ。高レベルプレイヤーが集まって必死に攻略しました」


「そうか。北の森のボスはあんまりだったぞ」


「そうなんですか!?」


「ああ、もう瞬殺できるようになった」


 4人もいれば当然だろう。


「さすがトッププレイヤーですね!あそこの攻略は進んでないって話でしたけど、もうクリアされてたんですね!」


「ああ、4日目の夜に二人で」


「え、二人で!?4日目!?夜に!?」


 桜花はもうどこに驚けばいいかわからなくなっているな。


「え、いや、すごいっていうか、えっと……」


『ぴりりり!ぴりりり!』


「あ、コールです。これ、出ないと怒られるんで出ていいですか?」


「あ、うん、どうぞ」


「はい、もしもし、ごめんなさい。うん。終わってる。ちょっと知り合った人がいて、え?近くまで来てるの?ちょっとそれはまずいと思う……え?浮気?違う、違う!それはない!……いや、それとこれとは……え?もう、見えてる?ちょっ!」


 どうやら一方的に切れたようだ。


「桜花!」


 女性の声が桜花を呼ぶ。あれ?どうしてだろう、聞き覚えのある声なんだけど。


「春……」


「え?」


 桜花の顔が「なんで来ちゃうかな」と語っていた。


「お、おにいちゃん!?」


 妹でした。


おまけ

白雪「リボ〇ケイン!」

冬「うん、近いけどな」

白雪「リボ〇クラッシュ!!」

冬「やめて!死んじゃうから!」

白雪「だって次の回、出番少ないし」

作者「ごめん」

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