20話 完遂と興奮
完遂と興奮
そんなこんなで一本橋に差し掛かる。
「ん?あれか?」
橋の真ん中で和服のホルスタインが二足歩行で薙刀を振り回している。
「ここを通りたくば、我を倒してみよ!負けた時は武器を置いていけ!」
武蔵坊弁慶か?
「なんか強そうだな」
「だが、動きは遅そうだ!」
先生が何度か切りつける。やはり動きは遅いようだ。しかし、
「固いな」
その異常な防御力とパワーに攻撃力に特化した3人が押されている。
「牛肉風情が調子に乗るな!」
薙刀を爪で弾き、懐に飛び込み喉に噛みつく。鉄の味が口いっぱいに広がる。しかし、深くかみつけていない。
「この、肉美味いな」
「お前、本当に人離れしていくな」
「いや、肉食のせいだって」
そういうスキルなのだから仕方がないだろ?それにこれで
「パワーアップだ」
体力が少し回復し、攻撃力が上がった。しかもAアップとは別にだ。
「行くぞ、牛肉!お前を倒して、飯屋に牛肉を並べてやる!」
「なんか目的ずれてるぞ」
「まぁ、やる気が出たならいいじゃないか」
「よかろう!貴様を倒してそのレア武器をいただこう!」
「かかって、こいや!」
ムサウシ坊弁慶(仮)が薙刀を振りかぶる。どうやらタゲを奪ったようだ。
だが、この牛、本気出してきたのか、さっきより、攻撃速度が上がっている。
当たる!?防ぐか?いや、それでもこいつの攻撃力なら俺の腕を切り落とすだろう。
もうだめ…なのか?
とっさに左腕が前に出る。そういえば、母さんはどうやってオオカミをいなしていた?スキル?受け流し?俺にもできるのか?
あぁ、そうか母さんは杖を回転させ軌道をそらしていたな。こいつの攻撃もそれでそらせるんじゃないのか?
刃に対して平行に左を添える。腕をひねり、コテを滑らせる。その勢いを利用し牛の顔面に力いっぱい拳をたたきつける。
しかし、突き刺さったのは拳ではなく爪だった。
あ、手刀になってた。
「ぎぅわああああああああああああ!」
牛の断末魔が夜の山に響いた。
「ぎゅうにくまつりじゃああああ」
「いや、だから、目的がずれてる」
「どっちかっていうと血祭りになってる」
ムサウシ坊弁慶はアイテムを散らばし、消えていった。
「拾ったら行くぞ」
落ちていたのは武蔵牛の革、武蔵牛の骨、武蔵牛の頭骨、そして牛ひれ肉!ktkr!
この何日かイノシシか蝙蝠かヘビか熊の肉しか食べられなかった……。
今やっと牛肉を手に入れたのだ!
「おい、冬どうした?って泣いてるのか?」
「うれしすぎて……」
「お前、やっぱり変な奴だな」
「ほっといてくれ」
『レベルが22になりました。ステータスが上昇しました』
『スキル『スラッシュ』が『切り裂き』になりました。スキル『かみつき』が『噛み千切る』になりました。スキル『兜割』『刃崩し』『遠吠え』を習得しました。パッシブスキル『血を浴びる者』を習得しました』
『レベル20を超えたので個体名が変わります。ハイイロオオカミになりました』
選択肢はなく強制か。しかし、物騒な技が増えたな。
『ハイイロオオカミのパッシブスキル『威嚇』『夜行性』『危険察知』『肉食』『リーダー』『巨躯』を取得しました』
それにしてもだ。
「先生!俺、レベル22になったよ!ハイイロオオカミになってた!」
うれしすぎる!なんというかこう、わくわくが止まらない!
「私も20になって3次だ」
「俺もだ」
2人がプロフィール画面を開く。
名前 村雨
性別 女
レベル 20
類 爬虫類
種族 蜥蜴
個体名 ブラウンバジリスク
名前 虎鉄
性別 男
レベル 20
類 植物
種族 松
個体名 黒松
「このパーティ最強だろ!わおぉぉぉぉん!」
「落ち着け。お前、血で興奮してるだろ」
血が消えてやっと気が付いた。
「え?あれ?」
ドキドキが大分薄れた。
「君、また変なスキルを習得したな」
血を浴びる者:血を見ると興奮して攻撃、防御が上がり、INTが下がる。
「これか」
「所謂バーサークモードか。面倒だな」
「オフにしておきますか?」
「いや、私たちを巻き込まないようだから別にかまわない」
「はずかいしいのはお前だけだから」
つらい。けどパワーアップは美味しい……。
「つ、次の戦闘までには考えておきます」
「これが夜九草か。きれいだな」
大きな木の下に生えている草の群れはまるで夜空に輝く星々のように煌々としていた。
「星屑の実る草とも言われています。この草を煎じて母に飲ませれば病気が治ります!ありがとうございます!これはお礼です!」
『1万Mを手に入れました。回復薬M×10、回復薬L×5、地図を手に入れました』
『『少女を救え』をクリアしました』
20話なので次回、番外編を投稿します。
番外編は2種類で、別のタイトルで出します。
おまけ
冬「白〇流し!」
虎鉄「ケンイ〇ネタか。だがそう伏せるとドラマの〇線流しみたいだな」
村雨「どっちもアウト!!」




