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13話 大物と深森

大物と深森



先生は強かった。森に入って動物の不意と急所を小刀で一突きして倒していく。


「うむ、夜の方が動きやすいな」


「この辺りのはもう弱いですね」


「中ボスの先に行くか」



 所詮中ボス。もはや敵ではない。


「君は本当に規格外だな」


「そうですか?」


「10回ラッシュって本当に素手でしかできない荒業じゃないか」


「はぁ、でもできちゃったんですよね」


 呆れている先生。


「まぁいい、先に行こう」


 奥に入るとモンスターのレベルが上がっていた。危機察知によって敵の名前とレベルが解ってきた。


「出てくるのはさっきと一緒ですね」


「ふむ。なら倒し方は一緒か」


 ある程度レベルの上がった俺たちにはもはや雑魚でしかなかった。敵の攻撃パターンが増えていて焦ったがそんなに脅威は感じなかった。



 開けた場所に出てきた。白い光を放つ菱型と青い光を放つ円形状の機械を発見した。


「ん?回復ポイントとゲート?」


「ボスのようだな。どうする?」


「もちろん挑みますよ」


「いうと思った。だが正直いい金稼ぎだ」


 俺たちはレベル12になっていて経験値もそろそろおいしくなくなってきていた。この辺りで次のダンジョンを見つけておきたい。



「さて、ここのボスはなんだろな」


「オープンβでは人面樹だったはずだ。攻撃は単調で戦いやすかった」


「なるほど。なら正式版では変わっていないことを祈りますか」


 そんな甘い考えで俺たちはゲートに飛び込んだ。



「これが人面樹」


 樹木に顔が三つ。それぞれ表情が違う。それはまるで仏教の守護神のようだった。


「違う。βテストとは違う。顔が一つだった」


「え?」


『そう正解!それは人面樹じゃない』


 この人を挑発するようなしゃべり方、

「ロキか」

 声の主はケタケタと笑う。


『そうロキさ。君の大っ嫌いなロキさ』


「お前がこんなことをやめれば別に嫌わない。人面樹じゃないならなんなんだ?」


『それは阿修羅面樹。強いよ。なんたって僕が改造したんだからね』


「やっぱりか」


『だって簡単にクリアされちゃつまんないじゃないか。まぁせいぜいがんばってよ。君らが今一番進んでるんだからさ』


 舐めやがって。そういう態度が許せないんだ。


「あいつの顔面を反省するまでぶん殴ってやる」


 ナックルを握りしめる。


「そのためには先にこの木を圧し折ってやる」


 阿修羅面樹の正面から突っ込む。


『愚か者め』


 こいつ喋るのか!?


 地面が盛り上がってくる。とっさに横に飛ぶと、根が棘のようにとがる。危険察知がなければやられていたな。


「冬。どうやら遠距離も許されないらしい」


 離れようとした村雨の脇を木の根がかすめたらしい。


「だ、大丈夫か?」


「ああ、彼女の防具のおかげで助かった」


「一気に詰めてみるか」


 最速で阿修羅面樹に近づく。


「だりゃあ!」


 爪で木を削る。


『その程度か』


 呆れたような声が聞こえる。俺の左側から木の枝が飛んでくる。かわせない!


 2メートルは吹っ飛んだ。防具がなければもっと飛んでいただろう。HPは2割ほど削れた。しかし、カウンター体質のおかげでとっさにカウンターで来た。敵のHPも最初の攻撃と合わせて1割削れた。


「冬!大丈夫か!?」


「ああ、だけどこれじゃあこっちがすぐにダメになるな」


「よし、私の奥義、見せてあげよう。奥義、木の葉隠れ」


 先生が消えた。まるで闇にとけるように。


「せ、先生?おっ!?」


 また地面からの攻撃。俺はこの木の根にカウンターをする。


『おのれ!』


 あれ、意外とダメージが大きい?いや、違う。


「先生!」


 阿修羅面樹の背面に先生がナイフを突き立てていた。


「おろかなのはお前の方だったな」


 先生は何度も切り付ける。5回は切り付けたころでようやっと枝による反撃が行われた。しかも先生はそれをうまくかわした。


「どうやら背面が死角になっているらしい」


「先生、今のは?」


「あれはこの防具の特殊スキルで、隠遁というらしい。それっぽい名前を付けてみた」


 先生、意外とおちゃめさん。だが強かった。


「姿を消すことで必ず不意をつける技らしい」


 おかげで阿修羅面樹の体力は6割になっていた。


 しかし問題は死角に入るまでだ。


「死角に入るまでに俺だと見つかっちゃいますね、先生」


 阿修羅面樹は阿修羅を意識して作られているので側面にも顔がある。


 つまり、後ろにもそれなりの視界が存在するということだ。


「しかも、あいつ、根っこを脚みたいにして歩いてる」


「よし、君がデコイだ」


「だろうね。じゃあ、先生、もう一回よろしく」


「ああ……ごめん、無理だった」


「なぜ!?」


「あれ、一回の戦闘で一回だけしか使えないみたいだ」


 そんな馬鹿な!


「じゃあ、どうするんですか?」


「地道に削るか、あの狭い死角をくぐり抜けるかだな」


「じゃあ、後者で」


「なぜ?」


「俺の活動時間が後、1時間切りました」


 地道に削っても1時間で終わる相手ではないと判断。


「なるほど、なら私がデコイをやろう。目一杯死角を造ってやろう」


 そういいながら襲い掛かってくる枝を切る。その切断行為も微々たるものではあるがしっかりダメージが入っていることが分かった。


「じゃあ、先生、全力でお願いします」


「そうだな、ボス相手に手抜きはダメだったな。できれば使うつもりはなかったが……」


 先生はそういってナイフいや、小太刀を懐から出してきた。


「やっぱり先生ならそういう事してると思ってたよ」


「奇襲をするのにタゲを持っていくのは違うだろ?」


 二刀流は攻撃回数が増える分、敵の怒りを買う。つまり、奇襲を得意とする先生にはあまり向いていないそれでも使うのは彼女がソロプレイ中心だからだろう。


 たとえば奇襲に失敗したとする。次は正面切って戦わなくてはいけない。そうなると小太刀では相手に与えるダメージが小さすぎる。そこで二刀流にし、手数で攻撃力を補うのだ。


「さすが先生!後は俺が何とかしてみる」


「頼もしいね。私の生徒は」


 そう言って先生は阿修羅面樹と相対した。


「さぁ、来なさい、授業の時間だ」


 先生、意外と先生キャラ気に入ってるんだね。



 先生は小太刀を振り回し、寄ってきた枝や根を切り付ける。その行為は一切を寄せ付けない。


 敵はさらに攻撃の手を増やす。先生もそれに合わせて攻撃速度を上げる。


「頼むぜ、先生」


 敵の目が一気に先生に向いた。その瞬間一気に駆け出す。


 止まらず全力で駆け抜けた。


 あいつの狭くなった視界を俺の危機察知でとらえるこができた。

 

 かわせる。ほんの人ひとり分あるかどうかの狭さだ。

 

 背後までは回れた。

 

 一気に走り抜ける。寸分の狂いのないように死角の合間を縫い一気に駆け抜けた。


 一瞬、風になれた気がした。


 たどり着いた俺はつぶやいた。


「ラッシュ」


 10発の拳が木の幹にたたきつけられていく。


 その拳は一発、一発が幹を抉っていく。


『ふ、不覚』


 阿修羅はラッシュを食らって、気絶している。残りの体力は3割。


「先生!今だ!」


「わかっている!」


「ぬおぉぉぉぉぉぉぉ!ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ!」


「貫け!回転突き!」


 先生がそういうとギュルギュルという音とともに焦げ臭いにおいが漂い始める。


 先生め、まだ何か隠していたな?


 体力ゲージは見る見るうちに削れていき、


『うわあああああああああああああああああ』


 という叫び声と共に阿修羅面樹は真っ二つになった。


おまけ

村雨「チェンジ!〇リルアーム!」

冬「それ現代っ子にはわからないです!!」

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