10話 魔女と猛禽
魔女と猛禽
「あ、冬じゃない」
「あ、母さん」
服装が随分と違ったのでわからなかったがしゃべり方と声で分かった。なんか魔女っぽい格好になってる。
「ここでは母さんじゃくて秋さんと呼びなさい」
杖を突きつけられる。
「ご、ごめん」
「よろしい。で、冬の今のレベルは?」
俺はどうやら史上最悪の生物とフィールドに出る前に遭遇してしまったようだ。
「えっと今、7」
「あら、じゃあ2次職になったのね」
「まぁ、一応」
「私も今日なったのよ」
「そうなんだ。何になったの?」
「猛禽類よ」
「怖いな」
ステータス画面を見せられた。
名前 秋
性別 女
レベル 6
類 鳥類
種族 猛禽類
個体名 なし
「なんか魔法ばっかり使ってたらなっちゃったのよ」
「因みにどんな魔法?」
「炎と水それから木と雷の魔法よ。料理に向いているらしいのよね」
「それほぼ全属性だろ」
「最初に引き換えてもらった武器のおかげで炎で使えるようになって、平原で倒したちょっと大きめのスライムが水の魔法の本を落としたのよね」
「残りのは?」
「初心者スクールってところで魔法を教わったら習得できたの」
それ超低確率なんですけど。それを二つって。ないわー。
「じゃあ、俺はこれで……」
こんなラッキーな人と一緒にいると俺の幸運まで持っていかれる。
「あら、どこに行くの?」
「えっと、フィールドに行こうと思って」
「これから夜じゃない」
「えっと、俺、パッシブスキル夜行性を持ってるからそっちの方がいいんだよね」
「あら、じゃあ私も行こうかしら」
「え、なんで?」
「あの森に出る蝙蝠の素材がほしいのよね。ただ、詠唱前に蝙蝠に近づかれたらうっとおしいから誰かと行った方が得だし、ね」
なるほどつまり、
「楽がしたいと」
母が笑顔でうなずいた。
「わかった、手伝うよ」
これ以上駄々をこねても無駄だと分かっている。
そして夜の森は火の海と化した。
「フレイ!フレイ、フレイ!」
蝙蝠が地面に落ちる前に焼き尽くされていく。
「あらあら、あんまり強くないのね」
いえ、秋さんが強すぎるんです。
「あら、あなたのお目当て酷狼が出てきましたよ」
戦闘方法としては俺がおとり、母さんもとい秋さんが火をくべる、いや、魔法を放つ。それで倒れなかったら、俺がとどめを刺す。いやいや、怖いです。何がって?母さんがです。
「フレイ!」
「ラッシュ!」
ええ、もちろん俺のアイテムは集まりました。今やっと母もアイテムを集めました。
「え?あなた中ボス倒したの?私も倒すわ。手伝いなさい」
勘弁してください。
おまけ
春「見たまえ、モンスターがゴミのようだ!」
冬「それ、悪役のセリフだから」