表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/49

第41話 迷子の迷子の小狸


久しぶりの更新ですね。

間をあけてしまってすみませんでした。


活動報告でも述べましたが、話を一から作り直した第41話です。


今回はtokkiーさんが投稿して下さったオリジナル妖怪を登場させました。これからはマスコット的な存在として頑張ってくれる予定です。


では、始まります!

 

 

 

「ふわぁ……眠っ」


日付も変わった午前零時。

山奥にある月ノ宮屋敷周辺は月明かりが僅かに闇夜を照らすのみ、ほとんどが暗闇に覆われている時刻。


晴香や相也達もすっかり寝静まった屋敷内で、縁側の廊下を駿が欠伸混じりに歩いていた。

灰色のシャツの上に黒いパーカーを羽織り、下はポケットが多い薄茶色のズボンを着ている。


「………ん?」


角を曲がって中庭の前の廊下にやって来た時、前方の縁側に座る二人の男女に気が付いて足を止めた。

一人は紺色の長く艶やかな髪を夜風に靡かせている美少女、もう一人は駿と同じくらいの背丈の青年だ。


(お、あれは俺の最愛なる静じゃないか。ああ、月明かりに照らされる姿はいつにも増して可愛いなぁ、いやぁ本当に可愛い過ぎる……)


美少女の方は彼が溺愛する妹であり、彼女を見て駿はいつも通り兄馬鹿全力な思考を脳内に巡らせる。

自分の妹の可愛さを見つめて、思い浮かべて幸せそうに口元を緩めた。


(んで、隣にいるのは……)


しかし、そんな幸せな気分の彼も彼女の隣にいる人物を見た途端、すぐに顔をしかめてしまう。

隣に座っていたのは彼の従兄弟である怜夜であった。

闇夜に浮かぶ丸い月を見上げる静に倣うかのように怜夜も夜空を見上げている。


「今日は満月ですね……

綺麗な月」


「ええ、まさしく。

今生においても色あせない美の一つと言えましょう」


今夜は満月。

両手を併せて美しく丸い黄金の光に目を向ける静に彼はやたら格好をつけた声色でそう宣い、更にスッと視線を隣に向けた。


「しかし、今宵は満月の美しさよりも遥かに光輝いているものがあります……お分かりになりますか?」


「?」


小首を傾げる彼女の両手をとると、怜夜はその両手を包みこむように優しく握ってグッと身を寄せる。


「それは勿論、貴女のこ……」


しかし、彼のセリフが最後まで続く事は無かった。何故なら、いきなり後ろから蹴り飛ばされたからである。


「あばばばば!?」


「れ、怜夜さん!?」


怜夜は中庭の池に突っ込んでバシャバシャと手足をバタつかせる。驚いて口元に手を当てる静の隣に、怜夜を吹っ飛ばした人物が頭を掻きながら歩いてきた。


「何をしてんだテメーはっ」


「兄さん……」


言うまでもなく、それは駿であった。彼はイライラとしたような表情で荒波を立てる池を見下ろすと語気を強めてそう言った。


「怜夜さんに何て事を……」


静は困惑したような顔からたしなめるような表情へ、立ち上がって彼の方に振り返る。

その言葉には構わず、駿はちょうど立ち上がった彼女の手を取って自分の元にグッと引き寄せる。

結果、静を腕にそっと抱き寄せるような形になった。


「に、兄さん!?」


いきなりの大胆な行動に彼女は頬を赤らめて声をあげてしまう。しかし駿の視線は未だに波打つ池に向けられたまま。


「俺の静を勝手に口説くな、この」


(お、俺の……)


抱き寄せられた上にそんな言葉を聞いた静はますます顔を赤くしてもじもじと俯いてしまう。

確かにかなり大胆な発言ではあるが、宣った当人はというと無自覚のようで。


「き、貴様ぁぁぁ!!

不意討ちとは卑劣な真似をぉ!!」


怜夜は声高に叫びながら頭にいっぱい水を被った状態で池から飛び出してくる。続けてすぐに目の前の光景に目を見開いた。


「なぁぁ!?

ききき、貴様!!静さんに何をしている!!離れろ、今すぐ彼女から離れろ貴様っ!!」


彼の目に飛び込んできたのは駿に抱き寄せられて恥ずかしそうに俯いている静の姿だ。怜夜は両手を大きく何度も動かして離れろと叫ぶ。


「………嫌だ」


ムッとしたようにそう言ってプイッと顔を背けると、駿は彼女を抱き寄せていた右腕をそのまま身体の前に持ってくる。それに伴い静は密着したまま駿のすぐ目の前に。


「……」


「ふ、ふぇ!?」


そして、言うが早いか駿は両腕で目の前の彼女をそっと包み込んだ。優しく、だが離さないようにしっかりと抱きしめたのだ。


普段から口では数えきれないくらいのシスコン発言をするが、実際にこうやって大胆な行動を躊躇い無く人前でするのは中々珍しい。


優しく抱きしめられた静はふるふると真っ赤な顔を振って慌てたように視線をおろおろと彷徨わせる。


(に、兄さん……今日は何だか強引で……)


だが、行動の大胆さに彼女は頬を更に赤くすると、先程からキュッと不思議な痛みがする胸を両手でそっと押さえた。痛みと共にドキドキと彼女の胸はうるさいくらいに高鳴り始める。


「静………」


「あっ……」


駿は彼女の耳元で優しく名前を呼ぶと同時に彼女の身体を包んでいる両手に少し力を入れる。そんな彼の行動に静は思わず甘い声色をあげてしまう。


(お兄ちゃん……)


抱きしめている駿の柔らかい温もりを感じて、静はそっと目を閉じると彼の胸に身体を預けた。


「ななななな!?

き、ききき貴様ぁ!!兄である事を良いことに嫌がる静さんに何て羨ま、ではない!!何て事を、すぐに離れろ!!」


「……怜夜、うるさいぞ。

今兄妹で感動の抱擁をしてんだからどっか行ってろ」


駿と静の周りを包むのはふわふわとした雰囲気。

辛抱堪らず両手を振りかざして叫ぶ怜夜だが、向こうに行ってろと駿にジト目を向けられる。

因みにだが、静は嫌がってなどいない。どころか赤らんだ表情はかなり嬉しそうだったりするのだが抱きしめられているので本人以外には分からない。

ついでに言えば彼女とは対照的に駿は全く恥ずかしがってなどおらず、この状態が当たり前だとでも言うかのように落ち着いた態度だ。

「き、貴様ぁ!!

今すぐ俺と勝負しろぉ!!

静さんをかけて、俺と決闘だっ!!」


「……はぁ」


遂にはビシッと指を突き付けて激昂する怜夜に、駿はやれやれとため息をつきつつ静を包んでいた腕をそっとほどいた。

静は愛しくも名残惜しそうな表情になってしまうが、すぐにそれに気付いて赤らんだ頬に両手を当てる。


「真剣勝負だっ、男と男のな!!」


(相変わらず馬鹿真っ直ぐな奴………)


拳を構えて睨みをきかせる怜夜の前まで縁側から降りていく駿。彼は頭を掻きながらひどく面倒臭そうに対峙する。


「俺が勝ったら静さんを貰い受ける!!嫌とは言わせん!!」


「一人で勝手に決めるな。そもそもどこの馬の骨とも分からん奴には静は渡さん。出直して来い」


「父親か貴様はっ!!」


随分と勝手な条件を提示する怜夜の言葉を駿はグッと拳を握りしめてバッサリと切り捨てる。

だんだんと駿の口調が娘を渡さないと拒む父親のようになっているのは気のせいか。


「え、あの……お二人とも?」


暫く赤くなって俯いていた静だったが、はっと我に返えると中庭で睨み合っている駿と怜夜を見て驚け。喧嘩にでもなったら大変だと止めようとするのだが。


「あらあら、二人の男性が愛する一人の女性をめぐって拳を交えるのですね〜」


「白雪さん……」


ちょうどその時、彼女の後ろから白い着流し姿の白雪がさも可笑しそうに微笑みながら歩いてきた。


「それで、勝った方が静様を伴侶に出来ると……」


「え、えっと……」


白雪は頬に指を当てて夜空を見上げてそう呟く。何か間違っているような気がするが彼女は構わず今度は静の方に視線を移動させた。


「ですが、静様にも殿方を選ぶ権利がありますわね。私の予想では、静様が本当にお嫁にいきたいのは駿様……」


「な、ななな何を言ってるんですか!!」


「あらあら、可愛い反応ですこと」


大慌てで真っ赤になる静を見て白雪はクスクスと口元に手を当ててみせた。

そんな微笑ましい様子の縁側とは対照的に、中庭では怜夜と駿が尚も向かい合っている。


「貴様に見せてやろう、俺の会得した月ノ宮流奥義の数々を」


「いや、そういうマジなバトル要素と無いからさ。別の小説でやれよ」


グッと拳を突き上げ何処かの漫画のような熱いセリフを宣う怜夜を見て駿は鬱陶しそうな表情ながらも拳を構えてみせる。

さて、今にも二人が対決を始めようかというまさにその時だった。


「ふ、ふわわわ……」


「「?」」


二人の間に何か小動物のようなものがヨロヨロと地面を歩きながら割って入ってきたのだ。

突然の外部からの介入に二人は目を点になる。


「こいつは……」


「狸、か?」


丸っこい小さな耳にフサフサとした尻尾。くりくりとした瞳にピクピクと動く小鼻。

ぷっくりと膨れた真ん丸のお腹からぴょこんと飛び出た小さな手足。極め付けは頭の上に乗せている緑色の葉っぱだ。


怜夜の言う通り全体からは狸のような生き物だが、現実に狸とはかなりかけ離れている。

強いて言うならばぬいぐるみの狸のような可愛らしい出で立ちだ。


「きゅう………」


ちょうど肩に乗るくらいのサイズのそれはよちよちと歩いていたが、駿の足元辺りで立ち止まる。


「………きゅう」


「は?」


そして真ん丸な瞳で上空に広がる闇に目を向けたかと思うと、そう鳴いてパタリと地面に倒れてしまったのだった。




 




 

第41話 迷子の迷子の子狸

 




 




「まぁ、それじゃああの子は突然やって来たのね」


「はい」


屋敷のとある一室。

テーブルを挟んで優良と静達が向かい合って座っていた。

優良達の視線の先、部屋の入口付近には小さなちゃぶ台が置いてありその上には料理の乗ったお皿が一つ。その料理をガツガツと食べる小さな狸の姿があった。


「それにしてもよく食べてるな。よっぽどお腹がへっていたのか……」


「つーか狸が人間の料理食べて大丈夫なのか?つーか狸なのかアレ」


大きなお皿に乗った料理を休むこと無く食べ続ける小狸を見て怜夜は感心したように呟くが、隣の駿は訝しげな表情で謎の狸を見つめる。


「うーん……何つーか、絵本とかに出て来そうなタヌキだな」


「取り敢えず、普通の動物では無さそうですわね」


テーブルの横で座っていた一騎と綾姫も興味深そうにガツガツと料理を食べる小狸を眺めてそう呟いた。


「なぁ、白雪さん。あの狸ってやっぱり……」


「ご察しがよろしいですわね。簡単に言えば、あれは妖怪ですわ」


部屋にいる皆の意見をまとめて尋ねる駿に、白雪はテーブルに乗った湯呑みを一口啜ってそう答えてみせた。

あの小狸はやはり普通の動物では無く、妖怪なのだという。同じ妖怪である白雪には分かってしまうようだ。


「やっぱり、そうだったのですわね」


「しかし、妖怪にしては随分と可愛い形容だなぁオイ。まるでぬいぐるみだぞ」


「ですの」


腕を組みながら考えるように眉を吊り上げる一騎に綾姫もコクコクと頷いて同意してみせた。

妖怪と言えばおどおどろしいイメージや不気味なイメージがあるが、あの小狸はぬいぐるみのように愛らしい。凡そ妖怪という言葉とは結び付かない程に。


「か、可愛いって言うなー!!」


「きゃ!?」

「のわっ!?」


と思ったら、今まで料理をがっついていた小狸はぴょこんといきなりテーブルまで駆けて来てそう叫んだのだ。


綾姫は驚いて思わず隣の駿の腕にひしっと抱きつき、一騎は半畳分も後ろに後退る。


「喋りやがった……」


「で、ですの……」


テーブルの上でふるふると一生懸命手を振る小狸を見て唖然とする一騎と目をパチクリとさせる綾姫。


「仮にも妖怪だと言うからな。そこまで驚く事も無いだろう」


「そ、そうですよね」


務めて冷静な怜夜の言葉に静も小狸の姿を見つめながらおずおずと頷いた。

駿も欠伸混じりに天井を見上げてみせる。


「ま、この屋敷には年齢不詳の雪女もいる事だしな。しかもドSで腹黒くて極悪非道な……」


しかし次の瞬間、駿の顔の前を銀色のナイフが物凄い速度で掠めていった。そのままナイフは壁に突き刺さる。


「あら、ごめんなさい。

手が滑ってナイフが……」


「………」


クスクスと黒く微笑む白雪の言葉に駿は冷や汗をだらだらと流しながら口元をひきつらせた。後数センチズレていたら確実にナイフは駿の頭部に突き刺さっていただろう。というか、彼が天井を見上げていなかったらナイフは……



「まあ、本当に元気な妖怪さんね〜」


一方、優良はというとテーブルに乗った小狸の頭をよしよしと優しく撫でていた。小狸は顔を赤くして嬉しい気持ちを堪えているような表情。


「ほら、こっちにいらっしゃい狸ちゃん。お膝の上に、ね?」


「う、うん……」


優良はそんな小狸をそっと抱き寄せると自身の膝の上に乗せてあげた。小狸は素直に頷いてちょこんとそこに丸くなる。

全くマイペースな女性である。「ところで、貴方のお名前は何ですか?」


「教えていただけませんこと?」


優良の膝の上でようやく落ち着いた小狸にそっと声をかける静と綾姫。二人を見て小狸の警戒心も緩んだのか、ぴょこんと起き上がって静と綾姫の交互に目を向けた。


「僕の名前は太濡丼(たぬどん)。狸妖怪の子供なの。他の凄い妖怪さん達みたいに一人前になる為に日夜修行してるんだ!」


小狸の妖怪、太濡丼は真ん丸のお腹をポンと叩いてみせると自信満々にそう言ってみせた。

ピクピクと動く小さな耳と尻尾が何とも愛らしい。


「はは、食い物みてぇな名前だなぁオイ」


「う、うるさいやい!」


からからと可笑しそうに駿が笑うと太濡丼は顔を真っ赤にしてふるふると必死に両手を振る。くりくりとした目を吊り上げて一生懸命怒っている様子を表現しようとするが、ひょこひょこと上下すると尻尾や耳が可愛らしい事この上ない。


「か、可愛い……!!」


「本当ですわ……」


そのあまりの愛らしさに静は思わず太濡丼を腕に抱いてた。綾姫も頬を赤らめながら太濡丼の頭を優しく撫でる。


「可愛くないもん!」


「「可愛い……!!」」


太濡丼はパタパタと反論するが、その様子を見た二人はますます可愛いと顔を赤らめる。


「畜生の分際で静さんに抱き着くとは良い度胸だ!!ボタン鍋にしてくれるわ!!」


「落ち着けってバカ」


怜夜は激昂すると勢い良く立ち上がろうとするが、寸での所で駿に引き止められる。


「ボタン鍋ですか、材料は揃ってますわ」


「白雪さんも乗らなくていいから!」


ついでに悪ノリをする白雪を宥める駿。


「か、可愛くないもん!

僕は妖怪だぞ!怖い怖い妖怪なんだよ!」


「妖怪ってもなぁ……」


太濡丼はするりと静の腕から抜けると再びテーブルの上に飛びのって精一杯両手を掲げて脅かそうとする。が、一騎の微妙な表情からも分かる通り全くもって怖くない。どころか怒る姿もかなり可愛い。


「ねぇ、タヌちゃん。

貴方はどうしてこのお屋敷に来たの?」


「え?」


すると、優良がそっと太濡丼を腕に抱いて膝の上に移動させた。そうしてこの月ノ宮家に優しくそう問い掛けた。

何故妖怪である彼がここに来たのか、確かにそれは名前以上に疑問点である。


「僕は人間界でも有名で恐れられている立派な妖怪になるために日夜修行しているんだ。それで今日、僕はお母さん達と一緒に人間界に見学に来たの、いつかは強い妖怪になる為にね!」


(どこの衛星放送動物番組だよそりゃ……)


(そうですわね……)


妖怪とは思えない事情を話す太濡丼に呆れたように囁く一騎。隣の綾姫もコクりと頷くと白金の扇子を広げて口元を隠す。


「でも、山奥を駆けている時にはぐれちゃって……一人で歩いてたらここに」


「つまり、迷子って事か?」


「ま、迷子じゃないよ!

一人で歩いてただけだよ」


駿の言葉に太濡丼は必死に否定するが、瞳は左右に泳いであからさまに動揺している。やはり迷子になっていたようだ。

それもその筈、妖怪が好き好んで人間に無防備な姿を晒すとは思えない。況してやここは月ノ宮家、代々妖怪に関わってきた家系であるであるから尚更だ。


「でしたら、親御さんの元に返してさしあげればよろしいのですね」


「よろしいのですねって……白雪さん、何か宛でもあるんですか?」


「ええ、勿論」


サラッとそう言ってのける白雪に駿ははてと小首を傾げながら尋ねる。彼女は湯呑みを一口啜るとその考えというものを話すべく、駿の方に目を向けて……


「駿様が何とかしてくれますから」


「って、俺っすか!!」


結局丸投げだった。


「そうね、駿なら何とかしてくれるわ」


「兄さん、可哀想です。助けてあげて下さい」


「駿様、お力になって差し上げて下さいな」


続けて優良、静、綾姫も駿に視線を集中させる。彼は何故自分ばかりと突っ込みたくなる衝動を抑えて深々とため息を一つ、ゆっくりと立ち上がった。


「しゃーない、探しに行きますか」


断れる状況では無いのは最早重々承知、頭を掻きながらもう一度ため息をついてそう呟いてみせる。


「ならば勝負だ駿!!

どちらが先に見つけられるかをなっ!!」


「ついてくんのかよ、面倒だな……」


それを見た一騎もすぐに立ち上がってビシッと駿に指を突き付ける。どうやら彼もついてくる気満々らしい。


「ならば俺も行こう。

貴様らだけに(静さんの前で)良い格好はさせん」


「あ、そ……好きにしろ」


今度は怜夜が腕を組みながら立ち上がる。もう反応するのも面倒なのか、駿はテキトーに返事をするとテーブルに乗る太濡丼の尻尾を右手で掴んで持ち上げた。


「ほら行くぞ、タヌ公。

モタモタすんな」


「うわ!?」


いきなり持ち上げられた事に驚いてジタバタと暴れる太濡丼だが、駿はあっさりと肩に乗せてしまう。


「僕の名前は太濡丼だよ!変な呼び方するなー!」


「喧しい」


こうして、駿達は迷子の小狸を親元に帰す為に屋敷を後にするのだった。





 


白雪姐さんの後書き部屋


 


白雪

「あらあらまぁまぁ♪

駿様が嫉妬なさるなんて珍しい事もあるものですね。天変地異の前触れかしら」


駿

「そりゃどういう意味ですかっ。

つーか別に俺は嫉妬なんてしてな……」


白雪

「怜夜さんと仲良く話す静様を見てイライラしてしまったと」


駿

「い、いやいや!!

あれは別に……何と言うか、その……」


怜夜

「フッ、大人気無いぞ駿。

素直に俺と静さんのラブラブな関係を認めたらどうだ?」


駿

「お前は取り敢えず沈んどけカス」


白雪

「さて、では今回は何をお話しましょうか」


怜夜

「次回はバトル展開になりそうだから、この際月ノ宮の人物の戦闘ステータスなんかを簡単に紹介するのはどうでしょうか」


白雪

「あら、それは大変良い時間稼ぎに……大変良い題材ですわね」


駿

「今、さらっと本音が漏れたよ」


白雪

「では、月ノ宮屋敷の皆さんの能力を。

項目は適当にステータスとしてみましたわ」



【月ノ宮静】


術属性:氷


物理攻撃力:D

物理防御力:D

式術力:A

式術耐性:B

敏捷:C

判断:A

胸囲:B〜C………作者はログアウトしました


白雪

「では、まずは静様ですね。流石月ノ宮家でも天賦の才を授かったお方。

式術の才はずば抜けていますわね」


怜夜

「胸囲か……是非今度確認したいものだ」


駿

「お前もログアウトさせるぞ」


白雪

「ただ、物理面がまだ弱いですね。彼女は」



【月ノ宮優良】


術属性:ほぼ全て(特に目立つのは光)


物理攻撃力:C

物理防御力:測定不可

式術力:EX(測定不可)

式術耐性:EX(測定不可)

敏捷:のんびり

判断:EX

胸囲:C♪



白雪

「ご覧頂いた通り、優良様は月ノ宮で最強です。それどころか、全ての退魔関係の枠で考えても最強の部類に入るお方ですわ」


駿

「流石母さん……」


怜夜

「まさしく向かうに敵無しだな。しかし、あの測定不可とはどういう意味だ」


駿

「母さん、本気を出した事が全く無いから……測定出来ないんだよ。本気出す前に殲滅されちゃうからさ、敵が」


怜夜

「それは何処の裏ボスだ!?」


白雪

「若かりし頃は凄まじいかったらしいですわね〜」


怜夜

「うーむ、恐るべし月ノ宮家」



【月ノ宮怜夜】


属性:無


物理攻撃力:A

物理防御力:A

式術力:F

式術耐性:F

敏捷:B

判断:E

静さん!!:EX



白雪

「簡単に言えば力の特攻タイプですね」


怜夜

「むむ、術に対する弱さがネックだな。だがそれを除けばかなり戦力にはなる。無論、全ては静さんを守る為の力だがな」


駿

「はいはい、ご立派ご立派」


怜夜

「物理面が弱い静さんを守る騎士(ナイト)にピッタリではないか!お互いの欠点を補う二人、これぞまさしく夫婦の形!!」


白雪

「次、行きますわ」


駿

「お願いします……」




【五更木一騎】


属性:無


物理攻撃力:B

物理防御力:A+

式術:F

式術耐性:C

敏捷:B

判断:B

対抗意識:A+



白雪

「バランスのとれた近接タイプ、といった感じですわね」


駿

「最後のは迷惑この上ないけどな」


怜夜

「フッ、俺に比べればまだまだだな」


駿

「判断力が高いだけでテメーよか云倍マシだよ」


白雪

「特に防御力に特化」


駿

「毎回毎回綾姫にぶっ飛ばされてるからなぁ……」


怜夜

「なるほど」


白雪

「では、次にいきましょう」



【皇綾姫】


属性:


物理攻撃力:C+

物理防御力:D−

式術:A+

式術耐性:A

敏捷:のんびりですの

判断:B−

胸囲:ダメですわ!!



白雪

「綾姫様もやはり式術の類いに天賦の才をお持ちですね。」


駿

「ま、まだあんまし詳しくは語れねーけどな」


怜夜

「正確に言えば式術とはまた違ってたりもするんだが」


白雪

「そして駿様の幼馴染みにして許嫁、お嫁さん候補でもあるという……」


駿

「そりゃ昔の話でしょ!!」


怜夜

「照れるな照れるな」


白雪

「では、次に参りますわ♪」



【白雪】


属性:雪女


物理的言動:黒+

物理的耐性:黒

精神的攻撃力:黒+

精神的耐性:黒

判断:黒

思考:黒+

感性:黒

良心:黒

駿様への【自主規制】:暗黒



駿

「何のステータスだよ!?」


怜夜

「真っ黒だな……何から何まで」


白雪

「私、雪女ですから」


駿

「聞いた事無いよこんな真っ黒な雪女!!」


白雪

「あら、女性はちょっぴり影がある方が魅力的なんですよ?」


駿

「黒過ぎるんですけど!!

頭の中から言葉の先まで真っ黒なんですけど!!

しかも最後の何だよ!?何自主規制って!?何暗黒って!?どういう意味ですか!?」


怜夜

「全く苦労が絶えん奴だ……」


白雪

「では、今回は月ノ宮家関係者の簡単なステータス紹介は終わりですね」


駿

「……って、え?

あの、俺の紹介は……」


白雪

「あら、駿様ったら何を仰っているんですか。

駿様の紹介なんて見たい読者様がいるとでもお思いで?」


駿

「………」


怜夜

「言葉の刃だな……」


白雪

(駿様のそのご表情、ゾクゾクしますわ♪」


怜夜

「声に出とる……」


白雪

「ではまた次回お会いいたしましょう。

次回もよろしくお願い致しますわ」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ