第37話 月ノ宮屋敷へようこそ 2
えー、すみません。
予定を変更して一日目は次回まで続きます。
テンポがかなり悪くてすみません。
二日目以降は中心の話をしっかり作ってテンポ良くいきたいと思いますので。
今回お風呂に入りますが、お風呂のお約束イベントは次回以降、三日目とかでやると思います。
ペルソナ3のお約束イベントみたいな(笑)
では、今回もよろしくお願いいたします!!
「へぇー、本当に分かれてるのね〜」
「本当に銭湯みたいですね」
屋敷のお風呂は言う通り男湯と女湯に入口が分かれていた。小さな銭湯のように暖簾があり、男湯は青く女湯は赤い暖簾だ。
これは予想以上にゆっくり出来そうだと晴香と悠一は顔を見合せた。
「しずちゃん、お風呂ってやっぱり広いの?」
「そうですね、結構大きな方だと思います」
尋ねると静は少し考えるようにして頷いてみせた。
お風呂がどのくらい広いのかは定かでは無いが、この屋敷のお風呂は一般家庭にあるものより広い事は確かだろう。
「さて、入って疲れをとろうか!
じゃあまた後でな、駿、悠一」
「「…………」」
相也は嬉々とした表情でそう言うと、何の迷いも躊躇いも無く赤い暖簾に一直線歩いていく。
「篠田、辞世の句は読めたか?」
「すみません……いや、マジ冗談です。いやホント。
こっちに来てちょっとテンション上がってて……調子乗ってました……」
が、すぐに紫に肩をギリギリと掴まれて無理矢理振り向かされる。
彼女は表情こそ笑顔だったが目は笑っておらず、肩を掴む手は相当に力が入っていて言葉は文字通り恐ろしかった。
身の危険を感じた相也は速攻で謝罪を、トボトボと駿達の前まで戻ってくる。
「ダメだった……
女の子達とウハウハお風呂計画が……」
「バカだろお前」
取り敢えず駿は容赦の無いツッコミを入れつつ、お風呂に向かう事に。
「んじゃ、さっさと入ろうぜ。
相也と悠一は男湯に入っててくれ。俺はいつも通り静と一緒に女湯に入るな」
「「………」」
かと思いきや、片手を上げてそくさくと赤い暖簾に向かっていく駿。
「兄さん!!」
が、当然顔を赤くした静に止められた。
彼女は彼の服の裾を引っ張って抗議をしてみせる。
「いつも通りって何ですか!そんな事してません!!」
「じゃあ今日は静と一緒に入りたい!いやもう今日から毎日ギュッと抱き締めながらお風呂に……」
「ダメです!
兄さんのばか!!」
相変わらずのシスコン発言だが、静はますます顔を赤らめるとプイと背けてしまった。
確かに今のはよく考えるといつも以上にとんでもない発言である。
「ミヤミヤ……」
「駿……」
「じ、冗談だって!!
アレだよ、相也の行動に乗っかったつーか……」
晴香と紫の白い視線に慌てて顔の前で手を振る。
ほんの冗談だと、だが二人の視線はそれを許さず変わらず冷たい。
相也同様に堂々と女湯を目指したのだから当然である。
「「………」」
「あはは……えーと、それではごゆっくり」
駿は乾いた笑いを浮かべて彼女達の前から悠一達の元にトボトボと戻ってくる。
「お前、バカだろ」
「バカだな」
「馬鹿ですね」
一騎、相也、悠一に容赦の無い言葉を受けつつ、暖簾を潜って中に入っていくのだった。
第37話
「えっと、こちらは俺のクラスの友人達。
今回遊びに来て貰ったんだ」
お風呂から出た一同は比較的広いとある和室で、晴香達と綾姫と呼ばれた女の子がローテーブルを挟んで向かい合っていた。
駿が皆に手を向けて彼女達とはどういう関係なのかを簡単に説明する。
「私は天城晴香。
ミヤミヤとはクラスメートだよ。で、こっちは妹の瑠璃」
「よろしくお願いしまーす!」
「神代紫だ。
私も同じくクラスメートだ。一応剣道部」
「僕は相良悠一です。
生徒会では副会長を務めさせて貰ってます」
「はいはい!!
俺は篠田相也っす!
駿とはもうめっちゃアレ、仲良くしてまーすっ」
そんな駿の言葉に続けて、晴香達は綾姫に向けて自己紹介をする。
最後の相也だけやたらテンションが高く右手を挙げているが。
「あ、皆さんは駿様のクラスの方々でしたのね。
ご挨拶が遅れて申し訳ございませんわ」
綾姫はどこか安堵したようにホッと息をつくと、胸に手を当てて一同に向けて微笑みかけた。
「私は皇綾姫と申します。
私の実家である皇家と月ノ宮家は古くから親交がありまして、小さな頃からのお付き合いがありますの。
駿様に初めてお会いしたのはもう10年程前になりますかしら……」
今度は綾姫が自己紹介。
簡単にだが駿との関係を皆に説明してみせる。
彼女、綾姫は駿達とは幼馴染みだという。彼女の実家と月ノ宮家は古くからの仲らしいのだ。
「皆さん、どうかよろしくお願いいたしますわ」
一通りの挨拶を終えてペコリと頭を下げる彼女に、晴香達もよろしくと言って会釈をする。
すると、いきなり相也が綾姫の前に来て彼女の両手をとった。
「いやー!!
綾姫さんか〜、貴女のような美人にピッタリの素敵な名前だね!」
「え、え?
あ、その、ありがとうございます……」
いきなりの行動に慣れていないのかオロオロとする綾姫だったが、誉められた事に対しては何とかお礼を返す。
「やれやれ、相変わらず馴れ馴れしいですね相也は。もう鬱陶しい程に」
「何を言う!
美少女の前にして嬉しがらない男がどこにいるんだっ!!
つーか駿、こんな美少女が幼馴染みなんて羨まし過ぎんぞコノヤロー!!」
にこやかに辛辣なツッコミをかます悠一に反論しつつ、相也は綾姫から離れて元の席に戻った。
勿論駿が羨ましいという気持ちを正直に述べながら。
「という事は、アヤアヤもこの近くに住んでるの?」
質問とばかりに手を挙げる晴香。
月ノ宮と古くから付き合いがあるというので、綾姫もこの近くに住んでるのかと気になったようなのだが……
「あ、アヤアヤ?ですの?」
((((いきなりあだ名……
しかもアヤアヤって……))))
晴香が自然に口にした謎の単語に綾姫は思わず首を傾げてしまう。
言わずもがな恒例の晴香のあだ名癖であるが、初対面の相手にも関わらず躊躇い無いそのオープンさ、相変わらずのネーミングセンスに駿達は半ば驚き半ば呆れてしまう。
「相変わらずだね〜、お姉ちゃん」
妹である瑠璃は肩を竦めてやや小学生らしからぬ仕草をしてみせる。
「あ、ごめんね。
嫌だったら呼ぶの」
「い、いえ、そんな事はありませんわ。
全然構いませんですのよ」
珍しく相手の顔色を窺うように尋ねる晴香に綾姫は慌てて手を振って否定する。
それどころか、寧ろ彼女は僅かながら嬉しそうだ。
「珍しくとかゆーな!」
両手を振って天井に抗議する晴香は置いておいて、駿は疑問に答えるべく綾姫に手を向けてみせた。
「綾姫は、訳あってうちに住んでるんだ。もうかなり前からな」
「はい。皆様は他人の私にも本当に優しくして下さって、大変お世話になっておりますわ」
『え?』と驚く一同の反応も当然で、何と綾姫はこの屋敷に住んでいるというのだ。しかもかなり昔からだという。
なるほど、幼い頃から同じ家に暮らしていればそれはまごう事無き幼馴染みである。
勿論彼女は月ノ宮の人間では無いので、何かしらの事情があるのは間違い無いだろう。
とはいえ、わざわざその理由を聞くのは憚られるのでここは頷いておく事にした。
「っと、もうこんな時間か」
「本当ですわ、日が沈んできましたの」
縁側の方に目を向けると茜色の空も段々と薄暗くなりつつあった。
時計を見れば時刻は既に午後5時半。
到着したのが夕方前だったので何らおかしい事は無いのだが、時間の経過がいつもより早く駿には感じられた。
「んじゃ、俺はもう一度皆を部屋に案内するよ。
布団とか用意しないと」
「はい、私は優良様の所におりますわね。
晩御飯になったらお呼び致しますの」
まだ部屋には荷物を置いただけでほとんど用意をしていないので、色々と準備をする為に部屋に戻らなくてはならない。
駿の言葉に綾姫もまた自分も準備をすると頷いて、ゆっくりと立ち上がった。
「それじゃ、部屋に戻ろう」
駿は皆に先程の部屋に戻って用意をして欲しいとの旨を伝え、皆と一緒に戻ろうとしたが不意に何かを思い出したように綾姫の側に寄っていく。
「そういやジジイはどうしたんだ?」
「お爺様はゴールデンウィークはお出かけですの。
老人会の皆様と“松尾芭蕉の軌跡を辿る俳句の旅四日間”とかで」
(俳句の旅って………)
お爺様、つまりは祖父に当たる人物の不在を確認した駿は何とも言えない面持ちのまま綾姫と別れ部屋に戻っていった。
「あれ、静?
それに一騎も」
「あ、兄さん」
「よぉ」
男女に分かれている部屋の前まで来ると、静と一騎がちょうど部屋から出てきた所だった。
「姿が見えないと思ったらこんな所にいたのか」
「はい。
一騎さんと一緒に白雪さんのお手伝いをしてたんです。皆さんのお部屋の準備を」
「ま、そういうこった」
お風呂から出た後二人はいつの間にか居なくなっていたが、どうやら部屋の準備をしていたようだ。
「あ、両方の部屋に布団運んでおいたから」
一騎は最初に男子の方を、次に女子の方を見て布団を用意した事を伝えた。
「ありがとー、いっくん!」
「ありがとう!お兄ちゃん」
「うん、助かるよ五更木」
「ああ、いや……べ、別に」
晴香、瑠璃、紫がそれぞれお礼を言うと彼はすぐに照れたように視線を反らしてしまう。照れ癖は相変わらずのようだ。
「お部屋のお掃除と点検は再度済ませておきましたから、好きにお使い頂いて構いませんよ」
「あ、しら……」
「ししし白雪さん!!
ここここんにちは!!」
と、再び部屋の襖が開いて中から白い和服を着た白雪が薄く微笑みながら姿を現した。
駿の声を遮るように相也が肩を震わせながら上ずった声を上げて反応する。
因みに今の挨拶はこんばんはだ。
「晴香さん、紫さん、瑠璃さん、静様はこちらのお部屋で悠一君と相也君、一騎君は反対側ですね。
お布団は一騎君が押し入れの上にに運んでくれました。掛け布団等の就寝具は押し入れの下にありますのでお使い下さい。
お荷物は隅にまとめて移動させて頂きましたので」
「ありがとうございます、白雪さん」
白雪は両側の部屋に手を向けて丁寧に説明をしてくれた。お礼を言う一同に対し、相也だけは『名前で呼ばれた』と一人悶え喜んでいたとか。
「って、あれ?
俺は?」
そういえば今の説明に自分の名前だけ呼ばれていなかったと、不思議に思った駿が尋ねると……
「あら、駿様はまたいつもみたいに私と一緒に寝て下さるんですよね?
だったら私のお部屋で」
「「「え!?」」」
待ってましたとばかりに白雪に爆弾発言を投下された。晴香達は目を丸くして思わず声を洩らしてしまう。
「寝ませんよっ!!
しかもまたって何すか!?
いつも寝てるみたいに言わないで下さい!!
ちょっ、皆違うからな!?
嘘だから嘘!!根も葉も無い」
両手を添えて悪戯っぽい微笑む白雪に駿は両手を振りに振って大慌てで否定をする。勿論一同にも振り返って嘘だと訴えかけるが。
「「へー……」」
晴香と紫はジト目をそんな彼に向けるし、
「それはそれは……」
悠一はさも面白そうに含んだような笑みを浮かべるのみ。
「駿お前っ、一緒になんてそんな何て羨ましい!!」
相也に至ってはもう信じる段階を越えて羨ましがっている始末。
駿の言葉が届いているとは到底思えないこの状況。
「いや、違っ……!!
白雪さんのせいで皆盛大に勘違いしてるじゃないですか、ちゃんと本当の事を言って下さいよ!!」
「まぁ駿様ったら……
私の口からそんな恥ずかしい事を言わせるなんて。
どの夜の情事を申せばよろしいのかしら?
あ、去年の特に駿様が激しかった熱い夜の……」
「アンタ完全に楽しんでるだろっ!!」
顔を赤らめて両頬に手を当てる白雪だが、確かに中々楽しそうである。いや、かなり楽しそうである。
「てんめーーっ!!
白雪さんに何さらしとんじゃあぁぁ!!」
「うるせぇーー!!
オメーは黙ってろ、話が拗れる!!」
相也は叫びながら駿の首根っこを掴むと、駿はそれを引き剥がそうと叫び返す。もう何だか混乱状態
「もう白雪さん……
変な冗談はダメです」
「ま、これはこれで面白くはあるけどなー」
ここでようやく静と一騎が口を開いた。静はやや困ったように、一騎はちょっとだけ面白そうに。
「クスッ、そうですね。
では下らない冗談は程々に、私は晩御飯の支度を、優良様を手伝ってきますね」
(下らないって酷くね……?)
然り気無い一言にちょっとだけ落ち込む駿はさておき、白雪は『ごゆっくり』と一礼をして彼等の前から去っていく。
「良かった、冗談だったのか〜」
「本気にするなよ……」
「仕方ありませんよ、相也の頭ですから」
安堵の息を洩らす相也。
悠一曰く彼の頭故に仕方が無いらしいが。
「晩御飯が出来るまで部屋で待っていましょう。
色々と準備とかもあると思いますから」
「うん。じゃあ準備終わったら皆でガールズトークでもしよっか!」
ともかく、晩御飯までは部屋で待つ事に。
静の言葉に晴香は軽くウィンクを返してみせた。
「はい、俺も俺も!
トークしたい!女の子達とトークトーク!!」
すかさず名乗りを上げる馬鹿が一名。だが残念、彼は男子でガールズトークには参加出来ない。
「はいはい、行きますよ相也」
「オメーはこっちだよ」
彼は悠一と相也に引きずられて泣く泣く男子達の部屋に入って行くのだった。
*
「皆さん、ご飯が出来ましたですのよ」
部屋に男女それぞれ別れてから20分足らず。
すぐに綾姫が晩御飯が出来たと呼びに来てくれたので、準備もそこそこに皆は部屋を出た。
そして彼女の案内で屋敷の廊下を歩いていく
「おお〜!!」
「美味しそ〜!!」
一同は綾姫の案内で屋敷の広い和室にやって来ていた。部屋の真ん中には長い木製のテーブル、その向かいにはテレビがある。
奥は台所のような場所に続いているようで、この広い部屋はこの屋敷の食卓部屋のようだ。
相也と瑠璃の視線の先、長テーブルの上にはズラリと彩り豊かな和食の数々が並んでいて、人数分の座布団が敷かれている。
これが
そしてテーブルの一番端に正座していた優良が彼等にニッコリと微笑みかけてくれた。
「皆、沢山作ったから好きなだけ食べてね♪」
「お好きな席にどうぞ」
優良の隣には白雪も座っており、座布団に手を向けてみせた。
晴香達は軽く頭を下げてそれぞれ思い思いの席に着いていく。
「なぁ、綾姫。
まさかとは思うが、お前は何も作っていないよな?」
「私はお皿を並べただけですが……な、何ですのその言い方は?」
席に着かずに入口付近に立ったままの駿、綾姫、一騎。
ふと、何を思ったのか一騎が綾姫に質問をした。彼女は晩御飯を作るのを手伝っていないかと。
彼女は料理には関わっていないというが、一騎の言い方が気に入らなかったのかムッとしたような視線をぶつけた。
が、一騎はそれに構わず深々と安堵の息をつく。
「そうか、良かった。
本当に良かった」
「ど、どういう意味ですの!?」
「まんまの意味だ。
お前の料理を初めて食べて丸一日ぶっ倒れて以来、トラウマになってんだよ」
「あ、あれは偶々失敗しただけですわ!!
一騎さんは私より少し料理がお上手だからって……」
「いや、少しどころか100倍は上手いぞ」
「な、何ですって!?」
何と綾姫の手料理で一騎は被害にあった事があるという。彼女はあまり料理が得意では無いようだ。
本人はちょっと失敗しただけだと反論しているが一体どんな手料理だというのか、想像の及ぶ所では無い。
一騎の方が料理は遥かに上手いらしいが、綾姫はそれを認めたくは無いようで。
「はいはい、喧嘩してねーで座った座った」
「で、でも駿様……!!」
二人は一触即発の雰囲気になりかけたが、駿は無理矢理間に入っていく。
「綾姫はすぐムキになるなって。
それに一騎、オメーも一々喧嘩ふっかけるような事を言うな(メンドーだから)」
「あぅ……ごめんなさいですの」
「へぇへぇ、悪かったよ」
そして二人ともに注意をすれと、綾姫はシュンと肩を落として、一騎は肩を竦めて謝った。
「大体一日くらいどうって事ねーよ。
俺なんか三日動けなかった事だってあったんだから」
「もうっ、駿様まで!!」
ふるふると抗議するように両手を振る綾姫と共に、駿達も既に団欒が始まっている優良達と晴香達のテーブルに向かっていくのだった。
白雪姉さんの後書き部屋
〜駿の小さな頃のお話2〜
白雪
「前回はかなり長くなってしまいましたから、今回は短めにいきましょう」
駿
「ええ、もう一行で済ませられるくらいにしちゃって下さい。いやいっその事もう止めるとか……」
晴香
「あー、ミヤミヤが逃げてる」
瑠璃
「逃げてるー」
駿
「良いんだよ、人生には逃げないとならねー場面もあるんだ」
白雪
「では、駿様のファーストキスを奪った話はまた今度という事で……」
静・綾姫
「ええーーっ!?」
駿
「だからさらっと嘘を入れないで下さい!!」
相也
「ふ、ファースト!?
初めての体験!?一夜の過ち!?」
悠一
「もうその頭取り換えた方が良いですよ相也」
まぁそんな事は置いといて。白雪姉さん、昔話をお願いします。
白雪
「これは、駿様が六歳の夏のお話ですわ」
綾姫
「六歳の駿様……///
あぅ、今抱き締めたいですわ」
静
(コクコク……///)
白雪
「夏休みのある日。
駿様はお庭にあった花壇に水やりをしておりました。
あ、そうそう。駿様は実は小さな頃はお花を見る事や育てる事が大好きだったんですよ」
晴香
「相変わらず可愛いね、小さなミヤミヤ」
瑠璃
「私もお花大好きだよ♪」
相也
「しかし今からだと想像出来ないな〜」
悠一
「珍しく相也に同感です」
駿
「う……
べ、別に良いだろ。環境に優しい趣味って事で」
白雪
「さて、水やりも終わって駿様は戻ろうとお屋敷の玄関前に向かいしました。
ところが、玄関からお屋敷内に入る事が出来なかったのです。
どうしてだか分かりますか?」
紫
「?」
静
「聞いた事の無いお話です」
綾姫
「忘れ物とかですの?」
白雪
「クスッ、何とお屋敷の扉に蝉が張り付いていました。
そう、六歳の駿様は蝉が怖くて扉に近づく事が出来なかったのです」
紫
「せ、蝉が?」
一騎
「お前、虫が苦手だったのかよ……」
駿
「む、昔の話だよっ」
綾姫
「あ、でも確かに。そんな話を聞いた事がありましてよ?」
静
「そういえば……」
晴香
「も〜♪
ミヤミヤ可愛過ぎだよ!」
瑠璃
「わ、私も蝉は苦手かな……」
白雪
「駿様は頑張って何とか扉に近づこうとしますが、やっぱり怖くてそれが出来ません。急に蝉が動き出したらどうしよう、蝉が家の中に入ってきたらどうしよう」
※あるある……というか実体験です
白雪
「そこで駿様は考えました。離れた距離から何とか蝉を追い払えないか。
まずは茂みになっていた小さな実を取って投げてみます。しかし小さな駿様ではとても届かずに失敗」
晴香
「あ、惜しい」
瑠璃
「頑張って!駿お兄ちゃん!」
駿
(いや、今応援されても……)
白雪
「次に地面の砂を掴んで放ってみる事に。
けれど風が吹いて逆に目に入ってしまいます。涙を溜めて目を擦る駿様……」
紫
「駿、諦めちゃダメだ!」
綾姫
「頑張って下さいまし!」
静
「兄さん!頑張って!」
駿
(いやだから……)
白雪
「と、ここで駿様は庭に干してあった雑巾を発見します。駿様は雑巾を濡らして再度蝉に向けて狙いを定めて投げました。
すると……」
一同
「すると?」
白雪
「何と、ちょうど扉を開けた私の顔に雑巾が直撃してしまいました」
一同
「え……」
駿
「………」
白雪
「その後、駿様は私の部屋に連れていかれて【ピ――――(自主規制)】や【ピ――――(自主規制)】されたり、【ピ――――(自主規制)】あまつさえ【ピ――――(自主規制)】まで受けてしまい虫への恐怖心が少しだけ薄れましたとさ。
めでたしめでたし♪」
一同
「…………」
駿
「アッハッハ……
皮肉な事に、他にトラウマが出来たから苦手意識が別に移ったって事だよ……」
白雪
「では、次回もよろしくお願いしまーす♪」
※因みに、彼女は六歳の駿が奮闘する姿をずっと影で見ていたらしいです