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第36話 月ノ宮屋敷へようこそ 1



前後編に分けました。

前回の半分くらいの量ですが。



ゴールデンウィーク編も一日一日が長いので、かなり話数を使うと思います。


特に二日目以降は同じ一日でも、スポットを当てるキャラクターを変えていくつか話を作っていったり、一つのテーマだけに絞って話を作ったりするので。


のんびり進んでいきますが、どうか気長によろしくお願いいたします。


 


※今回から帰省編終了まで後書きに『白雪姉さんの後書き部屋』を開設致しました。

駿のちょっとした昔話だったり、色々やりたいと思うのでよろしくお願いします。

 

 

「皆ようこそ。

ここが月ノ宮本家、駿と静の実家よ」


月ノ宮本家の広大な敷地内の中心に位置するお屋敷。

その玄関の前にいる晴香達に我が家を紹介する駿達の母親の優良。

優しく微笑んでいる彼女は本当に若々しく、高校生と中学生の子持ちの母親というのが信じられない程。


「あの〜、本当の本当にお母さん?

と見せかけてやっぱり実はお姉さんなんじゃ」


「あら〜♪」


相也が皆の気持ちを代弁するように首を傾げると、優良はそれはそれは嬉しそうに両頬に手を当ててみせる。褒められたと思ったようだが、彼にしてみれば本音である。



「ああ、残念ながら母親だよ。若々しく見えるだけ」


「あ、酷いわ駿。これでも私は若い方なのよ?」


肩を竦めて首を振る駿に優良は少し怒ったように頬を膨らませる。そんなやり取りは尚更母親と息子というより姉弟のようだ。


「とにかく皆、屋敷の中にどうぞ。

駿、静、部屋にご案内してね」


「ああ」

「はい」


母親の言葉に兄妹は揃って頷いた。男女で部屋は分けているので、駿は男性陣の部屋、静は女性陣の部屋に皆を案内していく事に。


「長旅で疲れてると思うから、落ち着いたらお風呂で疲れをとっていって。

ご飯の時間はまた伝えるからね」


「はい。

ありがとうございます」


「これからよろしくお願いします」


そう説明する優良に各々お礼や挨拶をして頭を下げる一同。

優良はそんな皆を見て『来てくれて嬉しいわ』ともう一度ニッコリ微笑んでみせるのだった。




 




 

第36話 彼の実家はお屋敷 前編

 




 




優良を先頭に屋敷に入った一行は、広く旅館のような玄関から続く長い廊下を歩いて部屋に向かっていた。

綺麗に掃除された木製の廊下は少し強めに踏むとキュッキュッと音がする。


「あ、そういえば皆の名前を聞いて無かったわね。

良ければ教えて貰えるかな?」


不意に優良が立ち止まったかと思うと、手をポンと打ってみせて振り返った。

確かに晴香達はまだ友達としてだけで自己紹介はしていない。


「私は天城晴香です。

ミヤミヤ、じゃ無かった駿君とは同じクラスでお世話したりなったりと色々。

こちらは妹の瑠璃です」


「瑠璃です!

よろしくお願いします!」


「晴香ちゃんに瑠璃ちゃん。よろしくね」


まずは晴香と瑠璃が自己紹介をしてみせた。晴香以上に瑠璃は元気いっぱいに右手を挙げてみせたので、優良はクスリと微笑んで返す。


「神代紫と言います。

晴香と同じで彼とはクラスが一緒です」


「紫ちゃんね、よろしく。

何か、武道をやっているのかしら」


「はい、剣道部に……

お分かりになるんですか?」


「うーん、何となくかな?」


ズバリ的中した優良の予想に紫はやや驚いたように尋ね返すが、彼女は勘だと言って頬に手を当ててみせた。


「俺は篠田相也っす。

駿とは同じクラスの友達、いや親友と言っても」


「過言ですよ。

僕は相良悠一と言います。

駿とはクラス、生徒会でも仲良くさせて頂いてます。よろしくお願いします」


「俺は自己紹介の必要無いっすね。

お邪魔します、優良さん」


今度は相也と悠一が挨拶を、相也の自己紹介を遮って丁寧に頭を下げた。

その後に一騎が軽く挨拶してみせる。一騎は中学校から駿と知り合いなので、月ノ宮本家を知っているのは当然なのだ。


「相也君に悠一君ね。

こちらこそ、よろしくね。それに一騎君もいらっしゃい。

皆、いつも二人がお世話になってます。仲良くしてくれてありがとう」


優良もそれに習って会釈すると、子供二人が世話になっていると改めてお礼を言う。その姿はまさしく母親とも言えるべき姿ではないか。


「それで、えーと……

晴香ちゃんと紫ちゃん」


「「?」」


が、彼女は直ぐに頬に手を当てると暫し考えるように天井を見上げて……


「二人の内、どちらが駿のお嫁さん候補なのかしら?」


突然悪戯っぽく口元を緩めてそんな事を言い出したのだ。

駿はその場で思わず吹き出してしまい、静はビクッと肩を震わせる。晴香と紫はきょとんとした表情。


「お、お母さん!!

いきなり何を言い出すんですか!」


「あら、だってこんな可愛い娘が二人も来てくれるですもの。もしかしたら駿と付き合ってますって報告も」


「変な方向に話を持っていかないで下さい!!」


必要以上に迫る静を見て、優良はクスクスと可笑しそうに口元に手を添えた。


「ふふ、どうして静はそんなにムキになるのかしらね〜?」


「そ、そんな事ありません……!!」


「あらあら、もう赤くなっちゃって。

本当に分かりやすいわね〜」


優良の表情を見ればからかわれている事は一目瞭然。静は赤らんだ顔のまま母親に抗議の視線を送る。


「案内は私達がしますから、お母さんは」


「はいはい。

じゃあ皆、ゆっくりしていってね♪」


優良は再度、晴香達に笑顔を向けるとどこか楽しそうな様子でその場から去っていってしまった。


「ミヤミヤのお母さんって、不思議な人だね」


「うん、若々しいというか童心を忘れていないというか」


見送る晴香に紫も同意するかのようにおずおずと口を開く。


「全くだ。

精神年齢が幼い上に、掴み所の無い人だよ」


あまつさえ本人の息子まで呆れたように言う始末だ。

しかし、それがどこか憎めない性格であるという事はその表情から容易に見てとれるものであった。




さて、駿は男性三人を連れて奥にある広い畳み部屋までやって来た。広さにして約20畳もの和室、掛け軸と壷が飾ってあるだけの簡素だが故に風情を感じる部屋だ。


「ここで俺達四人が雑魚寝するんだな。俺も帰省中はここに寝泊まりするから」


駿は部屋を見渡しながら説明する。今回は彼も自分の部屋では無く、ここで皆と一緒に寝泊まりするようだ。尤も、駿の部屋は汐咲市の一軒家に移してしまっているのでこの家にある彼の部屋は空っぽに等しいのだが。


「隣にあった部屋は?」


「女性陣の部屋だよ。

一応廊下を挟んで隣り合わせになってるから」


彼等から見て今入ってきた襖の隣、後ろにある部屋は静が案内している女性陣の寝泊まりする部屋だ。この部屋と同じ広さになっている姉妹部屋だ。


「広い庭ですね。

部屋によく合ってます……」


「ああ、自由に出て構わないから」


前方の障子を開けると、屋敷さながらの広い庭が目に飛び込んでくる。

周りの木々と自然芝に小さな池が一つ、後はただただ広がる広い庭。殺風景といえば殺風景だが、簡素な部屋によく合っている。



「あ、広い庭だ。

天気が良いと皆で遊べそうだね」


「缶けりしよー!」


隣の部屋から来たのだろう、晴香や瑠璃達女子メンバーもいつの間にか庭を眺めていた。

晴香の言葉に瑠璃はニコニコと嬉しそうにはしゃぐ。


「む、ここならば心置き無く素振りが出来たな……

竹刀を持ってくれば良かった」


「相変わらず部活熱心ですね、紫さんは」

対照的に、少し残念そうな紫に相也は苦笑混じりに肩を竦めてみせた。

こんな時でも部活の事が頭を過る彼女は中々どうして、難儀な性格である。


「あ、そうだ。

風呂は男湯と女湯に分かれてるから、好きな時に入って大丈夫だぞ」


「「ええ!?分かれてるの!?」」


さらっと言う駿だが、相当と晴香は思わず声を揃えて聞き返してしまった。

何と月ノ宮家のお風呂は男女の湯に分かれているというでは無いか、お風呂というより銭湯レベルだ。


「びっくり〜

ホント凄いだね、ミヤミヤの実家って。ね、ゆかりん」


「ん?

あ、ああ。そうだな」


晴香に振られた紫は慌てて頷いてみせたが、そんなに驚いている様子は見受けられなかい。


「ああ……時間交代制だったら間違ったとか言って女子の時間にドッキリとかも出来たのに……」


「ホントに馬鹿ですね、相也は」


また、相也はがっくりと肩を落としていて悠一の容赦無いツッコみを受けている。



「よっしゃあ!!

早速このフィールドで勝負だ駿!!」


「いや意味分かんねーから。今の話の流れで何でそうなんだよ?」


と、何を思ったのか一騎がいきなり叫び出して駿の腕をガシッと掴んだ。

お決まりの勝負癖が何の前触れも無く発動したらしいが、駿にしてみれば面倒な事この上ない。


「馬鹿かお前は!!

漢は風呂の前にはまず決闘だろーがっ!!」


「何処の国の風習!?

馬鹿はテメーだろっ!!」


「ハッ、今日は逃がさねーぜっ」


一騎は駿の言葉も聞かずに掴んだ腕を引いて無理矢理庭まで連れ出そうとする。

純粋な力では一騎には敵う筈も無く、駿は抵抗するもあっという間に外に引っ張っり出されてしまう。


「さぁ!!今回は真っ向から勝負だぜ!!」


「…………」


指をポキポ鳴らして拳を作ると意気揚々と対峙する一騎。一体何がそんなに楽しいのかとジト目を向ける駿だったが。


「ミヤミヤ〜!私達ちょっとしずちゃんとお風呂行ってくるね」


「勝負頑張ってな〜」


屋敷の縁側から手を振る晴香と相也。


先程優良も言っていたが、汐咲市からこの月ノ宮本家のある地域までは相当な距離があり時間がかかる長旅だ。

朝に出たのにもう夕方になりつつある時刻だ。

それだけ疲れもある筈で、故に晩御飯前にお風呂に入ってサッパリと疲れを落とそうという訳だ。


晴香、相当に加え瑠璃と紫、悠一もバスタオル等の道具を持って立っている。

どうやら皆でお風呂に行くらしい。


「あ、ちょっと!

だったら俺も……」


それを見た駿は自分も風呂に入ると縁側に向かって歩き出そうとするが……


「対峙する相手に背を向ける気か駿っ!!勝負は既に始まっているんだぞ!!」


「何の勝負だよっ。勝手にやってろ」


一騎に呼び止められる。

彼の中では既に勝負が開始されているらしいが、駿にしてみれば知った事では無い。

彼は踵を返して晴香達の元に戻っていく。


「上等じゃねーかっ!!

背を向けた事を後悔させてやるぜ!!」


一騎は背を向けた駿目掛けて一気に駆けた。

因みに洒落ではない、念のため。


「貰ったァァァァア!!」


「!?」


そして彼が振り向くと同時に拳を振り上げて、右ストレートを直撃……


「ぐはあっ!?」


させること叶わず、一騎は思い切り後方に吹き飛んでしまった。

ほんの一瞬だったが、二人の間にとてつもなく鋭い風が駆け巡ったのだ。その風に吹き飛ばされたという方が正しい。


「全く貴方という人は……」


そして、いつの間にか駿の前には女性が立っていた。


今時かなり珍しい紅色の唐衣を着ており、白金の装飾のついた扇子を広げている。

青みがかった艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、藍色の瞳と桜色の唇、美しいという言葉がピタリと当てはまるまごう事なき美少女だ。


「駿様に迷惑をかけるなと、何度言えば分かりますの?」


彼女は地面にひっくり返っている一騎にキッと睨みをきかせる。口元が扇子で隠れている分余計に睨みが強いように見える。


「駿様、大丈夫ですか?

また一騎さんが無理矢理吹っ掛けてきたんですのね、お怪我は……」


「ありがとう綾姫。助かったよ」


しかし、彼女はすぐに扇子を閉じて振り返ると心配そうな表情で駿に尋ねてくる。

そんな様子に彼は大丈夫だと軽く頷いてみせた。


すると、安堵したのかはたまた別の理由か綾姫とよばれた彼女はみるみる嬉しそうに表情を綻ばせ向かい合った駿を見つめる。


「駿様……お帰りなさいませ、ですわ」


「ああ、ただいま」


両手を胸の前で併せて優しく微笑む綾姫に彼は頭を掻きながら応えた。


「フッ、やるじゃねーか綾姫……

だが、男同士の真剣勝負に水を差すとは戴けねーな」


「一騎さん……

それ以上ご迷惑をおかけするつもりなら、私が相手をして差し上げますわよ?」


「…………」


ひっくり返っていた一騎に彼女は再び扇子を広げて対峙する。

が、一騎は気を削がれたように深々とため息をついてやれやれと肩を竦めた。


「……止めとく。女を相手にする趣味は無いんでな」


「そ、それはどういう意味ですの!?

女だからと……」


「おい、止めろって二人とも」


一旦は収まりかけたものの、再び唐衣の美少女と一騎がぶつかりそうになったので間に入る駿。


「えーと……ミヤミヤ?」


「駿の友達か?」


ここで、暫く蚊帳の外であった晴香と紫が代表して不思議そうに口を開いた。

皆が言わんとしている事はわざわざ口にしなくとも彼には伝わる。

彼女は一体誰なのか、と。


「み、ミヤミヤ?し、駿!?


駿様!!この方々は一体どちら様ですの!?」


一方、綾姫は晴香が言ったあだ名や紫が呼び捨てにしている事にかなり驚いた様子を見せ、慌てて駿に詰め寄る。


「あ、あ〜……悪い。

えーと……」


駿は縁側の仲間と目の前の着物姿の美少女を交互に見て暫く考えると……


「取り敢えず、風呂入ってからにすっか」


色々と後回しにして、まずはお風呂を優先する事にした。





因みに……


「ふふ……♪」


「優良様?

どうかなされたんですか、先程からとても楽しそうですね」


月ノ宮屋敷のとある和室では優良と白雪がちゃぶ台を挟んで向かい合っていた。


時折微笑む優良を見て白雪は湯呑みを口元に傾けつつ尋ねる。


「まだ一ヶ月しか経ってないのに、駿があんな可愛い女の子達と仲良くなってるなんて。これから面白くなりそうだな〜、と思って」


「なるほど……」


クスクスと笑う彼女に白雪も納得したように頷き、また湯呑みを啜る。


「優良様は本当にお好きですね」


「白ちゃんだってそうでしょ?」


「クスッ……

私は違いますよ。

修羅場になって困り果ててる駿様を……」


等と女性二人がまだ預かり知らぬ先の事で盛り上がっていた事は、ここだけの秘密………





 

 

白雪姉さんの後書き部屋


〜駿の小さい頃のお話〜

 


晴香

「白雪さん、ミヤミヤの小さな頃の話聞きにきました!」


瑠璃

「ましたー!」


白雪

「あら、そう言えばそうでした。ではお話し致しましょうか」


相也

「お、俺は白雪さんに会いに」


悠一

「一体どんな話が聞けるのか楽しみですね」


「そうだな」


相也

(邪魔された!?)


駿

「なんだかんだで無かった事にしようと思ってたのに……覚えてやがった……」



白雪

「ふふ、ではどの話にしましょうか。本当に色々あり過ぎて迷いますわね〜」


駿

(目が既にSモードだよこの人……ろくな話されないよ絶対、ああ嫌だ)


「ところで、小さな頃の駿ってどんな子供だったんですか?」


晴香

「あ!それ私も興味あるな。今の色々とアレなミヤミヤとはやっぱり違ったのかな?」


駿

「然り気無く悪口混ぜるなっ」


白雪

「ええ、それはそれは小さくて可愛らしかったですよ。

女の子みたいな容姿で大人しく人見知り、まるで小動物みたい。本当にイジメ甲斐が、いえお世話甲斐がありましたわ」


相也

「くっ〜!!俺も白雪さんに虐められたいっ!!」


悠一

「初登場時からは考えられないくらい堕ちてますね、相也は」


晴香

「へ〜、小動物ね〜」


「ふむ、小動物か」


駿

(くっ、何故か分からないけど妙に恥ずかしい……!!)


悠一

「それで、何かお話はありませんか?」


白雪

「そうですわね〜

まだ第1回ですから、ちょっとだけ恥ずかしい話に致しましょうか」


駿

「って、ちょっと!?

第1回って、これ以降もあるんですか!?」


白雪

「取り敢えず帰省編が終わるまでは後書きで行う事になっていますから♪」


駿

「…………」

絶句


白雪

(ああ……その表情、最高ですわ♪)

ドS


まぁそういう事なので、帰省編終了までの後書きはこんな感じで続いていくと思います。



白雪

「先程言った通り、小さい頃の駿様はまだ結構な人見知りでして、初対面の方と会う時は優良様か私の後ろに隠れてしまう程だったんですよ」


晴香

「うわ〜、可愛い〜♪」


悠一

「おやおや……」


「クスッ、それは是非見てみたいな」


駿

(うぅ……)


白雪

「反面、母親の優良様や幼馴染みの綾姫様、私にはとても懐いてくれました。

それはもう嘲笑してしまうくらい無垢な子犬のよう、気の毒な程の純心さで」


駿

「表現が一々怖いんですけど」


白雪

「これは、そんな駿様が五歳の時の冬の話ですわ」

無視


駿

(素で無視された………)



白雪

「その月は優良様のお誕生日を控えていまして、五歳の駿様は早くから何をプレゼントするか一生懸命考えておられました。

そこで私がお手伝いして、手作りのお菓子をプレゼントする事にしたのです」


「手作りのお菓子か。


晴香

「何のお菓子を作ったんですか?」


白雪

「莓ジャムのマフィンでした。駿様はまだ五歳でしたから出来る事は限られていましたが、それでも私が教えた通りに頑張って何とか練習用のマフィンを作る事が出来ました」


相也

「し、白雪さんにお菓子作りを教えて貰いたい」


悠一

「相也はもう黙ってて下さい。でないとその口を縫い付けますよ?」


相也

「怖いよっ!!」


白雪

「その時の駿様はとても嬉しそうで。満面の笑みで私に何度もお礼を言って、本当に可愛らしかった。

私も教えた甲斐がありましたわ」


瑠璃

「あれ?駿お兄ちゃん、耳なんて塞いでどうしたんだろう?」


悠一

「きっと恥ずかしさのあまり逃避しているんですよ、色々と」


白雪

「でもそんな駿様を見ていると、悪戯心もくすぐられるというもの。

是非私に試食して欲しいと駿様が差し出してきたマフィンを食べる際に、ちょっと悪戯をしたんですよ」


晴香

「悪戯?」


白雪

「はい。ちょうど右手に血糊(ちのり)の袋を隠し持っていたので、マフィンを一口食べた後、なんと……」


「なんと?」


白雪

「その血糊を使って一気に吐血する振りをしてみたんです♪」


※良い子の皆は決して真似しないで下さい


白雪

「それを見た駿様はそれはもう驚いた様子で駆け寄って来ました。

目にうるうると大粒の涙を溜めたかと思うと、抱き着いて泣いてしまうものですから、駿様の顔や服も血糊でベタベタに。


その時の駿様の表情ときたら、今でも思い出すとゾクゾクしますわ♪」


晴香

「何て健気な、想像出来ないな〜」


瑠璃

「な〜♪」


「それだけ白雪さんの事が好きだったんだな」


悠一

「でも、確かにこれは恥ずかしい話ですね」


駿

「その前にツッコむべき所があるだろ!?

いたいけな少年にそんな悪質な悪戯をするか普通!?

しかも血糊隠し持ってたって明らかに確信犯じゃねーかぁ!!」


※確信犯とは悪い事だと分かってて行う行為というニュアンスで使われていますが、実は確信犯の本来の意味は宗教的犯罪を行う事(良いと確信して)なんだそうです。


相也

「へー、そうなんだ」


駿

「んな豆知識いらんわっ!!」


悠一

「で、幼い駿はその後どうしたんですか?」


白雪

「暫くして冗談だと告げたら、安心したのか泣き疲れて私の膝の上で寝てしまいましたわ。

その寝顔の写真、残ってますよ?見ます?」


駿

「何当たり前のように持ってるんですか!?

止めて下さい!!」


晴香

「見たい見たい!」


瑠璃

「瑠璃も!」


「是非、拝見してみたいな」


悠一

「言うまでもありませんね」


相也

「お、俺は白雪さんの写真の方が……」


白雪

「では……特別に」


駿

「ええ!?」



………閲覧中………



晴香

「か、可愛い!!

可愛過ぎるよ小さな時のミヤミヤ♪」


瑠璃

「すやすや寝てるね♪」


「こ、これは……!!

中々に……///」


悠一

「是非ペットにしたいですね」


相也

「悠一君!?どこまでギャグそれ!?」



駿

「うぅ……これは拷問ですか……?」

現実逃避中



白雪

「という訳で、第1回の駿様の恥ずかしいお話でした。それではまた次回」


晴香・瑠璃

「また次回〜♪」


駿

「もう嫌だ。

本当に勘弁して下さい……」


「諦めろ、何を言っても恐らく無駄だろう」


悠一

「作者権限、ですね」


相也

「また白雪さんに会える!!」



ではでは、次回もよろしくお願いいたします!!

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