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第32話 自称ライバルな転校生



取り敢えず投稿されたオリキャラが転校してきたので、友達への紹介やさわりの部分だけのかなり短い話です。


オリキャラについてはこれからちょくちょく皆と関わってくると思うので、よろしくお願いいたします。



次回は閑話でおとぎ話っぽいパロディーをやろうと思います。





 



 

「はぁ……」


一年A組の教室。

朝のHRを担任である紗香が行っている中、駿は頬杖をつきながら深々とため息をついた。


(ね、ミヤミヤ)


(ん?)


(さっき扉の前で叫んでたのって、昨日家に来てたイッくんだよね?)


隣の席の晴香がそっと彼の耳元に口を寄せてそう尋ねてきた。


(ああ……そうだな)


駿は疲れたような参ったような表情で肩を落とす。


そう。つい先程、HRが始まる数分前にA組の教室に昨日駿達の家に来訪してきた五更木一騎が突然姿を現したのだ。

彼は窓際の駿を指差して大きな叫び声を上げると、唖然とした教室の空気にも構わずそのまま扉を閉めてしまった。

クラスメートの視線を一気に集める駿だったが、すぐに担任が来たのでひとまず皆は席について今に至るのだが。


(という事は、隣のクラスの転校生って……)


(ああ……まず間違いなくアイツだろうな)


(へぇ〜、それって凄い偶然だね)


疲れたように額を押さえる彼を見てクスリと微笑む晴香。確かに友達との縁とは言え、昨日会ったばかりの人が隣のクラスに転校してくるのはかなりの偶然と言えるだろう。


「天城さん、月ノ宮君、ちゃんと聞いてるの?」


「あ……」

「あはは、すみません」


と、教壇の紗香に注意されたので二人はサッと離れて視線を教壇に視線を戻す。


しかし、駿はすぐにまた額に手を当ててため息を一つ。

何とはなしに視線窓の外に広がる朝の青空に向ける。


(迂闊だった。昨日の突然の来訪はそういう意図があったのか。

あの野郎、はなからそのつもりで……)


昨日突然来た時は、ただの気まぐれで明日にでも帰るだろうと思っていたが転校してきたという事は明らかにこの街に移ってきたという事を意味している。


(しかし、アイツどうやってこの街にいるつもりなんだ?実家は向こうにあるのに)


それは当然の疑問。

一騎の実家は駿達と同じ西部の田舎にあるのに、汐咲市に留まるというのだろうか。まさか家ごと越してきた訳でもあるまい。


(本人に聞くとまた話がややこしくなりそうだしな……綾姫にでも聞いてみるか)


ポケットに入った携帯電話を手で確認した駿はそう思い軽く頷いてみせるのだった。




 




 

第32話 自称ライバルな転校生

 




 




HRが終わった休み時間。駿は中庭の端で携帯を片手に電話をしていた。


『ええ!?一騎さんがそちらの学校に?』


「ああ……ついさっき転校してきやがった」


電話の相手、綾姫は一騎が汐咲学園に転校してきたという話を駿から聞いて驚きの声を上げる。

綾姫も駿の知り合いだからか一騎の事は知っているらしい。


「何か聞いてないか?」


『いえ、そんな話初めて聞きましたわ。びっくりですの』


「そか……」


その返事に駿は案の定かという表情で、ため息を一つついてみせた。


『きっとお一人で勝手に抜け出して来たのではありませんか?一騎さんはこうと決めたら引かない方ですから』


「だろうなぁ……」


彼は頭を掻きながら綾姫の意見に同意する。二人とも一騎の性格はよく知っているらしい。


「つっても、アイツはこの街にどうやって留まるつもりなんだろう?宛はあるみたいな事は言ってたけど」


『確か、一騎さんの親戚のお祖父様がそちらの街にいらっしゃるという話を聞きましたわ』


「マジでか」


『ですの』


何という偶然か。一騎の親戚がこの街に住んでいるらしいという話だという。

偶然とは恐ろしいなと改めて思う駿だった。


『でも一騎さんだけズルいですの。わ、(わたくし)だって駿様のお側にいたくて、その……ゴニョゴニョ』


「ん?何て?」


『な、何でもありませんわ!!』


電話超越しでも聞こえ辛いくらい程小さな声に彼は尋ね返すと、打って変わって綾姫は慌てたような大きな声で返してくる。


「…………」


『駿様?どうかなさったんですの?』


「いやさ、こんな風に話してたら会えなくて寂しいなってふと思って」


『ふぇ!?』


普通に考えればかなり恥ずかしい言葉だが、正直過ぎるのか別段気にした様子も無くそう言ってのける駿。

電話越しの彼女の声は恥ずかしさを増して一段も跳ね上がった。


『………』


「向こうでは同じ屋敷だったし、毎日一緒にいるのが当たり前だったけどな。こうして引っ越すと改めて思うというか」


『………』


「って綾姫?」


『な、何でもありませんの!!大丈夫ですわ、ノープロブレムですの!!』


暫く反応が無かったので

先程より焦ったような声で返事が返ってきた。

明らかに何か問題があるように聞こえるが、本人が何でもないと言っている以上追及すべき事では無いのだろう。


「そか。

まぁゴールデンウィークには帰るから」


『ええ、楽しみにしていますわ。駿様のお友達もいらっしゃるんですか?』


「まだ聞いてないからな。分からないけど、もしかしたら」


駿は中庭からA組の教室のある方向に目を向ける。

まだ決まっていないので、今日にでも聞いてみようかと。


『でしたら、料理を沢山作っておもてなしをしなくては、ですね!』


「え……い、いやちょっと待て。料理って……綾姫の?」


『はいですの!

腕によりをかけますわ!』


「腕に……よりを?」


今度は駿の声色が焦ったように変わる。どころか凍り付いたような表情に。

反面綾姫の声はとても嬉しそうだ。


『そうと決まれば早速今日帰って特訓ですわ。

怜夜さんに沢山試食して貰いましょう』


「…………」


『あ、では私はこれで。

またですわ、駿様』


「ちょっ待っ……」


駿の言葉を待たず、通話わ切れてしまった。

彼は黙って通話が途切れた画面を見つめていたが、ポツリと一言。


怜夜(あいつ)、今日死ぬんじゃねーかな……」


この言葉の意味している所は、近々分かる事になる。







時刻は8時45分。

授業開始まではまだ少し時間がある。今日は紗香がHRを始める時間がいつもより早かったのだ。


(さて、宿題でもテキトーに片付けるか)


家で宿題をするという概念の無い駿は基本的に宿題は休み時間や授業時間を使って終わらせるのが常である。


そんな訳で提出期限のある課題を行う為に、駿は早足教室に戻って来る。


「だあぁっ!!」


そして扉を開けた彼は叫び声を上げて、思い切り床に突っ込んだ。


「あ、ミヤミヤ。お帰り〜」

「お帰りなさい駿、電話は終わりましたか?」


窓際に座っていた晴香と悠一が彼に声をかけてきた。

それに紫や相也、新や湊の一同も窓際に集まっていた。しかし駿の反応の原因はそこでは無く……


「何でテメーがここにいるんだよっ!!」


「はっはっは!!

いきなりご挨拶だな駿!」

駿の席に座っている五更木一騎に向けてのものだった。

いつの間に来たのか、彼は愉快そうに笑いながら駿に向けてグッと親指を突き出してくる。


「何だ駿、転校生ってお前の友達だったのかよ。

早く言ってくれりゃ良かったのに」


「俺だって今日初めて知ったんだよ……」


からからと言う相也に彼は額を押さえながらの一騎の座る前にやって来る。


「さっさと自分が転校するクラスに行けって」


「連れねー事言うなよ。

ライバルってのは神出鬼没なんだからな」


「ライバルじゃねーよ」


一騎は屈託の無い笑みを浮かべるのに対し、駿は




「なぁ、駿。

お前の口から彼の事を紹介してくれないか?」


「え?俺?」


不意に新が顔を向けてそう言ったので彼は思わずきょとんとした表情になる。何故自分が、と。


「そうですね。私達も駿君の口から聞いてみたいです」


「………はぁ、分ァったよ」


しかし隣の湊にも言われたので、駿は仕方なく息をついて自分の席に座る男に手を向けた。


「コイツは五更木一騎。

俺が中学に居た頃の知り合いだ。まぁ何やかんやあるけどメンドーだから省略な。えっと後は……あ、そうそう運動神経だけは馬鹿みたいに良いヤローだな。剣道部に入ってたから、確か」


「うわ、ミヤミヤ投げやり」


本当に簡単な説明で終える駿に呆れたような表情の晴香。だが、そんな説明でも食い付いた者はいるようで……


「五更木は剣道部だったのか……

私は神代紫だ。剣道部に所属している、よろしく」


「え?あ、えっと……その、よろしく頼む……」


案の定、剣道部である紫がパッと目を輝かせて彼の方に身を乗り出していた。

一騎は慌てて少し距離を取り視線を反らす。顔が若干赤いのは照れているからだろうか。


「だったら、是非こっちでも入って欲しいもんだな。歓迎するからさ。

っと、俺は朱月新だ」


同じく部員である新も一騎の側に来てポンポンとその肩に手を置いた。


「因みに、コイツは異性を前にすると性格変わるから。」「なっ、お前……!!」


そういえばと付け加えた駿の言葉に一騎は慌てて立ち上がった。いきなり皆の前で弱点(?)をバラされたので思わず、と言った所か。


「僕は相良悠一。生徒会をやっています」


「俺は篠田相也。相也って呼んでくれてかまわねーよ」


新に引き続き男性陣が挨拶をしていく。一騎はサッと快活な雰囲気になって『よろしく』と握手を返す。


「私は朱月湊です。

よろしくお願いしますね、一騎君」


「あ、え、ああ……よろしく」


晴香の隣に立っていた湊も丁寧に頭を下げて挨拶をする。すると一騎はまた声色も小さく、おずおずとした態度で言葉を返すのみに留まってしまう。


(ホント難儀な性格してやがんな……コイツは)


そんな様子を見た駿はやれやれといった表情。

普段は快活でも急にしおらしくなる性格は何かと疲れそうである。



キーンコーン……



「ほら、予鈴鳴ったぞ。

転入先のクラスに行って自己紹介でも何でもして来い」


「おっと、もうそんな時間か」


一騎が時計を確認すると授業開始5分前。

チャイムが鳴ったので駿は鬱陶しそうに手を払いながらそう言ってみせた。


「普通に挨拶しろよ?

長い前口上とかいらねーから、引くから皆。

ちゃんとクラスに馴染めるようにな」


駿の話は恐らく聞いていないだろう、一騎は彼と向かい合うように立ちビシッと指を突きつけてきた。


「仕方ねぇ、お前との勝負は一時お預けだな!!

せいぜい首を長くして待ってろよ」


「話聞けな。

後首を“洗って”、な」


一騎はそんな注意も聞かず『あばよっ』と言い残しダッシュでA組から飛び出して行ってしまった。



「あ〜……

面倒臭ぇ……」


駿は出口を見つめながら独り言ともにつかぬ声で呟く。


「クスクス」


「素直じゃないね、ミヤミヤは」


そんな彼を見た湊は可笑しそうにクスリと笑い、晴香は何か言いたげな視線を送ってきた。


何の事だか分からないと振り返る彼に彼女は続ける。


「本当は心配してるんでしょ、イッくんの事」


((((イッくんって……))))



そのあだ名に一同は心中でツッコミを入れるがそれは置いておいて。


「いや、ないない」


「ちゃんとクラスに馴染めるようにって、心配そうに言ってましたよ?」


あり得ないと手を顔の前で振る駿に湊も微笑ましそうにそう言ってみせた。


「そりゃ……向こうのクラスに迷惑がかかったら、知り合いとして申し訳ないというか……」


「だから、素直じゃないって言ってるんだよ」


言い訳をするような彼を見てやはり可笑しそうに紫も言った。悠一や新達も同じような表情。


「あー、はいはい。

何でも良いよ、もう。

授業も始まるから席に着こう」


遂に折れたのか、頭を掻きながら自分の席に座る。

一同も自分の席に着いたと同時に、一時限目の先生が教室に入ってきたのだった。




四月も終わりに近づいたその日、隣のクラスに“自称”駿のライバルだという転校生がやって来た。

転校当日、彼は恒例のクラスメート達の質問攻めに遭い教室から出して貰えなかったとか何とか。







次回は閑話です。


何かおとぎ話っぽい話を駿達がやるパロディーみたいな回になります。

本編とは関係無いちょっとした休憩小話ですので。


まだ決まっていませんが、

例えば囚われのお姫様を助けにいく王子の話とか、シンデレラやいばら姫のパロディーとか、或いは桃太郎みたいな童話のパロディーとかですね。



ではでは、次回もよろしくお願いいたします!!

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