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第22話 物置の片付けって何かと脱線しがち



最近焦って更新していたみたいなので、これからは少し落ち着いて更新していきたいと思います。


毎週の土日のどちらかに一話ずつ更新していく、週一ペースを目標にしていきたいです。


どうかよろしくお願いいたします!!


では、始まりです!

 


 

「今日の生徒会は皆で物置部屋のお掃除だよ!」


「「……掃除?」」


とある放課後の生徒会室。

もみじが長テーブルから身を乗り出してそう宣言していた。

駿と静ははてと首を傾げてみせる。


「そう、皆でお掃除をして、身も心リフレッシュ!

それが本日の活動だよ!」


「まぁ、良いわね〜

お掃除大好きよ〜」


誰とも指名する訳でも無くビシッと指を天井に突き付ける彼女に、隣の八雲も両手を頬に併せて微笑んでみせた。


しかし、ここに二つの疑問が浮上する。


「物置部屋、と言いますと?」


まず一つ目の疑問。“物置部屋”とは何かと静が尋ねた。


「あ、うん。

生徒会室の隣に小さな部屋があるのは知ってる?」


「ああ、そういえば……」


「扉がありましたね」


もみじの言葉に駿と静は顔を見合せて頷いた。


今居る生徒会室から廊下を右に行った所に教室より少し小さな部屋がある。

彼女はその事を言っているらしい。


「あれはね、物置部屋って言うの。

昔は教材用の教室だったらしいんだけど、生徒会の先輩達が行事で使わなくなった備品や自分達のいらなくなった私物なんかを置いておくのに使われてたらしいの。そうしたらいつの間にか“物置”になっててそう呼ばれるようになったんだって……」


「「へぇ……」」


そんな部屋があったとはと顔を見合せる二人。

一体どのくらい前からなのかは分からないが、そういう事なら色々な物がおいてありそうだ。


「しかし、何でまた急に掃除を?」


駿はもう一つの疑問を口にする。

本来の生徒会の仕事の方は良いのだろうか。


「それなのよ駿君!」


「おわっ!?」


すると、もみじは再び長テーブルに手をついて身を乗り出した。

よくぞ聞いてくれました、と。


「私は思ったの。

確かに生徒会の仕事も大切だと思うけど、それよりまず先にやるべき事があるんじゃないかって!

普段からお世話になっついるこの学園を綺麗にして、より良い環境で仕事をした方が良いと……」


「なるほど、そういう事ですか」


「「?」」


熱弁していた彼女の言葉はそんな一言に遮られた。

見ると、右隣の悠一がパタリと読んでいた文庫本を閉じて一人頷いている。


「要するに、何かの拍子で先生方から引き受けたものの、一人では大変だという事に気付き生徒会の活動に組み込もうと。

そういう事ですね?」


彼はそんな予想を口にもみじの方に顔を向けた。


「うぅ……」


それを聞いた彼女は何故かクッキーを片手に後退り目を泳がせる。


どうやら図星のようだった。


「そ、そんな事は無いよ?

生徒会長として役員の皆にはより良い環境で仕事をして貰いたいと思って……」


「いえいえ、実はお昼休みに職員室で聞いていました」


「え!?ホント!?」


驚きの発言に目を丸くするもみじ。

その反応からして、やはり先生に頼まれていたようだ。


「本当ですよ。

ご自分で引き受けてましたよね?」


「うぅ……悠君、意地悪だよ〜」


彼女はモグモグとクッキーを食べながら恨めしげな視線を送る。


「でも、どうして引き受けたんですか?」


「それが聞いてよ駿君!

ただの空き教室の掃除だっていうからオッケーしたのに、後になって物置部屋だなんて言うんだよ!」


「はぁ」


要するに体よく乗せられてしまい、物置部屋を掃除する羽目になったと。


「何というか、後先を考えない会長らしいですね」


「もぐもぐ……

どーゆう意味よ、悠君!!」


「怒るか食べるかどちらかにして下さい」


何故かクッキーを口にしながら頬を膨らませるもみじ。全く怒っているように見えないのは気のせいでは無いだろう。


「でも、掃除は大切ですから。お手伝いしますね」


「ありがとう静ちゃん!!

本当に優しいね、大好き!!」


「きゃっ!?先輩!?」


その静の言葉に感極まったのか彼女の胸に思い切り抱きつくもみじ。

突然のスキンシップに静は赤くなるも、更なる追い討ちが。


「私も手伝っちゃうわよ〜」


「や、八雲先輩!?」


後ろから静を抱き締める八雲。彼女の豊満な胸の柔らかい感触に更に慌てる静。


(我が妹ながら何て羨ましい……」


「兄さん!!

声になってます!!」


「おっと」


正直なのかただの馬鹿なのか兄は思い切りそう口にしていた。


「まぁそれはともかく。

俺も手伝いますよ。人数多い方が良いと思うし」


「ありがとう駿君!!

これで三人とも賛成だよ、さぁどうする悠君!!」


駿の返事も聞いたもみじはビシッと大袈裟にそう言ってみせた。

対して悠一はやれやれと肩を竦めると……


「多数決なら仕方ありませんね。

では、なるべく早く終わらせて生徒会の仕事に取りかかるとしましょう」


後で仕事をするという事で承諾。


「それじゃあ皆!

掃除頑張っていこー!」


やたら元気な会長の掛け声で、生徒会メンバーによる物置部屋掃除が始まった。




 




 

第22話 物置の掃除って何かと脱線しがち

 




 




物置部屋。

広さにして普通の教室の2/3くらいに相当する。


かつては何かしらの教材室として利用されていたらしいが、ここ数年は生徒会の予備部屋として利用されている。

予備部屋といっても昔行事で使われた備品や用具、今までの生徒会メンバーの要らなくなった私物なんかが適当に押し込められている内にいつの間にか物置状態と化し、“物置部屋”と称されるようになったのだった。


「お〜、何か色々置いてあるな〜」


「置いてあるというか、積んでありますね」


駿と静の言葉通り物置部屋の中には色々な、本当に様々な物が所狭しと置いてあった。


体育祭の時に使っただろうフラッグやゴールテープ、ハチマキの束、ゼッケンの束、テントの骨組み等。

文化祭の時に使われたであろう栞の束、額縁が幾つか、ステージ用の備品や出店の備品等も。


他にも私物と思われる週間マンガ雑誌が積んであったり、まだまだ奥には色々な物が隠れていそうだ。


「よーし!

じゃあ早速整理を始めるよ!」


「お掃除〜、お掃除〜

楽しいお掃除〜」


物置部屋の中心を指してそう宣言するもみじと、謎の歌を歌いながら頬に手を当てる八雲。


「では、要らない物と残しておきたい物を分けましょう。必要無い物は廊下の右側に、必要な物は左側に幾つかダンボールを用意しておきましたのでそちらに入れておいて下さい」


悠一はそう言って室内から廊下を指差した。

いつの間に用意したのか、流石の手際である。



 


さて、一同は物置部屋の整理を始める訳だが、こういった色々な物がある場所を掃除する場合必ずといって程脱線するものである。


例えば……



【ケース1:卒業アルバム】



「あ!これ去年の卒業アルバムだ!」


「「「?」」」


整理をしていると、不意にもみじが声をあげた。

何事かと駿達は彼女の側に集まってくる。


「どうしたんですか?」


「これ、去年の先輩が残していったアルバムだよ!

懐かし〜」


代表して悠一が尋ねると、彼女は分厚い本を掲げて部屋の中心にポンと置いてみせた。


どうやら卒業アルバムを見つけたらしい。

パラパラとページを捲っていくと、駿達の全く知らない顔が幾つも見えた。

まぁ、去年卒業した先輩方なら当然だろうが。


「あ、ほら!

これは去年の生徒会!」


「あら本当。

懐かしいわね〜」


もみじがとあるページで手を止めた。

そこには大きな写真に何人かの人間が写っている。


と、静がその写真を見て何かに気付いたように口を開く。


「これ、ひょっとして先輩達ですか?」


「うん、そうだよ!」


写真には知らない男女が四人いたが、他に見覚えのある女子生徒が二人と男子生徒が一人写っていた。

それは言うまでも無く、もみじと八雲、悠一の三人だ。


「この時は僕は中等部三年、もみじ先輩と八雲先輩は高等部一年でしたね」


「うんうん、高校デビューの時だったよね」


悠一も懐かしむように写真に目を向ける。


「おお、今より更に小さいですねもみじ先輩……ってか、本当に高校生ですか?」


「あー!!

駿君ひどい!!バカバカー!!」


写真に写るもみじを見て目を丸くする駿。

すぐさまポカポカと彼女に叩かれる。


「八雲先輩や悠一は変わっていないですね」


「あらあら、これでもしっかりと成長してるのよ〜」


駿の言葉に八雲は自分の身体を見下ろしてみせる。


「な、なるほど……」


彼はそのグラマラスな体型を見ておずおずと頷いた。

彼のその視線は主に彼女の豊満な胸にしっかりと注がれている。



ぎゅうぅぅ〜



「痛たたた!?」


「………」


その後すぐに隣の静につねられてしまっていたが。


「悠君は全然変わってないよね〜」


「そんな事はありませんよ、この時はまだ僕も裏社会の事をほとんど知らない人間でしたから」


「「………」」


さらっと笑顔でそう言ってのける悠一。

彼の場合、どこまでが冗談なのか全く分からないのである意味怖い。



その後ももみじはパラパラとアルバムを捲りながらあの時はこんな事があったとか、コレは懐かしい何とかだったと言っていたが……


「あ、こんな事してる場合じゃ無かった!!掃除だよ、掃除!!」


本来の目的を思い出して慌ててアルバムを閉じる。

やや脱線があったが、再び掃除に戻っていく一同だった。



【ケース2:女の子が好きそうな雑誌】



「あら〜、可愛いワンちゃん」


今度は八雲がおっとりとした声をあげた。

もみじと静が彼女の側に寄っていく。


「え?何々?」


「どうかなさったんですか?」


八雲が開いていたのは少し厚めの本だった。

そこには可愛らしい仕草をする子犬達が様々な角度で並んでいる。


「わー!!子犬だー!」


「か、可愛いです……」


子犬を集めた写真集だ。

八雲を始め、女性陣はすぐさま並んでページを捲り始める。

1ページ捲る度にアレが可愛いだの、コレは抱きしめたいだの口々に意見を交わしていく。


「あの〜、そろそろ掃除を……」


駿はおずおずとそう声をかけるが一切届いていない。

彼は振り返ると悠一も両手を軽くあげてお手上げのポーズ。


「仕方ありません。

暫くは僕達で整理をしましょう」


「……だな」


男性陣は密かに掃除を続行する事に。

彼女達が慌てて作業に戻ったのはそれから30分後の事だった。


女性は総じて可愛いものが好きなのである。



【ケース3:大人数ゲーム】



「ん?

これ……」


「おや?どうしました?」


整理作業も後半にさしかかってきた頃、駿が部屋の奥から何か箱のような物を見つけてきた。


悠一と一緒にそれを覗き込むと、ルーレットの絵やマスの絵、天使のキャラクターの絵なんかが描いてあるパッケージ。

そして真ん中に大きな文字でタイトルが書かれていた。


「あー!!

大富豪ゲームだ!!」


早速飛び付くもみじ。


大富豪ゲーム。

通称人生ゲームと呼ばれる大人数ボードゲームだ。場所によっては成り上がり双六、人生双六とも称される。


「あらあら、これはまた懐かしいものが出てきたわね〜」


「本当ですね」


八雲と静も箱の側に歩み寄って来る。


「小さい頃は皆と遊んだわよね〜」


八雲は頬に手を添えながら懐かしむようにパッケージを見つめる。


「そうですね。

俺達も小さい頃は。

昔はよく静がこのゲームで『お兄ちゃんのお嫁さんになる』って言ってくれてて……」


「に、兄さん!!

そういう事は忘れて下さい……!!」


駿も思い出すようにそう口を開くと静は赤くなってそれを遮る。


「あはは、私も大好きだったよ大富豪ゲーム!」


「僕は市販のボードゲームより暗黒街のボードゲームの方が……」


もみじに続いて静かに頷く悠一。

暗黒街って何だろう。



「ねぇねぇ!

道具は揃ってるかな?」


「あ、そうっスね。

見て見ますか」


パッケージを開けると中には大きなボードや綺麗に並んだお札の束、職業のカード、アイテムのカード、車のコマ、ルーレット等が出てきた。


「ふふ、ちゃんと揃ってるわね〜」


「随分と綺麗にまとまっていますね。

前使っていた方はしっかりとしていたようですね」



なるほど、悠一の言う通り道具はキチンと整理されていた。

何とはなしにボードを広げて、ルーレットをセットしていくもみじ。


「ね?ね?

皆でちょっとだけやってみない?」


彼女は周りを見回してそう尋ねる。

その瞳は既にキラキラと輝いていた。


「会長、掃除をするのではないのですか?」


「あぅ……」


ため息混じりに返す悠一に痛い所を突かれたと少し声を洩らすも……


「ちょっとだけ、ちょっとだけだから。ね?」


「ダメだ、といっても聞かないでしょうね会長は」


両手を併せるもみじに悠一は仕方ないと肩を竦めてみせる。


「えへへ、ありがと!

じゃあ、皆で一緒にやろー!」


そうして、何故か流れで大富豪ゲームが始まるのだった。




1時間半後……




「やったー!

ギャンブルで大当たりだよ!これで1位も狙えるよ悠君!」


両手を挙げて万歳の生徒会長。

調子が良いようで第3位。現在1位を狙って進撃中。


「残念ですが、その程度の追い上げでは僕は抜かせませんよ?」


クスリと笑みを浮かべて煽る生徒会男子副会長。

ぶっちぎりの第1位。


「では、私は右側の道にいかせて頂きますね」


ゆっくりと駒を移動させる生徒会会計。

安定した成績で現在第2位。


「あらあら、皆凄いわね〜」


皆の様子を微笑ましそうに眺める生徒会女子副会長。

闘争心ゼロでちょっと遅れた第4位。



「火災で家を失う!?火災保険に入ってない!?

博打で大失敗!?借金倍増!?

何だこれはぁぁぁ!?」


そして頭を抱えて嘆く生徒会書記。

多大なる不幸が降りかかり、現在ダントツの最下位。



皆仲良く団欒(だんらん)しているのだが……

本来の目的は何だったか思い出して欲しい。



「って、皆!!

もうこんな時間だよ!?

こんな事してる場合じゃないよ!!」


「いや、やりたいって言い出したのは会長ですよ?」


「あぅ……」



こうして大富豪ゲームは打ちきりとなり、やや急いで整理に戻る生徒会メンバー。



何とか物置部屋の整理が終わったのは辺りがすっかり暗くなった頃だった。



「終わったー、結構疲れたな」


「綺麗になりましたね」


「うんうん、皆で力を併せれば出来ない事なんて無いんだよ!」


「団結力ね〜」


以前とは打って変わってさっぱりした物置部屋を見渡して、小さいながらも達成感に包まれるメンバー。



しかし……


「仕事は間に合いませんでしたね」


「「「あ……」」」


思い切り生徒会本来の仕事は忘れていたのだった。










今回は生徒会の掃除の話でした。


掃除とかしてると懐かしいものとか出てきたりして、ついつい脱線とかしてしまいますよね……

気付いたら夕方になってた〜、みたいな。

自分はしょっちゅうでした(笑)



さて、次回からも一つのイベントに絞った話が展開していくと思います。



因みに、二次創作だった前作に登場した駿の過去を知っているキャラクター“楓”と“綾姫”は出ないのかという質問があったので(結構前に)後書きの場を借りてそれにお答えしたいと思います。


楓は出ませんが、綾姫は登場します。

性格や能力はそのままです。

どのような立ち位置で登場になるかは暫くすれば分かると思います。


まぁ、駿によく関係した特に個性の強いキャラクターでしたから。



ではでは、次回もよろしくお願いします!

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