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第20話 有意義な日曜日の過ごし方



今回はあるキャラクターのちょっとした話です。

珍しく一話完結。


後々キャラクターごとのエピソードに関係するお話です。といってもまだ入口のような部分ですが。



では、始まります!

 

 

 

日曜日。

休日の名の通り、社会人が六日間の自らの勤労を労りゆっくりと休む一日である。

勿論、平日学業に勤しむ学生にとっても大切な一日であり出来るだけ有意義に過ごしたい日である。


だというのに……



「………」


ボケーっとする事無くテーブルに座っている駿。

時計に目を向けると時刻は既に午後四時。


(……気がついたらいつの間にか夕方か)


思いっきり時間を無駄にしていた。


お昼を食べてから何となく立ったり寝転んだり座ったりしていて、何となく時間が経過していったのだ。


因みに静は自室で自習学習中である。


(……少し、外の空気でも吸ってくるか)


このまま家でボーッとしていても

そう思って立ち上がると、白いパーカーを手にリビングを後にする。


そのまま玄関へ歩いていくと、ちょうど静が階段から降りてきた所だった。


「あ、兄さん。

お出かけですか?」


「ああ、これ以上ボーッとしてたらせっかくの日曜が勿体無いからな。

少しでも有意義な時間を作らないと」


「でしたら少し勉強をした方が有意義な時間になると……」


「勉強は寝る前にやるって決めているような気がそこはかとなくするんだ」


彼女の勉強という言葉にサッと目を反らしてそれっぽい事を宣う駿。

訳は『勉強は99%しない』である。


「では兄さん、寝る前に一緒に勉強しましょうか」


「………え?」


「寝る前になさる予定だったんですよね?

でしたら私もお付き合いますから」


「………はい」


が、当然そんな考えは静にはお見通しで笑顔でそう言ってきた。

まんまと自分の首を締めた彼は、逃げられる筈も無いので仕方なく首を縦に。


(まぁ、パジャマ姿の静と一緒にいられるから良しとするか)


しかし飽くまで勉強は二の次だった。



「あまり遅くならないようにして下さいね」


「分かってる。

散歩だからすぐに戻るよ」


こうして駿は玄関を出て、ほんの少しずつ日が傾き始めた空を見上げながら歩き出した。




 




 

第20話 有意義な日曜日の過ごし方

 




 




行き交う人で賑わう街の商店街。

今日の晩御飯の食材を買う主婦達、小さな電気屋で機材を見ている男性、時計屋で古い時計を修理して貰っている老人、友達同士固まって騒いでいる学生等々。


そんな中を駿は商店街の様子やお店を見回しながら歩いていた。


(別段何かする訳でも無いんだけどな……)


ちょっとした散歩なので特に宛も無く、ただぶらぶらと歩いていく。


どのくらい歩いたら家に戻ろうかとぼんやりと考えていた時、不意にその声はかかってきた。


「あれ?ミヤミヤ?」


「え?」


聞き覚えのある女の子の声。

振り返ると、彼の方に向かってくる晴香の姿があった。


薄黄色のトレーナーに青い色のスカートを身に着けている。


「天城?」


「おはよっ、じゃ無かった。こんばんは……はまだ早いかな?

とにかく、こんな所で会うなんて奇遇だね」


偶々商店街を歩き回っていたらクラスメートに出会った。

日常の一コマにある、ちょっとした偶然だ。


「今日はどうしたの?

しずちゃんと買い物?」


「いや、一人だよ。

ちょっと外の空気が吸いたくて、宛も無く散歩してるとこだ」


「そっか、要するに暇なんだね」


「物凄く簡単なまとめ方ですね……」


要するにそういう事だ。

日曜日に何もやる事が無くてぶらぶらしていただけっある。


「あ、もし今暇なら小学校にいかない?」


「小学校?」


すると、晴香は思い付いたようにそう口を開いた。

彼女の口からは聞き慣れなさそうな言葉に駿は首を傾げる。


「うん、小学校の学童保育。妹を迎えに行くの」


「……妹がいたのか」


「そ、小学校二年生。

今年で八歳になるかな。

今日は日曜日だけど学童でイベントがあるからってお昼からね」


どうやら彼女には小学生の妹がいるようだ。

その妹が学校の学童にいて、今から迎えに行く所らしい。


「って事は、お姉さんをやってるんだよな」


「うわっ、何よその意外そうな反応は!」


「………春だからか日も延びたなぁ」


「しかも誤魔化し方雑過ぎない!?」


意外そうな駿の表情に彼女は少し怒ったように頬を膨らませる。

それに対して空を見上げて一人頷くという返し方。


 

「でも、何で俺を?」


「唐突に本題に戻るんだね……」


「会話はメリハリが大切だからな」


「それ、絶対間違ってると思うんだけど」


「気にするな」


かと思いきやいきなり話を戻してくる彼にやや呆れた様子の晴香。

まぁ仕方ないと呆れつつ本題に移る事に。


「学童が終わるのは五時半だけど、私はたまに早めに行って他の学童の子供達とも遊ぶ事もあるの。

子供同士で遊ぶのも好きだけど、年上の人と一緒に遊ぶともっと楽しいみたいだから」


「なるほど」


「だから、ね?」


その話と自分が一体どう関係しているのかと未だ不思議そうな顔をしている駿に、晴香はニッコリと微笑んでみせた。


「ミヤミヤも子供達と一緒に遊ぼうよ。

皆きっと喜ぶから」


「え、俺が?」


「暇なんでしょ?」


「ま、まあ一応暇だけど」


なるほど、駿も一緒に学童にいって子供達と遊んで欲しいとそういう訳らしい。


因みに彼が“一応”と付けたのは、『お前暇だろう』と尋ねられて堂々と『我輩は暇である』と返すのは人として何か悲しいものがある気がしたからである。


「もし嫌なら無理にとはいわないから」


「別に嫌って訳じゃないけど」


「じゃあ決まりね」


「いや、待てって。

学校と関係の無い俺なんかが行って大丈夫なのか?」


まだ越してきたばかりの人間であり小学校とは縁も所縁も無い人間の自分がいきなり行って平気なのか。


そう尋ねると、晴香は首を横に振ってみせた。


「大丈夫!

そんな事誰も気にしないから。それじゃ行こう!」


「ちょっと待……」


駿の言葉を待たずに彼女はくるりと背を向けて歩き始めた。


「ほらほら、早く来ないと置いてくよー!」


(ま、いっか……)


暫く止まっていた駿だが手を振っている彼女を見て息を一つ、ついていく事にした。





・・・・・・・





汐咲小学校。

商店街から西に少し行った所にある小学校だ。


特にこれといった特徴も無いごく普通の初等学校だ。

校門から見て右に四階建てのL字型校舎と向かい合うように左側に別館のような三階建ての校舎が一つ。

広々とした校庭が校舎前に、屋外プールが校舎の脇にある。


学校の規模としては一般的だが、必要以上に小さく見えてしまうのは普段通っている汐咲学園の規模が非常に大きいからだろうか。



「ここが小学校か」


「そだよ。

更に謎に包まれた私の過去を照らす一筋の光となり得る情報が。何とここは私の母校なの!」


「へー」


「む〜、リアクション薄いなー」


駿と晴香は正門から校庭に入ってきた。

因みに彼女の母校らしいが彼は生返事でいなす。


「学童は左側。

校舎の一階にある、あの部屋だよ」


「ああ、ホントだ。

子供達がいるな」


見ると、校舎一階に校庭側に大きな窓ガラスと入口が向いた部屋が一つだけあった。

大体教室二つ分程の広さくらいか、窓越しから室内で騒いでいる小学生達の姿が見える。



二人はそのままグランドを歩いていき、その入口の前まで歩いてきた。



「あ、お姉ちゃん!!」


「るり、迎えに来たよ」


ガラッと入口の扉が開いて一人の女の子が飛び出してきた。

両側で縛った栗色の髪。

桃色のシャツに青いズボンを着た可愛らしい女の子だ。


晴香は彼女の頭に手を置くと、優しく撫でてあげた。


「妹さんか?」


「うん。天城 瑠璃(るり)、私の妹」


隣で駿が尋ねると、彼女は女の子に手を向けて紹介してくれた。


「お兄ちゃん誰?

お姉ちゃんのお友達?」


「うん。彼はミヤミヤじゃ無くて、月ノ宮駿君。

私のクラスメートだよ」


(久々に名前を呼ばれた気がする……)


今度は女の子、瑠璃の方から聞かれたので駿の紹介をする。


いつもあだ名で呼ばれといるので、名前で紹介されると少しだけ他人事のように思える駿であった。



「そっか。

えーと、えーと、駿お兄ちゃん!」


「ああ、よろしく。

瑠璃ちゃん」


瑠璃は元気いっぱいの笑顔で手を差し伸べてきたので、彼も笑顔で握手をしてみせた。


まだ小学校二年生の彼女の手は小さくて細いが。


「よーろーしーくー!!」


「おお!?」


握手したままブンブンと振る彼女の手は力もあり元気ハツラツだ。

その反応に驚いて声をあげる駿とおかしそうに見ている晴香。


と、再度ガラガラと学童の入口が開いた。


「あ、晴香姉ちゃんだ!」

「ホントだー!!わーい!!」

「晴香お姉ちゃーん!」


中から6〜7人くらいの子供達が飛び出してくる。

皆晴香を見つけたようで、笑顔で彼女に駆け寄ってきた。


「あはは、皆元気そうね。

あ、こら。変な所に抱き着くな!」


かと思うと皆、彼女の手を握ったり腰に抱き着いたりとじゃれ始める。

いつの間にか瑠璃も彼女の左腕に抱き着いていた。


「遊ぼー!

晴香お姉ちゃん!!」

「缶けりしよーよ!」


「はいはい分かったから、もう引っ張るなって」


口々にねだったりする彼等に晴香は少し困ったように、だが楽しそうにそう返している。



(へぇ……)


そんな光景を見て思わず口元を緩める駿。


満面の笑みで晴香に抱き着いたり、話しかけたりする子供達。

頭を撫でてあげたり、頬をつついてあげたりして返す晴香。


見てるだけでこちらまで幸せになるような、そんな微笑ましい光景だった。



「あ、もう一人誰かいるよ?」

「ホントだ!

お兄ちゃん誰?」


と、子供達は駿の存在に気付いたようで次々と彼の方に顔を向け始める。


「え、ああ……

俺は……」


「ひょっとして晴香お姉ちゃんのカレシ?」


「ぶっ!?」


ニヤリと笑って尋ねる男の子に思わず吹き出してしまう駿。


「うーん、当たらずとも遠からずって所ね。

煮え切らない二人って感じかな」


「子供に嘘を教えるなっ!!

かすってもいねーだろ!?」


「じゃあ友人未満恋人以上?」


「ややこし過ぎるわ!!

それ凄く危ない関係だから!!」


「強いて言うならご主人様とペットの関係ね」


「どこの店の話!?」


そう言って悪戯っぽく笑う彼女に駿は必死でツッコミをいれる。

意味は分かってないと思うが、子供達はそのテンポの良いやり取りにクスクスと笑い出していた。


「冗談冗談。

彼は私のクラスメートの月ノ宮駿君」


「……最初からそう言え」


それはさておき、晴香は改めて彼に手を向けて紹介してくれた。


「正妻は妹の静ちゃんで、私は愛人一号って所」


「やめい!!

正妻なんていねぇ、つーか一号ってなんだよ!?」


「ミヤミヤって、何かいっぱいフラグ建てそうじゃない?」


「俺をどこぞのギャルゲーな主人公に仕立てあげるな……」


単なる紹介には留まらなかったが。


「晴香お姉ちゃん、セイサイって何?」

「アイジンって?」


「ああ、聞かなくていい!!

皆にはまだ早いから!!」


口々に尋ね始める子供達を慌てて止めると、彼は晴香の耳元に口を寄せる。


(おいぃ!!

無垢な少年少女達に何を言ってんだお前は!!)


(もう、冗談だってば。

すぐに本気になるんだからミヤミヤは)


(中身を選べよ!)


(気にしない気にしない。

分かっててやってるから)


(………)


晴香は確信犯だった。



「ね、お姉ちゃん!

早く缶けりやろー」

「そーそー!

缶けり缶けり!」


瑠璃を始め、子供達は晴香の袖を引っ張って口々にそう言い始めた。


「はいはい分かった。

じゃあ外履きになって、空き缶持っておいで」


「「「わーい!!」」」


晴香がそう言うと子供達はそれは嬉しそうに、一斉に学童教室に戻っていく。


「元気だな〜」


「あはは、子供はそれが一番じゃない?」


駿の言葉に彼女はクスリと微笑んでみせた。

そして駆けていくその後ろ姿


「皆に大人気なんだな」


「妹が一年生の時からお迎えで学童の子達とはよく会ってたから」


そう言う晴香だが、それだけでは無いと彼は思う。

彼女は本当に子供達が大好きなんだろう、彼女の表情や言葉の様子、を見れば一目瞭然だ。


だから子供達は彼女を慕って集まってくるのだろう。


(なるほど、な……)


そしてそれは、天城晴香という少女の初めて見る一面だった。



「持ってきたよー!!」


すぐに子供達は空き缶を持って戻ってきた。

ちゃんと上履きから靴に履き替えて。


瑠璃を含めた女の子四人、男の子四人の計八人は晴香の前に集まった。


「じゃあ、ミヤミヤにも缶けりに参加して貰おっか」


「え?俺?」


晴香は隣の駿にいきなりそう話を振ってみせた。


「当然!

ミヤミヤは既に参加決定だよ!」


「「「けってーい!!」」」


晴香に加えて遊ぶ相手が増えたと喜ぶ子供の声を裏切れる筈も無く……


「分かったよ。

久々にやるかぁ、缶けり!」


参加を決めたのだった。


「じゃあミヤミヤが鬼ね」


「決めんの早っ!?」


因みに鬼も一秒で決定。



「皆逃げろ〜」

「「「わー!!」」」


そんな訳で、駿は日曜日の日も傾いてきた校庭で学童の子供達と缶けりをしていったのだった。





因みに、最近はやけに体力もある上やたらすばしっこく鬼はかなり大変で疲れたという。

晴香曰く『私が鍛えた子達だから当然』だそうだ。




そして夜は夜で……


「勉強ですよ、兄さん」


「あ………」


静としっかりお勉強をさせられたので、意外と有意義な日曜日を過ごせたのかもしれない。







「今回は晴香の話だったな。実に微笑ましい話だった」


悠一

「他人が知らない一面というのは、誰しも持っていますからね」


「晴香が何故毎回妹を迎えに行っているのか、妹が何故学童に入っているのかはこれから明らかになるとの事だ」


悠一

「それが晴香さんのエピソードにも関係していくんですね」


「では、次回予告といくか」


悠一

「はい、次回はまた学校ですね。前回出た姉弟が再び登場です」


「何でも近々また転校生が来るとかいう話もあるらしい」


悠一

「賑やかな学園生活になりそうですね」


「そうだな。

それと、今回は晴香のプロフィールを簡単に書いたそうなので紹介したいと思う」




 

 

天城(あまぎ) 晴香(はるか)

 

【性別】

 女

【性格】

ポジティブ

【年齢】

15歳

【誕生日】

6月〜7月?

【星座】

 蟹座

【身長】

160cm

【スリーサイズ】

B88 W56 H83

【好き】

学校、あだ名で呼ぶ事、世話好き、賑やかな物・事、子供、

【得意】

料理、走る事、小さい子の世話、スキンシップ

【嫌い】

眠い授業、長くだらだらな話、

【苦手】

孤独、ノーリアクション


【備考】


メインヒロインの一人。


栗色の少し長めのショートカット、エメラルド色の大きな瞳。大きな胸が目を引くスタイルの良い美少女。


主人公が汐咲市で初めて出会った女の子で、他人でも困っていたら積極的に声をかける世話好きな性格。

基本的に明るく男女の区別なく接するタイプなので男女共々から人気がある。


下に小学三年生の妹がおり、学童保育に入っている彼女のお迎えを毎回している。また子供が好きで、学童の子供達からも慕われてよく一緒に遊んでいる。





 



「しかし、相良と一緒だと後書きも脱線せずにスムーズに進むな。実に良いことだ」


悠一

「いつもは脱線要員がいらっしゃいますからね。

特に小さな会長とか」


もみじ

「ちっさいゆーな!!」


悠一

「おっと、また脱線してはきりがありません。

僕はこれにて失礼」


もみじ

「どーゆう意味よー!!

待ちなさい悠君!」




次回もよろしくお願いします!!




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