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第19話 姉弟事情と兄妹事情



 

今回は朱月姉弟の事情にほんの少しだけ触れる姉弟事情と、月ノ宮家の人物が少しだけ分かる兄妹事情のお話です。




 


土曜日 午前12時40分


ショッピングモール入口出前。


 

中々ややこしい出会い方をした月ノ宮兄妹と朱月姉弟は順を追ってお互いの事情を説明し合っていた。


「そっか、姉さんを助けてくれたんだな。

ありがとう駿」


「いやいや、寧ろ俺は助けて貰った方だからな。

それに礼を言うのはこっちの方だよ。

静を助けてくれて本当にありがとう、新」


「偶々居合わせただけだよ、大した事じゃないから」


駿と新はお互いに手を差し出して握手をしあった。

新は姉を助けてくれた(といっても助けたかどうかは微妙だが)事に、駿は妹を悪い虫から守ってくれた事に本当に感謝する。



「あの、兄さんがお世話になりました。ありがとうございます」


「いえ、気にしないで下さい。静ちゃんも怪我とかはありませんか?」


「はい、お陰様で」


静は丁寧にお礼を言うと、湊は大丈夫だと笑ってみせてくれた。



ここまでの大体の経緯を説明し終えると、四人は改めて向かい合う。


「それにしても、偶然も偶然だな。

兄妹と姉弟がそれぞれ別々の組み合わせで出会うなんて」


「そうですね、まるで映画みたいですよね」

新は可笑しそうに笑って、湊はクスクスと微笑んでみせた。


確かに同じタイミングで兄妹と姉弟がこんな形で出会うのはかなりの偶然だといえる。


「二人の制服、それ汐咲学園のだよな?」


「ああ、そうだよ。

俺は高等部一年、んで静は中等部三年だ」


そういえば、と気付いたように新が尋ねると駿は自分と妹に手を向けてみせた。


「そっか。

実は俺達も汐咲の学生なんだよ。俺も姉さんも高等部一年だ」


「ええ、双子ですから」


「え、そうだったのか?」


これまた偶然、彼等も同じく汐咲学園の同じ学年らしい。しかも双子ときた。


「でも、俺は駿を見た事ないな……」


「ああ、俺達先週この街に越してきたんだよ。

だから、月曜日からの転校生だったんだ」


「あ、転校生だったのか。

それは道理で」


「月曜日からなら、私達は知らない筈ですね」


彼の言葉に新と湊は納得したように顔を見合わせて頷き合った。


「因みに、何組に転校してきたんだ?」


「A組だよ」


「「え?」」


駿の言葉に二人は少し驚いた声をあげる。

因みに洒落ではない、念のため。


「俺達もA組なんだが……」


「偶然に偶然ですね」


今度は駿が驚く番だった。

何と二人は駿と同じクラスだというのだ。

しかし彼は二人を教室内で見た事は無いのだ。



(って、そういえば……)


そこでふと、彼は午前中の晴香と紫との会話を思い出した。



“何であの二つの席、空いてるんだ?”


“あ、ミナミナとあっ君の席?”


“あそこは朱月姉弟の席だな”



(朱月朱月……って)


ハッと顔を新と湊に向ける。

二人の名字は朱月。しかも姉弟。しかもA組。

という事は……


(なるほど……この二人があの空席の……)


月曜日より一足早く、駿は空席だった二人のクラスメートに出会ったのだった。




 




 

第19話 姉弟事情と兄妹事情

 




 




「うーん、やっぱ昼間でも人が沢山いるんだな」


「街で唯一のショッピングモールだからね」


ショッピングモール内。

二階に上がるエスカレーターに、周りをキョロキョロと見回す駿と新は乗っていた。


月ノ宮兄妹と朱月姉弟。

こんな出会い方をしたのも何かの縁と言う事で、お互い別々な組み合わせでモールを回ってみる事にしたのだ。


駿と新、静と湊の男女に別れて暫く回って、その後でフードコートで少し遅めなお昼を一緒に取ろうと待ち合わせをするという事に。


「それにモールって朝から混み合うものだから。特に土日はさ」


「そんなもんなのか?」


新は顔を向けてそう言うがいまいち実感が湧かないのか首を傾げる駿。


「普段はあまりショッピングモールとかには行かない?」


「うーん……そうだな。

買い物や家事は静に頼っちゃってる時が多いからな……」


あまりモールに来た事が無いのかと尋ねられた駿は考えるように吹き抜けた空を見上げる。


「彼女が普段家事を?

親御さんは?」


「え?ああ……」


しかし、その言葉を聞いた新は違う箇所に食い付いた。

ちょっと話題が脱線してしまうと思ったが、聞かれたので取り敢えず答える事に。


「うちは静と二人なんだよ。だから普段は静が家事をしてくれてるんだ。

まぁ俺も手伝えることはしてるけど、静は完璧にこなしちゃうからな」


「………」


「だから……って、どした?ボーッとして」


「あ、悪い……」


話をしていた駿は新が少しぼーっとしてしまっているのに気付いた。

覗き込むわように声をかけると、彼は慌てて


「そっちもなのかと思ってさ」


「そっちも?」


「俺も姉さんと二人で暮らしてるんだ」


と、開かれた口から出てきたのは意外な言葉。

彼もまた、姉弟の二人で生活しているのだという。


「だから、姉さんと家事は分担してるんだ。

姉さんは炊事やお風呂、俺は洗濯や掃除を、ね」


「そうだったのか……」


何故、彼等が二人で暮らしているのか。

ご両親はどうしたのか。

そういった事は今はまだ触れないでおく。


「なるほど、だからよくモールとかにも来るのか」


「俺達の家は商店街よりこっちの方が近いからな」


代わりに駿は先程の話に戻ってみせた。

だから普段のモールの様子をよく知っているのか、と。


二人は話しながら二階に並ぶお店をちょくちょくと覗いていく。


「そういやさ、新って何か部活に入ってるのか?」


「ん、ああ。

剣道部に入ってるよ」


「剣道部……

神代と同じか」


それを聞いた駿は自分の後ろの席の人物を思い浮かべる。今朝はまるで獲物を狙う目付きで脅され……いや、勧誘をされたりもしていた。


「神代を知っているのか。アイツはかなり強いぞ」


「やっぱりそうなんだ」


「ああ。俺も小さい頃からずっと剣道を叩き込まれてきたから一目で分かるよ。ありゃただの部活の実力じゃあ無いよな……」


「へぇ……」


新はうんうんと頷いてみせる。その隣で駿は……


(なるべく逆らわないようにしよう……)


と密かに心の中でそう思っていた。







一方、静と湊は一階のマーケットの方を回っていた。

今日の晩御飯の為の買い物で、ここでしていく事にしたのだ。


「そうなんですか。

湊先輩達もお二人で暮らしているんですね」


「ええ、分担して私は料理の方を担当してます。最初こそ大変でしたけど、もう慣れました」


二人は買い物カゴを下げてお互いの家の事を簡単に話している。

カゴには既に色々と食材が入っていて、食材売り場は大分回っていたようだ。


「静ちゃんは家事全般を一人でしているんですよね。凄いです」


「そんな事ないですよ。

ただ、兄さん一人に任せると危なっかしくて。

特に料理はダメダメなんですよ?『お米って洗剤でとぐのか?』なんて言い出すんですから」


「ふふ……

面白いですね」


少し困ったように言う静に湊はクスクスと可笑しそうに笑う。

勿論、それは昔の話で今は違うが。


「でも、好きでやっている事ですから」


「それは私もです」


家事を好きでやっている。それは彼女の表情を見れば一目瞭然で、湊も同意して首を縦に振ってみせた。


二人は大体の食材を見繕ったのか、レジのある場所に向かっていく。


「それにしても、新先輩も湊先輩もお強いんですね」


「いえ、私はそんな……」


静は不意にそう口を開いた。

新が強かったのは目の前で見ていたし、湊が大の男二人を投げ飛ばしたのは駿から聞いていたのだ。


「ただ、私は合氣道を小さい頃から教えて貰っていました」


「なるほど、それで……」


「でも、新は本当に強いと思います。

幼い頃からずっと剣道をたしなんできたんです」


湊は両手を併せると自分の事より新の事を嬉しそうに語る。


「それに、私は変な方達に絡まれる事も多かったのですが毎回のように助けてくれていましたから。私だけじゃ無くて学校でイジメられている子とかもいつも率先して助けていたり……」


「………」


確かに、湊はかなりの美少女だからよくナンパされていたのだろう。

それを毎回のように助けていれば喧嘩も強くなるのも納得だ。他にも人助けをしていたらしい。


嬉しそうに語る彼女を見て、静はふと思った事を口にする。


「湊先輩は新先輩の事が好きなんですね」


「はい、大好きですよ。

自慢の弟ですから」


照れも否定もなく、ただ素直に肯定。

湊ははっきりとそう口にしてみせた。


静はその真っ直ぐな答えを口に出来る彼女に凄いと思うと同時に、少しだけ羨ましくも思った。



「でも、あんな助けられ方をしたのは始めてでした」


「兄さんの事ですか?」


「はい。凄いですよね、話し合いで解決しようとするなんて……」


話題変わって、昼間の公園の話に。


「因みに、兄さんはどんな風に?」


「そうですね……」


静は詳しい事情は知らなかったので、尋ねると湊は頬に手を当てて思い出すように話をしてくれた。



「兄さん……それでは火に油を注いでいるだけですよ……」


「クス、確かにそうかもしれませんね」


一通り話を聞いた静は取り敢えずため息をつく。

当然だ、あの事態の中で宝くじを取り出すなど相手を馬鹿にしているとしか思えない。


二人はそんな風に会話を交わしながらレジで会計を済ませ、食材売り場を後にするのだった。




・・・・・・・




その後、時間は暫く経って。

三階のフードコートで、四人は集まって少し遅めの食事をした。


会話は主に学校のクラス事や、


「へぇ、じゃあ二人とも天城や神代とは知り合いなんだな」


「はい、仲良くして頂いてますよ」

「俺はクラスが違ったから、姉さんを通じてたまに会っていた感じだけどな」


行事についての話も少し聞いたりした。


「体育祭は高等部と中等部の縦割りでチームを6〜7つに分けるんですよ」


「それはかなりの規模になりそうですね」


「当然!

今年の騎馬戦は優勝しなきゃならねーな」


更にはこの街の話など。


「総合病院は学校からモール寄りの方にありますから、一度行ってみた方が良いと思いますよ?」


「そうですね、ありがとうございます」



因みに、駿の料理の事についても少々。


「駿、そんなに料理しないのか?」


「う……いや、カップラーメンは得意だぞ。

ノーマルタイプからカレー、シーフード、キムチなどバリエーションも豊富だ」


「「それは料理とは言いませんよ」」


やや呆れて尋ねる新に対し、苦し紛れに答える駿だが女子陣


「そういう新はどうなんだよ?」


「ある程度は出来るよ。普段は姉さんが作ってくれるけど」


反撃とばかりにそう返した駿だが、新はあっさりとそう答えた。

その口調から“ある程度”というのは結構出来るレベルだというのが分かるし、湊はそれ以上だという事になる。


(やはり時代は料理の出来る男を求めているのか……!!モテるには料理は最低条件なのか!!否、人間の価値はそれだけでは決まらない筈だ、なぁ皆!?」


「声に出てるぞ〜」

「兄さん……」


そんな馬鹿は放っておいて、新達は談笑しながらお昼を過ごしたのだった。




モールを出た後、駿達は朱月姉弟と別れて帰路についた。別れ際に『二人とも今度家に遊びに来てね』と湊からもお誘いを受けて。


帰宅中に駿は『手を繋いで帰ろう』等と宣ったが当然の事ながら赤くなった静に怒られた。

『だったら腕を絡めて帰ろう』と言うともっと怒られた。




・・・・・・・・




「ふわ〜ぁ」


夜。

月ノ宮家のリビングではソファーに体を預けていた駿が生欠伸を一つ。


晩御飯も食べ終えて片付けもした後で、暫くのほほんとする時間である。


「兄さん、お疲れですか?」


「だな、今日は色々あったからな」


テーブルに座っていた静がクスリと笑って尋ねると、彼はのんびり天井を見上げてみせる。


と、その時リビングにあった電話機が鳴った。


「あ、私が出ますね」


静は受話器を取ると電話に出る。

『はい、月ノ宮です』と言った後、少し驚いたような表情になるもすぐに笑顔になった。


一体誰からなのか、その疑問はすぐに解決する。

何故なら静が彼に受話器を持ってきたからだ。


「兄さん、お爺様からです」


「………」


それを聞いた途端、駿の表情を一気に嫌そうなものに変わった。

“ああ、厄介なものがやって来たぞと”


「さてと、俺は風呂でも入ってくるか」


「ダメですよ、もう居るって言っちゃいましたから」



あからさまに逃げようとする駿。だが静は受話器のスピーカーホンを押して、外部にも聞こえるようにして手渡した。


仕方なくそれを受け取ると渋々と受話器に出る。


「よォジジイ、まだくたばってなかったのか」


『お前こそまだしぶとく生き延びているようじゃのぅ……』


受話器の向こうから聞こえてきたのは老人の声。


『はぁしかし、静の最高に可愛くてキュートな声からお前さんの声を聞くと瞬時に萎え萎えじゃのぅ』


「それはこっちのセリフなんだよクソジジイ。

つーか、だったら俺に代わんなよ」


聞こえてくるため息に青筋を浮かべる駿。

テーブルの片付けをしている静はそのやり取りを聞いてクスクスと可笑しそうに笑っている。


『いや、今回はお前に聞いておかねばならん事があるからの』


「あん?」


『新生活が始まって一週間、調子だどうじゃ?』


「問題ねーよ。二人で何とかやってる」


『違うわぁ!!』


答えた駿に受話器越しから怒鳴るような声。

思わず彼は耳から電話を離す。


「何なんだよ!?」


『お前が静と二人きりの生活になって、静にムラムラと欲情して手を出したりしてないかという事じゃ!!』


「んな訳ねーだろっ!!」


受話器越しに怒鳴り合う二人。

それを聞いた静は真っ赤になって俯いてしまっている。


『静はワシの宝じゃ!!世界一可愛い、それはもう目に入れても痛くない程究極に可愛い孫なんじゃ!!

いくら孫のお前といえど絶対に渡す訳にはいかんのじゃー!!』


「誰がんな話をしてんだよ!!いい加減にしろこの孫馬鹿!!」


どうやら受話器の向こうの声の主は二人の祖父のようだ。

しかもかなりの孫馬鹿のようだ。とはいえ妹馬鹿に言われたくもないが。


『とにかく!!

二人きりなのを良いことに静にあんな事やこんな事をしては』


「ないに決まってんだろ……あらぬ妄想に突っ走るなエロジジイ」


ため息をついてその声を遮る駿。

静は顔を赤らめたまま慌てて台所に行ってしまっていた。


『はぁ……

やはり静はこっちに置いておくべきじゃった。

お前だけを送り出せば良かったものを……

なのに静は『兄さんが心配だから』ってついていく事になりワシの元から……』


「はいはい、んな事を聞く為に電話かけてきたんならもう切るぞ。じゃあな」


『あぁ、待て待て馬鹿孫!!』


「あん?」


受話器の切るボタンを押そうとしたが、慌てて向こう側から呼び止められる。


『真剣な話があるからわざわざお前に電話をしてきたのじゃ』


「………何だよ?」


先程とは違っていきなり深刻な声色になる。

駿も思わず表情をしかめる。


『駿よ……』


「………」


低く声、真剣な様子は電話越しにも伝わってくる。

そして……



『アイちゃんのキュンキュンラジオの投稿ネーム、

『孤高のダンディー侍源ちゃん』か『背中で美学を語る源ちゃん』のどちらが良いと思う?』


「知るかァァァァァァァァ!!」


思い切りぶち切った。


「はぁ………」


「に、兄さん?大丈夫ですか?」


「いや、本当に疲れた……」


受話器を片手に盛大にため息をつく駿。

静も心配そうに駆け寄ってくる。



と、再び受話器が鳴り響いた。画面を見ると先程と同じ番号。


無視するとずっとかかってきそうなので仕方なく通話ボタンを押す。


「はい、月ノ宮で」


駿が出た瞬間、ブツっと電話は切られた。


「………」


彼は受話器を耳に当てて暫し沈黙。

と、またトゥルルルと受話器が鳴る。


「はい、月ノ」


ブツリ、今度は先程より早いタイミングで切られた。


「………」


口元がひきつっている駿だが、更にまた受話器が鳴り響いた。


彼は物凄い速度で通話ボタンを押すと……


「だあぁ!!

いい加減にしろよジジイ!!

いい年して小学生みたいな事してんじゃねぇ!!」


取り敢えずキレた。


しかし、返ってきた声は……


『残念!

お父様じゃなくて、私でした〜』


「か、義母さん……」


全然違う、綺麗な女性の声だった。

それを聞いた駿は思わずガクリと肩を落とす。



『ふふ、見事にひっかかったわね〜駿』


「親子揃って何やってるんだよ……」


クスクスとまるで子供のように笑う声に深々と今日何度目かのため息をつく駿。


彼の言葉から察するに彼女は二人の母親のようだ。

声だけなら20代と言われても全く違和感が無いほど若々しい。


『あらあら、せっかく心配して電話をかけてあげたのに。

私じゃ貴方を満足させられないのか・し・ら?』


「妙な言い回しは止めて下さいホント」


『ふふ、相変わらずウブなのね〜』


やけに色っぽい声を出してきたので、駿はふるふると首を振って返した。


静もその言葉を苦笑混じりで聞いている。



『それより、ちゃんと生活出来てる?

困った事はない?』


「ああ、まぁ何とか。

静が居てくれてるから」


『あらあら、ちゃんと新婚生活を送ってるのね〜

お母さん嬉しいわ』


「もう一切ツッコまないからな」


楽しそうに笑う声に駿はそう返した。


『まぁ、元気そうで良かったわ。

あ、静にも替わってもらえるかしら?』


「ああ、わかったよ」


『あと、スピーカーホンは切ってね。女同士の会話は男の子は聞いちゃダメよ?』


「はぁ」


何故スピーカーホンが点いている事を知っているんだろうか。

そんな疑問は置いておいて、駿は指示通りスピーカーを切り静に受話器を手渡した。


「んじゃ、俺は風呂にでも入ってくるから」


「あ、はい」


ここに居るのもなんなので、彼はそう言ってリビングを出ていった。


受話器を受け取った彼女は電話に出る。


『もしもし、静?

元気にしてる?』


「はい、お母さん。

お陰様で」


聞こえてきた母親の声に静は笑顔でそう返した。


二人は暫く他愛のない会話をかわす。

この街のこと、学校のこと、生活のこと。


上手くいっているという話を聞くと、母は電話越しにも嬉しそうに返してくれていた。



『ところで、上手くやってる?』


「え?」


さて、十分くらい話をした頃か。

不意にそんな事を尋ねられたので、静は首を傾げた。


『もう、駿との事に決まってるじゃない。

一つ屋根の下に二人きりなのよ?

何か進展は無かったの?』


「な、何を言ってるんですか……!!」


『あらあら、その反応はまだまだみたいね〜

もっと積極的にならないとダメよ?恋は神速を尊ぶんだから』


「そんなんじゃありません!!」


いきなりの発言にみるみる顔を赤らめてふるふるとかぶりふる静。


『だったら今日から早速実践ね!

まずは今日の夜、駿と一緒の布団で寝ましょう。

向こうからきてくれるように無防備さを演出するのがポイントよ。

静は私と同じで胸はあまり大きくないから、しっかりと寄せて……』


「な、ななな……!!」


『大丈夫。

私もこれでお父さんと上手くいったから!

初めての夜は女の子にとってとても大切なものだから、頑張るのよ!』


「ーーーっ!!」


この後、やたらテンションの高い母親にアレコレと引っ張られ終始真っ赤になり声にならない静であった。


というか、学生、しかも兄妹に何という事を勧めているのだろうか。

かなり変わった女性のようだ。




因みに……



「あ、静。

義母さん何だって?」


お風呂から上がり着替えた駿がリビングにいた静にそう尋ねると……


「な、何でもありません……!!」


「あれ?

どうしたんだ静?顔が赤い」


「知りません!!

兄さんのばか」


「ええ!?」


何故か怒られた駿であった。






駿

「もう嫌だ……

ジジイの相手は丸三日分のエネルギーを使う……」


「お母さんも元気そうで安心しました」


駿

「ところで、最後に義母さんと何を話してたんだ?」


「///」←ふるふると必死で首を振る


駿

「まぁ、言いたくなかったら良いけど……」


「もしお母さんに聞いたら……本気で凍らせますからっ!!///」←大量の御札を一気に構える


駿

「し、静さん!?

目がマジです!!目が!!」




「で、では……

次回予告にいします」


駿

(こ、怖かった……)


「次回は日曜日、あるキャラクターのお話だそうです。いずれやるキャラクターストーリーに関係していく部分になると思います」


駿

「んじゃ、次回もよろしくお願いします」






「兄さん、絶対に聞いてはダメですからね……///」


駿

「は、はい……肝に銘じておきます。

だからその御札をしまって……」



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