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第18話 ややこしい出会い方ほど印象に残りやすいものである



今回は桐生乱桐さんから投稿されたオリキャラが登場します。


新しいキャラがポンポンと登場している現状ですが、それももう落ち着くと思います。


駿達の最初の一週間は汐咲学園のキャラクター達との出会いの話ですから、新キャラは次々と出てきていました。


ですがこの一週間が終わったら落ち着くので、よろしくお願いします。


因みに今回は週末の土曜日です。

 

 

 

土曜日といえば学校は休み、というイメージが強いがそれは公立の学校がほとんどだろう。

私立の学校は土曜日も授業がある所が多い。


ここ、汐咲学園は私立では無いが土曜日も授業がある学校である。

授業は午前中のみで、中等部は二時間目まで、高等部は三時間目までだ。



「はい、今日はここまで。」


帰りのHR終了のチャイムが、校舎内に一年A組の教室に鳴り響く。

紗香はパタリとクラス名簿を閉じると、室内を見回してそう口を開いた。



「よーし、放課後だー!」


グッと両手を伸ばして解放感を口に出して感じる相也。

彼はそのままくるりと振り返って後ろの悠一と駿に顔を向けた。


「何かさ、土曜日ってワクワクするよな。午前中で授業終わるしさ、放課後バラ色って感じじゃん?」


「ま、確かにな」


「バラ色かどうかは本人次第だとは思いますけどね」


駿は鞄を机に置いて軽く頷いたのに対し、悠一は曖昧に肩を竦めてみせた。



「あれ?

ミヤミヤ、この後用事?」


「ん、ああ」


学生鞄を左手で担いで立ち上がった彼に、隣の席の晴香がそう尋ねる。


「ちょっとこの後静と待ち合わせしてんだ。

ショッピングモールでな」


「なるほど〜、静ちゃんとデートなんだね〜」


「いや違うからな」


この後彼は静とショッピングモールに用事があるらしい。

ニヤニヤと口を開いてそう言う晴香に駿は呆れたように首を振った。


上述したように土曜日は中等部と高等部の授業が終わる時間が違う。

中等部の方が一時間早く終わるので、二人はショッピングモールで待ち合わせという事にしていたのだ。



「駿!!

お前何て羨ましいヤローなんだよ!!」


「おお!?」


と、いきなり立ち上がった相也は彼の両肩にガッシリと手を置いた。


「静ちゃんと放課後にショッピングデートなんておまっ!!」


「いや、だから違うって。ただの買い物だろ」


「嘘つけ!!

買い物と称してイチャイチャしたり、買い物が終わったら人気の無い所であんな事やこんな事やそんな事を……」


「する訳ねーだろっ!!」


妄想を突っ走る相也に当たり前の叫びを返す駿。

自然と周りの視線を集めてしまう。


「はいはい、相也はこっちですよ」


「ああ!!そんな殺生な!!」


見かねた悠一が首根っこを掴み彼を教室の外に引きずっていった。

見慣れた光景なのか教室に残っている生徒達は苦笑いに。


「全く、あの馬鹿にも困った者だな」


そんな様子を眺めながら紫は呆れたように立ち上がる。


「神代はこの後部活か?」


「ああ、お昼を食べたらな」


駿が尋ねると紫はこくりと頷いて鞄を手にとった。


「ところで月ノ宮」


「え?」


かと思うと彼はガシッと両肩を掴まれる。

先程の相也のように。


「剣道部に入らないか?」


「………」


部活への勧誘だった。


「いや、何で俺?」


「お前は身長もあるし運動能力もありそうだ。

きっと良い選手になると、私は思う」


「………」


そう言う紫の瞳は真剣だった。真剣どころか、まるで獲物を狙うような鋭い目付きだ。

端から見ると脅されているともとれるこの状況。


「ま、まぁ……考えておくよ」


「うん、わかった」


少し怖くなった駿は何とかそれだけ言ってみせる。

紫もそれ以上追及するつもりは無かったらしく、両肩から手を離した。


「あ、ゆかりん。

お昼一緒に食べよー」


「む、そうだな。なら学食にいくか」


教卓に行っていた晴香が戻ってきてそう言った。

駿も学校から出るので途中まで三人で一緒に行く事に。


「あ、そういや気になってたんだけどさ」


「「?」」


教室を出ようと入口の前まで来た時、不意に駿が口を開いた。


「このクラスってあの辺に空いてる席が二つあるよな?あれって何なんだ」


駿が転校してきて以来、一年A組には授業中にいつも空いてる席が二つある。


それは扉付近の席で六日間も続けて空いているので気になったのだ。


「あ、ミナミナとあっ君の席?」


「?」


ミナミナとあっ君。

どうやらそれはクラスの人間の席のようだった。


「ああ、そこの席は朱月姉弟の席だったな」


「朱月?」


紫も頷いて言うが駿ははてと首を傾げる。

朱月という名字に聞き覚えは無かった。


「あ、二人はね今はちょっと旅行中でこの街には居ないんだ。ちょうどミヤミヤが来る前の日かに出掛けたのかな?

とにかく来週の月曜日には帰ってくるって言ってたから、その時に会えると思うよ」


「知り合いなのか?」


「私は中等部三年の時に同じクラスだったよ。ゆかりんもね」


空席の人物は来週の月曜日に戻ってくるという。

晴香や紫の知り合いらしい。


 


「じゃ、また月曜にな」


「ああ、また学校で」


下駄箱の前まで三人は別れる事に。

駿はそのまま外へ、縁と晴香は学食へ。


「じゃーねーミヤミヤ!

デート頑張ってね〜」


「妹を泣かすなよ」


「だから違ぇって……」




 




 

第18話 ややこしい出会い方ほど印象に残りやすいものである

 




 




「さて………」


学校を出て歩く事十数分。前に皆で行ったと思われる道を朧気に辿っていった駿は……


「ここは何処だ?」


早速迷子になっていた。


そりゃそうだ。

一度行った事のある道とはいえ、まだ越してきて間もない街で何となく歩いていったら迷子になるに決まっている。


「っかしーなぁ。

確かあの曲がり角を曲がったら、開けた場所に出た筈なんだが……」


駿は全く見知らぬ道路と周りにたつ建物を見回しながら呟く。



ここで正しい選択肢は恐らく地元の人間に道を尋ねる事だろう。

無闇に進めば更に迷う事は必至。

だというのに……


「うーん……確かモールは東側にあったし、向こうに進んでみっか」


彼の選択は後者だった。

すいすいと何の根拠も無いまま、彼は足を進めていく。

そんな訳で……



「あれ?公園?」


案の定更に迷ってしまった。


彼は見た事もない公園に辿り着く。

中々広い公園で豊かな木々が周りを囲うように沢山生えており、広場には小さな噴水と周りにはベンチがいくつもあった。


「やっぱもうちょっと右だったかな……」


とはいえ今はここには何の用事も無い訳で、彼は踵を返して来た道を戻ろうと……


「良いじゃねーかよぉ。

俺達と一緒に行こーぜぇ」


「?」


後ろからダミ声が響いてきたので彼は思わず足を止めて振り返った。

見ると広場の端に三人の男性が立っており、それに囲まれるように一人の女の子の姿があった。


男性三人はだらしなくズボンを引きずっており、ダボダボのセンスの無い服。

金髪にピアスと典型的なならず者だ。歳は20代前半くらい。


一方、囲まれているのは栗色の髪をポニーテールにしており、白いカーディガンに薄桃色のスカートを身に付けている。

胸もありスラリと伸びる綺麗な足が特徴的な女の子だった。



(オイオイ……真っ昼間からどんだけベタな展開だよ……)


それを見た駿は内心でため息を一つ。


その女の子は相当な美少女で、男三人にナンパされて迫られているのは明らかだ。

それに関わったら間違いなく厄介な事になりそうである。



しかし、目撃してしまった以上このまま知らんぷりをする訳にもいかない。


(仕方ない……某有名なツンツン頭の主人公風に然り気無くこのピンチを収拾しよう)


彼はやや小走りで男達のいる場所に向かうと……


「悪い悪い、待たせたかな?」


「「「あん?」」」


片手を上げて囲まれている女の子にそう声をかけた。


男三人はギロリと振り返り、駿を睨みつける。


「何だてめえは?」


「えっと、彼女と待ち合わせしてた者です」


男の言葉に駿はなるべく丁寧に返した。

女の子は少し驚いたように彼を見ている。


「何、彼氏か何か?」

「ヒーロー気取って助けにきた訳ぇ?」


いかにも軽そうな二人の金髪が顔を突き出して駿に思い切りガンを飛ばす。


「いや、友達ですよ。

ちょっと今日は急ぎの用があるので、これで……

さ、早く行こう。皆待ってるから」




駿は顔の前で手を振ると、彼女にそう言ってその場から連れ出そうとする。


「待ちな」


「………」


しかし、それを許してくれる程男達も甘くはない。

真ん中の金髪が低いダミ声で駿を呼び止めた。


「友達だか何だか知らねーがよぉ、てめえは俺達の邪魔をしたんだ。

彼女を連れていきたかったらそれなりの形で示せ」


「えーと、形というと」


「金だ、金。

額によっちゃあ見逃してやらねー事も無いぜ」


駿が振り返って尋ねるとずはりそう言ってきた。

金を寄越せば見逃してやると。


だが、こういう輩に素直に金を渡しても恐らく見逃してくれる事は無いだろう。最悪な結果が待っているのがオチだ。



「いや〜、残念な事に俺もかなり金欠で……寧ろこっちが欲しいみたいな……」


それに対して、彼はやや苦笑混じりに頭を掻く。


「あ、でも良いものがあった」


「?」


と、すぐに何かを思い出したように声を上げると制服のポケットから一枚の紙切れを取り出した。


「これ、宝くじ。

昨日商店街のおまけで貰ったんですけど、一等なんと一億円!!

一気に億万長者の道が切り開けますよ!!」


「おー!!

中々良いもん持ってんじゃねーか。

これなら見逃さずにはいられねーな!」


「はは、ではこれで……」


駿は女の子を連れてその場を脱出しようと……


「なんて言う訳ねーだろいがぁぁぁ!!」


(ですよねー)


金髪の厳つい男に思い切り胸ぐらを掴まれた。

そして耳元で怒鳴り声をあげられる。

しかし意外とノリが良い男のようだった。


「てめえ!!

ふざけるのも大概にしろよコラァ!!」


「当たってるかもしれないから怒るのはそれを確認してからでも遅くは……」


「うるせぇ!!

てめえはボコさねーと気が済まねぇ!!」


落ち着かせようとする駿の言葉も虚しく、金髪は思い切り拳を振り上げる。



「!?」


が、その拳が振るわれる事は無かった。

何故なら、駿を掴んでいた男が宙に舞ったからだ。


「ぐえ!?」


そして男は思い切り地面に叩きつけられた。

かなり生々しい音がして、金髪は一瞬で気を失う。


「………え?」


いきなりの出来事に駿はただただ呆然。


「………」


しかしよく見ると、囲まれていた女の子が男の腕を取っていたのだ。

これは一体どういう事なのか。


「な、おい!?

大丈夫か!?」


倒された金髪の仲間の一人が駆け寄ろうとするが、


「!?」


その男の腕を女の子はいつの間にか掴んでおり、思い切り捻りあげてくるりと綺麗に一回転。


「ぎゃあ!?」


宙に舞った男は頭から思い切り地面に激突。

失神してしまう。


「まだ、やりますか?」


「ひ、ひぃ!?」


そして女の子はもう一人いた金髪に目を向ける。


「す、すみませんでしたーーー!!」


金髪は情けない叫び声を上げると、慌てて失神した二人の男を引きずって一目散にその場から走っていってしまった。


「……ふぅ」


「………」


パンパンと手を叩いて息をつく目の前の少女に彼はただただ唖然。


信じ難い事に、駿に殴りかかろうとした男は彼女に投げ飛ばされたのだ。

もう一人の男も然りだ。


技の形を見る限り護身術の類いのようだが、だとしても相当なものでないとここまでには至らない。


技の軽やかさ、華麗さに加えてこんなに華奢な美少女がそれをやってのける事に未だに驚きを隠せない駿。



「あの……助かりました、ありがとうございます」


「へ?」


すると、彼女は彼の方に顔を向けてお礼をいってきた。


「いやいや、どちらかというと助けて貰ったのは俺の方なんだけど……」


「そんな事ありません」


確かに前半は彼が助けようとしていたが、終わってみれば男達を追い払っていたのは彼女の方だ。

明らかに助けられている。


しかし彼女はふるふると首を振ってみせた。


「相手は三人でしたから、あのままでは分が悪すぎました。

貴方が注意を反らしてくれて本当に助かりました」


「はぁ……」


要するに囮役として役に立ったという事だ。


助けに入っておいて逆に助けられ、あまつさえ役割は囮という。

何というか、情けないの一言に尽きる。


「ま、まぁ……

役に立てたのなら良かったよ」


「はい」


何となく素直には喜べない状況だが彼女が笑顔なので無理矢理納得しておいた。


「あ、何かお礼を……」


「いや、いいよ。

というか俺は急いでるんでこれで」


駿は軽く顔の前で手を振ると、背を向けて歩き始める。

モールの入口では静がもう待っているだろう、急いで向かわなくては。


「あ……」


「?」


しかし、すぐに立ち止まって彼は振り返った。


「申し訳ないんだけど……ショッピングモールまでの道、教えてくれないか?」



絶賛迷子中だった事を思い出した。

今、ここが何処なのかも彼は知らない。


「あ、分かりました。

でしたら案内しますね」


「え、そこまでしてもらわなくても。

ただ道を教えてくれれば……」


「大丈夫です、実は私もモールに向かう所でしたから」


彼女が直々に案内してくれるという。

ちょうど彼女もショッピングモールに行く所だったらしいのだ。


「それは助かるよ。

俺は月ノ宮駿、アンタは?」


朱月(あかつき)(みなと)と言います。

よろしくお願いしますね、駿君」


という訳で、締まらない上に道すら分からないという主人公は初めて会った女の子に道案内をしてもらう事になったのだった。









駿が公園で一悶着しているのと同じ時刻……


(兄さん、遅いですね……)


制服姿の静はショッピングモールの入口の側で両手で鞄を持って立っていた。

駿と待ち合わせしたので、待っているのだ。


(何かあったのでしょうか……)


不安そうに空を仰ぐ。

今日も天気は快晴だ。青い空に沢山の白い雲がもこもこと浮かんでいる。



「ねぇねぇ、君」


「?」


と、いきなり聞こえてきた声に彼女は顔を戻した。


「うわー!!やべっ、超可愛いー!」

「久々の大当たりじゃん、これ!!」

「ひゅ〜、こりゃ楽しみだ」


彼女の側に茶髪で花ピアスや目の近くにピアスをした四人の男が近づいてきていた。

ズボンは切り刻まれてダボダボ、趣味の悪いドクロのプリントのシャツをだらしなく着た男達だ。


「ねぇねぇ、今から俺達とどっかに遊びにいかねぇ?」


「楽しい事とかいっぱい教えてあげるよー」


「え?え?」


四人は馴れ馴れしく静の両側に寄っていき囲む。

彼女は困惑したようにキョロキョロと周りを見回すが近くには人影が無い。


「あ、あの……

私、待ち合わせをしているので……」


「えー、良いじゃん。

俺達ともっと楽しい事しよーぜ〜」


断ろうとする静だったが、男の一人がそう言って彼女の手を掴んできた。


「あ……」


「うわ、反応可愛いー。

もっと色々なトコ触ってあげようか」

「馬鹿、まだ早ぇよ」ニヤニヤとにやけながら無理矢理静を連れていこうと後ろに回り込む男二人。


完全に囲まれてしまったと思いきや……


「はいはい、そこまで〜」


「「「「?」」」」


また違った声が聞こえてきた。四人は振り向くと、そこには一人の青年が立っていた。


綺麗な黒髪が首の真ん中くらいまで伸びていて、身長はかなり高い。

スラッとした体型だが体つきはよく引き締まっている。

整った顔立ちに漆黒の瞳がよく似合う青年だ。


「何だてめえ……」


「んな事はどうでもいいよ」


男の一人がガンを飛ばして青年の前に立つが、青年は軽く首を振ってみせた。


「それより、寄って集って女の子囲むなっての。

彼女嫌がってるだろ」


「はぁ、何お前?

ヒーロー気取り?」

「うぜー、帰れよ」


二人、三人と男は青年を睨み付けながら前に立ちはだかる。


「てめえ、大人しく前から消えろ。

痛い目みたくなかったらな」


「悪いがそういう訳にもいかないんだ。こういう性分でね」


男はジロッと睨みを強くきかせるが、青年は全く気にしたふうなくそう返してみせる。


「どんな状況か分かってんのお前、四人前にしてんだぜぇ?」

「ビビってるなら素直に言っちゃいなよー」


他の男達も野次をいれるが、


「たかが、四人だろ?」


青年はそれを一笑してみせた。


「てめえ……!!」

「痛い目みねーと分かんねーらしいなコラァ」


それを聞いた男達は怒りで顔を真っ赤にして、一気に青年に向かって駆けていく。


(あ、危ない……!!

私のせいで……)


静は慌てて青年の方に顔を向ける。

いくらなんでも大の男四人相手に一人はまずい。


そう思ったのだが……


「ぐはっ!!」

「ごばっ!!」


青年が一瞬で蹴りをくらわすと、一気に二人が吹き飛ばされていた。

彼等はそのまま背中から地面に叩きつけられる。


「このっ……!!」


慌てて男が手を伸ばすが、青年はサッとかわして懐に入る。


「よっと!!」


「ぐはっ!?」


そうして鳩尾に強力な一撃、そのまま男は崩れ落ちる。


(………凄い)


そのあまりの強さ、手際の良さに驚きを隠せない静。


「さて……まだ、やるか?」


「………」


青年は残った男ににじり寄ると、男は一歩、二歩と後退る。

そして……


「お、覚えてろよ!!」


やられ役に相応しい言葉を残してあっという間にかけていった。

倒れていた男達も次々と立ち上がりフラフラとそれに続いて逃げていく。


「根性の無い奴等だなぁ……」


そんな様子を眺めながら、青年は少し呆れたように呟く。



「あ、あの……」


「ん?」


すると、静が彼の側に寄っていった。


「助けて頂いて、ありがとうございました」


「ああ、大丈夫だったか?」


ペコリと頭を下げる静に青年は軽く笑ってみせてくれた。


「ご迷惑をおかけして本当にすみません。お怪我とかはありませんか?」


「いや、平気だよ。

慣れてるしな……」


心配そうに尋ねる彼女に青年は大丈夫だと返す。

しかし慣れているとはどういう事だろう。


「俺はここで人と待ち合わせてたんだ。

偶々居合わせられて良かったけど、あんまりぼんやりしてたらダメだと思うぞ?」


「あ、はい。すみません……」


青年はふぅと息をつくと、彼女の方に顔を向けた。


「ま、次からは気を付けてな。

俺は朱月(あかつき)(あらた)

よろしく」


「月ノ宮静です。

本当にありがとうございました」


二人はお互いに自己紹介をし合った。


「静〜」


「兄さん?」


ちょうどその時、駿の声が聞こえてきた。

静が振り向いた先から、駿ともう一人女の子、湊がやって来たのだ。



「あ、姉さん」


「?」


それを見た新も同じように声をあげる。


湊もそれに気付いたようで、嬉しそうに彼の元に駆け寄ってきた。


「新!

ごめんなさい、遅くなって」


「いや、良かったよ。

もう少し遅かったらこっちから探しにいこうと思っていたんだ」


どうやら、二人は知り合いのようだ。

会話からするにかなり親しい仲のようだが。



「悪い、遅くなったな」


「いえ、何事も無かったようで良かったです」


駿もすぐに静の元に駆け寄ってきた。

妹は兄が、兄は妹が何事も無かったようで安心したようだ。



「「「「ところで……」」」」


四人の声が一斉にハモる。

駿は新を、静は湊を、湊は静を、新は駿に顔を向けていた。


「「「「………」」」」


そして暫くの沈黙。

お互いがお互いに、全く事情が分からないので誰から話し始めて良いものか分かりかねているようだ。



とはいえ……


「あー、えっと俺は月ノ宮駿って言います。

隣の彼女は妹の静です」


「あ、はじめまして。月ノ宮静です」


ずっと黙っているのも難なので、もう一度駿は自己紹介をする事に。

静も再び頭を下げる。


「私は朱月湊です。

それで、隣の彼は私の弟の新です」


「朱月新です。

よろしくお願いします」


湊と新は何と姉弟だった。

彼女の紹介で新も軽く頭を下げる。



「「「「それで、えーと……」」」」


この後、四人はそれぞれお互いの事情を説明し始める事になるのだった。








という訳で、今回の新キャラは桐生乱桐様から投稿して頂いたオリキャラ、朱月新君と朱月湊ちゃんの登場でした。


「よろしくお願いします!」


「弟共々、よろしくお願いしますね」


はい、これからよろしくお願いします。

次回は二人と月ノ宮兄妹と色々会話をしたりする話になる予定です。


「しかし、ほぼ同時刻に二人が絡まれるとは……」


「凄い偶然ですね」


まぁ、それは小説だからということで。


しかし新君と駿は大違いだよね。

片や女の子を助けようとして逆に助けられるダメダメな駿と、格好良く絡まれる女の子を助ける新君。


全く、もう少し主人公としての自覚を持って欲しい。


駿

「オメーがそういう話にしたんだろ!?」


「おわ!?

どっから出てきたんだ?」

駿

「無論、地面から!!」


「何故自慢気!?」



まぁ、駿があの不良達に手をあげなかったのにはちゃんと理由があるのですが、それはいずれ分かると思います。


「では、次回もよろしくお願いします」




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