序 始まりの夜
はじめまして、伽藍と言います。
ずっと二次創作を書いていて今回の規制を機に、一次創作に移ってきた新参者です。
一次創作は初めてなので至らない点は多々あるかと思いますが、どうかよろしくお願い致します。
今回はプロローグです。
最初なのでかなり抽象的です。
では、始まります。
深夜。
決して冷え込む訳では無いが、それでも肌寒い風が吹く春先の季節。
日本のとある地方都市の中で海に面した綺麗な街があった。
一軒家やマンション等の住宅街が整然と街の各地に並び、ショッピングモールのような巨大な施設や海沿いに並ぶ長い商店街、かなり大きな学術施設等もあり目の前が海ということもあって爽やかな印象を受ける街。
そんな街の中、海沿いのとある一軒家では、深夜にも関わらず灯りが漏れていた。
白い屋根に一軒家にしてはかなり広く三階建ての建物だ。
光が漏れている窓の向こうには和室が広がっていて、男性と女性の大人二人と一人の小さな子供が畳みに座っていた。
男性は黒がかった紺色の単髪に勇ましい顔立ち、茶色い和服姿。
女性も同じく紺色の髪を腰の辺りまで伸ばした美しい女性だった。赤い着物を身に付けている。
「ふむ……海岸の砂浜に倒れていたのか」
「ええ。
どうやら何も覚えていないみたいなの。自分の事も、周りの事も」
男性が顎に手を当てて考えるように呟く男性に女性は頷くと隣に座る子供の頭を優しく撫でてあげた。
子供は五歳くらいの男の子でダボダボの白い服を引きずるように着ている。
「他に宛が全く無いみたいだし……
うちに置いてあげられないかしら?」
「しかし月ノ宮は特殊な力を持った家系。普通の家とは勝手が違うからな……
それに娘の“静”ももうじき三歳になるし、養子にするには本家にいるお父様に許しを貰わないと……」
男性は難しい表情で唸るが女性はゆっくりと首を振った。
「父の方には私から言っておきますから大丈夫です。それに……」
「?」
「あの娘はうちの家系でも秀でた力を持っていますから、何かと苦労も多いと思います。
そんな時にこの子かならが支えてくれそうな気がするんです。お兄さんとして」
そうして男の子の方を見ると再び微笑んでみせた。
「……そうか。
確かにそうかもしれないな」
その様子に男性もつい口元を緩めて微笑するが、すぐに首を振り表情を引き締めて腕を組んだ。
「しかしあの娘の側で支えるとなると、特殊な力が無いとはいえそれなりの強くならんとな……
本家のお父様に面倒をみて貰う必要がありそうだ」
「まぁまぁ、まだ気が早いですよ貴方……
まずはこの子の名前をどうしようか考えないと」
そう言ってまた女性の手は男の子の頭を撫でる。
と、その言葉に先程までずっと黙り込んでいた男の子が小さく口を開いた。
「………しゅん」
「「?」」
男性と女性は少しきょとんとして顔を見合わせた。
だがすぐに
「名前、覚えてるの……?」
「………」
男の子は少し伏し目がちになりながらもコクリと頷いてみせた。
「そう……
だったら決まりね」
女性は男性に目配せするとそっと男の子に手を差し出した。
「今日から私達は家族よ。だからあなたの名前は……」
これからよろしくお願い致します。