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俺だけスキルツリーが生えてるダンジョン学園  作者: ファンタスティック小説家


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19/32

第六感

「おい、目を覚ませ」


 肩を分厚い手の感触で揺り動かされ、俺はうっすらと目を開く。

 すぐ横を見やれば筋骨隆々なサングラスのマッチョがいた。


「ダビデ寮長……?」

「大丈夫か、赤谷ボーイ」

「ええ、多分……」


 適当な受け答えをしながら、俺はおでこをさすり、直前の記憶をたどる。

 透明人間の女風呂覗き野郎をぶっとばして……そして、志波姫にぶっ飛ばされたんだった。でも、どうして俺はこんなところに?


「寮の玄関を閉じようと思ったら、倒れているものだからびっくりしたぞ。赤谷ボーイ、ハードなトレーニングをするのは構わないが、せめて自分の部屋までは辿り着ける程度に体力を残して置け」


 言いながらダビデ寮長は怪物エナジーをずいっと差し出してくる。

 俺は寮長の温もりでぬるくなったそれを受け取り、部屋に戻った。

 ツリーキャットの姿も見当たらない。


 俺は悶々とした気分になりながら、ベッドに腰を下ろした。

 すぐに猛烈な眠気が襲ってきた。


 翌朝。

 学園は昨夜のニュースで沸き立っていた。


「女風呂覗いた生徒が謹慎だってさ。噂じゃ、裏で先生たちに締められるらしいぜ」


 女風呂を覗いた謎の変態。

 それが誰のことを示すのか、うーん、全く心当たりがないな。


 俺は心底ビクビクしながら、まだ自分が先生たちに囲まれて締められていない事実に疑問を抱きながら、放課後まで生き延びた。


「なんで俺は助かってるんだ……」


 俺は泳がされているのか、

 自白するチャンスを与えられているのか。

 ここで自白すれば刑が軽くなるのか。


 いろいろな考えが頭に浮んだ。

 生きた心地がしない気分で教室棟を出ようと昇降口へ。

 ローファーに履き替える黒髪の美少女が視界に入ってくる。

 俺は息を殺し、スッと物陰に隠れた。


「気配を消すのならもっと上手くやったら」


 志波姫は言いながらつま先をトントンっとして、こちらを一瞥する。


「……きょ、今日も訓練棟へいくのか」

「だったらなんだと言うの。ゲート前で待ち伏せしてまたスキルの実験でもするつもり」

「まさか! 人間相手に試したら危ない、そんなこともうしない」

「学習が進んでいるようで安心したわ」


 志波姫は話は終わりだとばかりさっさと去ろうとする。


「ちょっ! 志波姫!」

「なに。忙しいのだけど」

「えっと、俺、まだ逮捕されてないん、だが……」

「逮捕されたいの」

「いや、そうじゃなくてだな。ほら、昨晩の」

「現場の状況とあなたの人間性を知っていれば、あなたには女子寮に近づく度胸すらなく、だけど無謀な正義感を持っていることくらいはわかるわ」


 志波姫は今度こそ話が終わりと颯爽と昇降口を出ていった。

 あいつは思ったより俺のことをわかっていた。優しい言葉遣いではないが、彼女は俺が昨日の犯人でないと見抜き、きっと気絶する俺を男子寮まで運んでくれたのだろう。やっぱり、志波姫は結構いいところもある。


 寮に戻り、悶々とした気分で俺はステータスを開く。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【Status】

 赤谷誠

 レベル:0

 体力 100 / 100

 魔力 400 / 400

 防御 0

 筋力 30,000

 技量 300

 知力 0

 抵抗 0

 敏捷 0

 神秘 0

 精神 0


【Skill】

 『基礎体力』

 『基礎魔力』×4

 『基礎技量』×3

 『発展筋力』×3

 『かたくなる』

 『やわらかくなる』

 『くっつく』

 『筋力で飛ばす』

 『引きよせる』

 『とどめる』

 『曲げる』


【Equipment】

 『スキルツリー』


━━━━━━『スキルツリー』━━━━━━━

【Skill Tree】

 ツリーレベル:1

 スキルポイント:0

 ポイントミッション:『腕立て伏せ』

【Skill Menu】

 『基礎体力』

  取得可能回数:4

 『基礎魔力』

  取得可能回数:1

 『基礎防御』

  取得可能回数:5

 『発展筋力』

  取得可能回数:2

 『基礎技量』

  取得可能回数:2

 『基礎知力』

  取得可能回数:5

 『基礎抵抗』

  取得可能回数:5

 『基礎敏捷』

  取得可能回数:5

 『基礎神秘』

  取得可能回数:5

 『基礎精神』

  取得可能回数:5


【Completed Skill】

 『応用筋力』

  取得可能回数:0

 『基礎筋力』

  取得可能回数:0

 『かたくなる』

  取得可能回数:0

 『やわらかくなる』

  取得可能回数:0

 『くっつく』

  取得可能回数:0

 『飛ばす』

  取得可能回数:0

 『引きよせる』

  取得可能回数:0

 『とどめる』

  取得可能回数:0

 『曲げる』

  取得可能回数:0

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【本日のポイントミッション】

  毎日コツコツ頑張ろう!

   『腕立て伏せ』


 腕立て伏せ 0/1,000


【継続日数】17日目

【コツコツランク】シルバー

【ポイント倍率】2.0倍

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 俺はそっと腕立て伏せをはじめる。

 500回ほど連続でこなすと身体が熱くなってきた。

 上着を脱いで、上半身裸になって、さらに500回。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【本日のポイントミッション】

  毎日コツコツ頑張ろう!

   『腕立て伏せ』


 腕立て伏せ 1,000/1,000


【報酬】

 2スキルポイント獲得!


【継続日数】18日目

【コツコツランク】シルバー

【ポイント倍率】2.0倍

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 30分もかからずに、楽にクリアすることができた。

 筋力系のポイントミッションはボーナスステージだな。

 さて、どこへポイントを振ろうかな。


「にゃん(訳:待つにゃん。ツリーレベルをあげるのを忘れているにゃん)」

「ツリーキャット、お前、昨晩からどこに……」


 肉球がキモいクルミを渡してくる。

 俺は息を呑み、覚悟を決めて口のなかに種を放りこんだ。

 腕をぶち破って、血塗れの樹が飛び出して来る。

 この激痛には慣れそうにない。


「にゃん(訳:今回は気絶しなかったにゃん、着々と痛みへの耐性がついてきているようにゃん)」

「あんまり嬉しくないけど」


━━━━━━『スキルツリー』━━━━━━━

【Skill Tree】

 ツリーレベル:2

 スキルポイント:2

 ポイントミッション:完了

【Skill Menu】

 『基礎体力』

  取得可能回数:4

 『基礎魔力』

  取得可能回数:1

 『基礎防御』

  取得可能回数:5

 『発展筋力』

  取得可能回数:2

 『基礎技量』

  取得可能回数:2

 『基礎知力』

  取得可能回数:5

 『基礎抵抗』

  取得可能回数:5

 『基礎敏捷』

  取得可能回数:5

 『基礎神秘』

  取得可能回数:5

 『基礎精神』

  取得可能回数:5

 『第六感』   NEW!

  取得可能回数:3


【Completed Skill】

 『応用筋力』

  取得可能回数:0

 『基礎筋力』

  取得可能回数:0

 『かたくなる』

  取得可能回数:0

 『やわらかくなる』

  取得可能回数:0

 『くっつく』

  取得可能回数:0

 『飛ばす』

  取得可能回数:0

 『引きよせる』

  取得可能回数:0

 『とどめる』

  取得可能回数:0

 『曲げる』

  取得可能回数:0

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 新しいスキル『第六感』?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『第六感』

パッシブスキル

第六感を発動する

【コスト】なし

【リミット】1日1回


優れた直感はすべてを凌駕する

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 コストはない、リミットという概念が出てきたが、これは授業で習ったので知っている。要は回数制限タイプのスキルだ。1回使ったら1日経過するまで使えない。ある意味ではこの1日というクールタイムがコストと言えるかもしれない。


 しかし、第六感を発動するってわかりづらい効果だ。

 とりあえず解放してみるか。

 もうひとつは何を解放するか悩んだ末、俺は大人しく防御へポイント振っていた。昨日、透明人間に殴られた痛みを覚えている。マジで殺されるかと思った。

 被弾時のことも考える必要があるかもしれない。

 というわけで今回の解放するスキルは『第六感』と『基礎防御』だ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【Status】

 赤谷誠

 レベル:0

 体力 100 / 100

 魔力 400 / 400

 防御 100

 筋力 30,000

 技量 300

 知力 0

 抵抗 0

 敏捷 0

 神秘 0

 精神 0


【Skill】

 『基礎体力』

 『基礎魔力』×4

 『基礎防御』

 『発展筋力』×3

 『基礎技量』×3

 『かたくなる』

 『やわらかくなる』

 『くっつく』

 『筋力で飛ばす』

 『引きよせる』

 『とどめる』

 『曲げる』

 『第六感』


【Equipment】

 『スキルツリー』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「1日1回しか使えないスキルをどうやって試せばいいんだ……使ったらわかるのかな」

「にゃん!」


 突然、ツリーキャットが”背後から”鋭い爪を立てて襲いかかってくる。

 ビクッとして咄嗟に俺は攻撃をかわした。

 俺はのけぞり、見事にツリーキャットの爪を避けた。


「俺、なんで今、後ろからの攻撃がわかったんだ?」

「にゃん(訳:どうやらそれが『第六感』の能力みたいにゃん)」


 見えない攻撃を躱す……それは察しのよさと言えるかもしれない。

 相手の攻撃に対して事前にリアクションを行えるのだとしたら、回避という手段が使える。あるいは反撃という手段も選べるかもしれない。


 結構、強力なスキルなんじゃないか。


「にゃん(訳:赤谷くん、大事な話があるにゃん)」

「どうしたんだよ、そんな改まった雰囲気出して」

「にゃん(訳:実は赤谷くんに頼みたいことがあったにゃん。大事なことにゃん。本当に頼んでいいのかこれまで赤谷くんのことを観察して考えていたにゃん)」

「ほう。それで俺はお前のお眼鏡にかなったのか」

「にゃん(訳:合格だにゃん。赤谷くんはたまに無鉄砲で、なんか変な方にばかり思い切りがいいところがたまに傷だけど、それでも善なる心の持ち主にゃん)」

「善なる心か。常識があるだけだと思うが」

「にゃん(訳:常識はないにゃん。断言するにゃん)」


 断言されてしまった。猫に。


「にゃん(訳:以前も言ったかもしれないけど、私には大事なお役目があるにゃん。それは私が預かっていた13個の『血に枯れた種子(アダムズシード)』を集めることにゃん。訳あって散らばってしまった種子たち、その数はまだ10個もあるけど、この種子を、赤谷くんには集めてほしいのにゃ。そしてそのスキルツリーを大きく大きく成長させてほしいのにゃん)」

「別に構わないぞ。木が大きくなれば俺の能力も強化されるんだし。強い探索者になれれば俺は2,000万の借金も返済できるだろうし」


 利害は一致している。

 ツリーキャットの落とし物泥棒たち━━シードホルダーを全員やっつけやろう。落とし物は落とした人へ返してあげないとだめなんだ。


「にゃん(訳:よかったにゃん。実はまたひとり怪しげなシードホルダーを見つけていて……なんにゃ?)」


 ツリーキャットは何もない空間をじーっと見つめる。

 なんだろう。心霊でもいるのだろうか。


「にゃにゃ!(訳:この気配はダンジョン! ここに出現するつもりにゃ!)」

「え?」


 ブワーっと毛を逆立てるツリーキャット。

 俺の視界の先で突然、壁が砕け、黒い光が漏れてきた。

 光の向こうから何かが飛び出して来る。鎖だ。黒い禍々しい鎖だ。

 それらは意志を持っているかのように手足に絡みついてくると、勢いよく俺たちを引っ張って光のなかへ引き摺り込もうとする。

 俺は咄嗟に手元にあった木のトランクと古びた注射器を掴んだ。

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