メイド・ミーツ・ゴースト.1
曇天の空の下、ひやっとした木枯らしが原っぱを吹き抜ける。
そのメイドは大きなトランクケースを抱えて、草が抜かれただけの小道の途中でぴたりと立ち止まった。
黒い無地のワンピースに白いエプロンをかけ、頭にはホワイトブリム。
焦茶色の長い髪を、赤いリボンで後ろで束ねている。
その二つのツリ目が捉えているのは、館。
街なかに時々あるような、芝生の庭が広い家____の、比ではない。
巨人が横たわったくらいの、下手をすれば"運動場"の広大な土地。
そして、その真ん中にそびえる、どっしりした建物。
数えてみれば三階建て、しかし横は測ろうとしても測りきれる気がしない。
館の、白いペンキの木の壁は、永い時間の経過で発色の良さを失っている。
(この調子だと、中もきっと……)
と一瞬メイドは思う。
しかし次の瞬間、その脳裏には、別の優しく柔らかい声が浮かびあがっていた。
『あのね、___。そこは内観も外観も……えーっと……ち、ちょっと古びてるらしいけど、部屋がとにかく多いらしいんだよ。だから____私が咳したって、誰も聞こえやしないよね』
明るく、何故か誇らしげだった声色。
それを思い出し、メイドは少し口を引き結ぶ。
(……)
メイドは改めて館を見上げ見つめると、やがて、何か決意したような光を瞳に滲ませた。
そして、草まみれで整えられていない、門への一本道を歩き始めた。
その姿を____。
悠々と見下ろす瞳が、二つ。
それは館のバルコニーの柵に足を組んで座り、口角をにやっと三日月の形に曲げ、ただ笑っていた。




