家路に着く1
運転する母と隣の夕紀はそのままだが、後ろの三人は行きは車に乗った順に座ったが、帰りも三人は同じ席に座っていた。それが定着しているのが夕紀には可笑しかった。
特に真ん中に座る桜木は、本からの知識で人を見ようとする頭でっかちとばかりに思っていた。が今日は彼が居なければこんなにスムーズに恵子さんから、道子さんの初恋の滝川さんまで辿り着けなかったかも知れない、とつくづく感じたからだ。それほど行宗恵子さんから桜木は、上手く話を聞き出しているのには感心させられる。
書物から知識を得て、人や社会と一定の距離を置く彼には、人の気持ちが解るはずがないと夕紀は思っていた。今日は何十年振りに知る妹の消息に接した姉の恵子さんの心情を、あたし達には到底及ばないほど、桜木は上手く酌み取った。これで桜木に対する考え方が一掃されたことは確かだ。
今は思ったより時間を食ってしまって、帰りは美紀の実家で少しはゆっくり出来ると思っていたのが寄れなくなった。
「美紀ごめんね」
夕紀は今回の切っ掛けを作ってくれた美紀には、実に申し訳なかった。
「良いのよ。行きしなにばあちゃんと十分話せて、また寄れば帰りが遅くなっちゃうからね、それより夕紀のお母さんは明日はお仕事だから、春休み中のあたしたちとは違うからお母さんありがとう」
美紀と一緒にみんな礼を言った。母はハンドルを持ったまま軽く、どういたしましてと会釈した。これだけ思いやりがあるのに、なんで秀樹には勉強一辺倒なのかやっぱり親子なんだ。
車は美紀の実家を通り過ぎて、米子市に向かいそこから高速に入った。




