行宗道子の浮かび上がる過去1
恵子さんは歳が考えられないほど、しっかりとした足取りでロビーまで歩かれた。親戚に系図が残る家柄だけあって品格もあった。
広いロビーの窓側は見晴らしが良い。その一画にあるソファーにみんなが身を沈めると、先ず夕紀が写真を見せて、この人が妹さんの道子さんがどうか見て貰った。
恵子さんは夕紀から手渡された写真を手に取るとじっくりと見詰めた。この時間はほんの一瞬だが、彼女を取り巻く者には実に長く感じられた。
「随分と古い写真なのね」
と言いながらも、彼女はひと目見て直ぐに妹だと確信して、写真を夕紀に返しながらその消息を尋ねられた。
「今はその古い写真しか残っていないんです」
過去形の言葉に気落ちした彼女は、それで悟ったらしい。
「そうなの、其れは残念ね、其れで妹は何処でいつ亡くなったの」
「京都で、ひと月前でしょうか」
妹の死を確信すると彼女は少しは気を取り戻した。
「それであなたが最期を看取ったの……。そんなことはないわよね、まだ学生さんでしょう。妹とはどう言う関係だったか知らないけれど……」
「あちらにいるのがあたしの母で、後はみんな大学生です」
父は三千院の近くで喫茶店をやっていて、観光客以外に近所の人が集まる憩いの場になっていました。そこへやはりご近所で良く店へ顔を出す大家さんが、店子の住人が孤独死して身寄りを捜してくれと頼まれたのです。私たちは大学のサークル活動の一環として引き受けて今日に至った経緯を説明した。
そうなの、其れは大変だったでしょうと労ってくれた。
そこで桜木が、別に例のツーショットの写真を見せて、この相手の男性に心当たりがないか訊ねた。これには夕紀が驚いた。まだ唐突すぎて、彼女の心証を損なう恐れが生じる可能性があるからだ。




