行宗道子4
美紀はいつも宍道湖を見て育ったが、松江や出雲市から見る背景の山向こうは一度も行かなかった。だから宍道湖の美しさに隠れて、こんな裏寂しい存在を知りたくなかったのかも知れない。
向こうでも桜木と米田もこの海を眺めているが、余り感傷に耽っているようには見えなかった。
夕紀が受付から戻って来て、これから行く恵子さんの部屋へ案内してもらえそうだ。
受け付けの人が内線電話で事情を説明すると、今まで分からなかった妹の消息が解ると聞いて是非ともお会いしたいそうだ。
道子さんについて話を伺う前に、先ずは彼女の写真を見てもらって本人確認をしてからだ。間違いないと思うが、やはり部屋に近づくにつれてここまでの苦労が報われると思うと、胸の鼓動は高まる。美紀も桜木も米田まで、その緊張感が伝わって来る。お母さんは運転で大変なのか、ここで待ってる言い出し、四人で行った。
行宗恵子さんの部屋は二階の奥だ。二階のエレベーターを出ると長い廊下の突き当たりがそうらしい。
ドアをノックすると、どうぞと言う声に受け付けのおばさんはドアを開けてみんなを導くと「先ほど連絡した面会の方です」と言っておばさんは部屋を出た。
部屋は八畳ほどの洋室にベッドと椅子や机があり、ビジネスホテル風な処に炊事場と少しの丁度品が在った。
恵子さんは窓辺の椅子に座っていたが立ち上がりみんなを迎えた。
「まあ一度に孫みたいなこんなにお若い方が沢山来られたのは初めて」
と嬉しいそうに言われたが「これじゃあここは狭いから」とロビーの方へ戻った。お母さんはゆっくりできる思ったのかエッと言う顔で迎えた。だから最初からそうすれば良かったが、受付のおばさんは気の利かない人らしい、と夕紀たちは思った。




