美紀の実家へ2
「それより、その山下道子さんって云う人は、よくまあご主人を亡くされて五年もやってられるものね」
なんか険のある母の言い方だ。
「五年処か今回のは不慮死だから、もっと一人で長生きしてもおかしくなかったのに……」
「そんなに一人で長生きしたって気持ちが持たなくて直ぐに萎えてしまう」
「そうかなあ」
「あんたはまだ若いからよ、女が一人で歳取って見なさいみっともない」
今の母が言うと、なんか実感がこもって背筋が寒くなる。
「そうかなあ、男でもみっともない人も居るよね、なんかスーパーマーケットの花壇に座ってカップ酒を持ってぼんやりしている人を時々見かけるけど、あれはみっともないとお母さんは思わないの?」
「それはみっともないと言うより、家族に見放されて家に自分の居所が無いんだろう」
母は言ってはみても、暫くぼんやりして、そうかもしれんかと曖昧になった。おそらく老いてゆく自分の未来を途中から重ね合わせたのかも知れない。
車は一本道の国道から賑わう市内ヘ入ると、そんな愚痴が吹っ飛んでしまった。先ずは出町柳で桜木と米田を乗せて百万遍近くで美紀を乗せた。
後部座席はあとから乗った美紀が夕紀の後ろになる。その隣が桜木でその隣が米田だ。三人は運転手の夕紀のお母さんに、それぞれ礼を言って乗ってくる。母の優香はその都度娘がお世話になっているとキチッと返礼していた。これには夕紀も、さっきの気落ちして寂しそうな母は何なの、とちょっと眉を寄せて、そっと運転に集中する母を覗き見た。




