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美紀の実家へ1

 母は珍しくあの喫茶店でなく我が家へやって来た。もちろんばあちゃんとは顔を合わさない。ただお父さんの車を借りに来たのだ。鍵は前日から夕紀にお父さんは預けてくれた。

 昨日の夕食後に事情を説明した。そうかあの孤独死したお婆さんの身元らしきものがそこまで分かったか。間違いでなければいいが。美紀ちゃんの所に遊びに行くつもりで、無理するなと労ってくれて鍵を受け取って、今朝、迎えに来た母に手渡した。母は乗ってきた軽自動車と入れ替えて二人は出掛けた。

「あの人なんか言ってた」

「事故のないようにって、後は秀樹が働きたければ店で雇うって云ってたけど」

 ありきたりなのね、もっと気の利いたこと言えないのかしら。どっちもどっちだと夕紀は思った。母と娘はよく晴れた春の陽だまりの中を車を走らせた。

「この前も聞いたけど、離婚したのにどうしてこうも行き来が出来るの ? それが不思議だけど」

「この歳になると、よほどの事がない限り異性からは見向きもしてもらえないからね」

「ヘエー、それじゃあお父さんを惚れ直したって云う訳じゃあないのか。秀樹が独り立ちし始めてそれでお父さんの所へちょこちょこ来るようになったわけ、それって愛情じゃあないよね」

 いざという時に相談相手になれるのは、もうお父さんしかいない歳になっただけか。

「愛情も月日が経つとちょっと距離を空けたくもなるのよ」

 母も素直じゃない、早く言えば鬱陶うっとうしいのか。

「そうかなあ。今でもお母さんぐらいの夫婦がべったりしているのも結構見かけるよ」

 それはあくまでも他人の目を通して見ているだけで、本人同士はどうだか解らんよ、と冷ややかな目で答える処が、お父さんへの当てつけのように聞こえるから、不思議なもんだ。


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