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桜木の真意4

 桜木の実家はそこそこの旧家らしく、親も地元では名士で知られて、その影響をもろに受けて、高校を出るとそのまま京大の文学部へ進んだようだ。

「じゃあ学校へ行きだしてからは、近所の子と遊ぶより本を読むようになったの」

 美紀に言われても、小学校時代まではやはり家に帰ると鞄をほっぽり出して、みんなと遊びに行っていた。小学生の六年頃から進学を意識して、勉強に熱を入れだしたが行き詰まると小説を読んで気分転換を図っていた。それが中学生になると、小説を読む合間に学校の勉強をするようになる。大学生になってこっちで勉強すれば、人間を取り巻く環境に関心が向き出して、そう言う方面の講義を聴くうちに夕紀と知り合った。

「だから夕紀からはさあ、多くの作家が小説の中で書いている人間の心理を本から読み解くようになったのさ」

 夕紀にもそう言うところがある。

「それは夕紀ちゃんから教わったの?」

「まああの子は結構田舎では見かけないほど、垢抜けした考えを持っていたのに驚いて、どうすればこう言う考え方に行き着くんだろうと、こっそりと同じ講義を聴くようになったんだ」

「でもあたしは桜木君を一度も見かけなかったのに」

「そりゃあそうだ。夕紀は文学部の講義を聴きに来ていたからなあ」

 要するに人間学部の基礎を多くの作家から酌み取ろうとしたところが美紀たちとはちょっと違っていた。

 そうか桜木は人間学部に興味を持ち、夕紀は文学に関心を持って、そう言う共通点で二人は接したのか。取りあえずこの中里介山は、その双方の共通点らしいから読むと云って、美紀は最初の一巻を持ち帰った。


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