かすかな希望3
「ねえ夕紀、ひとつ桜木に聞きたい事があるけど……」
ホウ、やっと告白する気になったか。
「どうしてあいつは、こんなにあたしたちの活動に頭を突っ込むの」
ハアと夕紀は気が抜ける。
「それは桜木が何度も言ってるじゃん。四十年前の恋がどんなものかって」
「それって神代の時代から突き詰めれば同じじゃん」
「まあそりゃあ人を好きになる恋に昔から変わりはないけれど、中身は千差万別でパターンは色々と違うじゃん」
「だから桜木はそれは口実にすぎず、なんか他に目的があると思わない。それが判らないとあの本は借りにくい」
「でもあの本を勉強すればあいつも気が変わるかもよ」
そうかなあと考えていると、あのお店と夕紀は顎で示した。
なに珍しいわね、と店で母に云われて話があると云って二つショートケーキを買って、大学の休憩場所で母と待ち合わせた。自販機で飲み物も買ってそこの長椅子に二人は座った。
「ねえ夕紀、桜木君って丹後の網野って云ってたけど、実家は何やってんの」
「それがよく分からないのよね。ただ琴弾浜の近くらしいけど」
なにその浜は、と美紀は琴弾浜を知らないらしい。
「砂浜を踏むとキュキュッと音が鳴るの。それだけ砂が汚れていない証拠だって自慢していた」
「なるほど、あ、お母さん来たらしいはね。じゃああたし帰る、多分みんなは車の都合に合わせるからよろしく」
丁度ケーキも食べ終わり、引き上げるのと入れ替わるように、すれ違いざまに美紀は母に挨拶して帰った。




