進まぬ解明4
「米田君はもう三十軒の調査を終えたのか? あいつ、ちゃんとやったのかしら」
早過ぎる米田に、夕紀は今回ほどあいつの真剣さが欠けるのに呆れていて「ひょっとして美紀あんたのせいじゃないの」と言いがかりを付ける。
「可怪しな事をお言いでないよ、つれなくしてるのは桜木君だから」
「俺がいつ米田を継子扱いしたと云うんだ」
「それより昨日の桜木君の勢いで、これで一件落着と思ったのに何なのこのていたらくは」
「でもこの登録した人の中で行宗一族百人以上が連なる系図がひとつでも見つかればこの苦労は一瞬にして報われるぞ」
「何を寝言云ってんのよ、もう疲れた」
三千院近くの長閑な気の利いた風景ならいざ知らず、道路とそれに沿った裏通りに建ち並んだ家ばかり見て、美紀はいい加減ウンザリして手を止めた。
「それで人名研究のお偉いさんへのコンタクトは取れそうなの」
夕紀はパソコンから離れて、あの家から持ち出した古い昔の電話帳を手に取った。
「向こうは敷居が高いからいきなりじゃあ相手にしないから、順序って云うもんがあるだろう」
「ああーあ、この百五十人の中に道子さんの親戚は本当に居るのかしら」
夕紀は電話帳を見ながら愚痴る。
「だから、それをこれから徐々に絞って行ってるんじゃないか」
「それで最後は誰も居なくなっちゃったって事はないでしょうね」
夕紀は桜木のこのやり方に疑問を持ち始めている。特に半分近い人が住んでる広島は戦災で殆どが焼失して、桜木の提案は埋没仕掛けていた。他府県の行宗家から、百人以上の人脈が解る家系図が見つかれば話は別だが、ほぼ望み薄で意気消沈している。




