進まぬ解明2
美紀が早速にスターバックスのコーヒーを差し入れた。
「だいたい今ごろ家系図なんて保管している家がどれだけあるの」
この作業を始めて美紀が最初にぶつかった疑問だ。
先祖代々の系図が在る家は処分出来るはずがない。そこで戦災を受けていない街は結構残っているが、田舎でも激しい空襲を受けた所は残ってないらしい。
夕紀の話では京都では京町家が多い市内中心部には、そんなに立派な門構えの家でなくても結構古い古文書や記録は残っている。逆に振興住宅が多い周辺部には立派な家が有っても家系図なんて保管している所はないのだ。
これは美紀の島根と夕紀の京都では、そう言う類いの古い記録物は、二人ともおばあちゃんに良く聴かされたらしい。
昔から残っている古い町ほど、中心部にそう言う物がある。周辺部になるほど振興住宅が多く、家系図どころか核家族化して昭和の面影さえ薄れていた。
特に問題なのは行宗家が集中する広島に於いては、桜木の云う古い家は見つからないのだ。問題は戦災で、最も酷かったのは原爆が投下された広島はその傾向が激しい。戦後の七十年で見事に復興しても戦前からの記録が少ないのだ。
あれほど豪語した桜木も思った以上に苦戦させられる。都会では一族の記録を残している家は皆無で、郊外や田舎に行かないと見つからない。地方でも一軒家は少なく、まして立派な門構えも皆無で、人は便利さと疎遠さを追求した町中では、殆どが集合住宅ばかりになってしまった。
島根の地方で育った美紀も、これは尋常じゃあない、そんな家をどうして見付ければ良いのよと桜木に喰ってかかった。これには桜木も、自分の甘さにほどほど参って仕舞った。
「桜木くん、今の世の中で家系図なんて大事に残せるほど住宅事情は良くないって事を知ってたの」
ウ〜んと捻りながらも桜木は反論を試みる。




