美紀は夕紀の家に1
遠ざかる宇田川さんを乗せたバスを見送ると夕紀は「さてと今日は、これからさあ仕事仕事」と美紀の肩を叩くと美紀もエッ! と驚いた。宇田川さんの言った喋り方が似ているのを確認する必要があった。
終点のバスターミナルから国道沿いを歩くと、直ぐに車一台が通れるぐらいの道に入った。まだこの辺りは参道に近くて、周囲はモルタル外壁の瀟酒な家が建っている。更に狭い道になると、トタン葺きや茅葺きもチラホラ見えてくる。そんな人気のない田舎路を通り、二人は夕紀の実家へ向かった。
「家のおばあちゃんの観察力は宇田川さん以上だからね。直ぐに美紀の癖を見抜くからね」
しかも観光でよそよそしく接するのでなく、生活環境の中で飾り気のない言葉を話すと、宇田川さんよりもおばあちゃんは、特徴をハッキリ掴むと夕紀は言い切る。
「だから美紀、家のおばあちゃんとはいつも喋っているように地で行くのよ」
変に格好つけちゃダメだと念を押した。
「しかし初対面でそれはきついわねぇ」
直ぐに地がでる美紀ならへっちゃら、と応援しているのか貶しているのか解らない。美紀のごちゃ混ぜな性格が結構功を奏するから世間は不思議なもんだ。
先ずは余計な先入観念から解き放つ必要がある。おばあちゃんの癖や性格を事細かく美紀の頭に植え付ける必要がある。そこに虚構が入ると解析が不正確になる。これらを実家に着くまでに言って聞かせた。
おばあちゃんは亡くなった道子さんより六つも上だが、結構あの当時を覚えている。だからまだ三十代の宇田川さんの比ではないらしい。
「だからさっきは生き字引って言ったのか」
おばあちゃんは、訛りのある喋り方や癖で、地方の方言に関してはよく知っていた。




