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苔むす庭の石仏4

 これには夕紀もそっと奥に目を向けてみたが父は気乗りしないようだ。

「あるがままで良いらしいのよ、お父さんは」

「ちゅうことは何もしない」

「ううん美紀、ちょっと違うの。何も引かないし何も加えないって云うのが父の信条なの」

「そう云う言い方をすれば筋が通るけど、ちょっと言い換えれば頑固なんだ。でもこの珈琲は違うけど」

 と美紀は笑った。

「味って拘りなのよ、だから代々その家に伝わっているお袋の味って言うのがその代表でしょうね」

 宇田川は美紀の例えに乗った。

「そうだ、道子さんとお昼は一緒に食事されました?」

「夕紀って、何で急にそこへ話が飛ぶのよ」

「道子さんの好みの味によって生まれた場所が特定出来ないかなあと思ったの」

「そうねー、あっさり味より少し濃いめかしら。でも関東の人じゃない様な気がするけど」

 漬け物を美味しそうに頂いていた、と宇田川さんは想い出してくれた。

「じゃあ都会より田舎志向だなあ」

 美紀の例えに夕紀が、どうしてなのと突っ込む。

「都会のように何でもあるわけないから、つい漬け物で済ませていると段々と美味しい漬け物の漬け方を覚えちゃうとそんじょそこらのご馳走より箸がつい行っちゃうのよ」

 なるほど、これも宇田川由香さんのお陰でまた一つ判ってきた。それでも宇田川さんにすれば道子さんのことは殆ど判らなくてごめんなさい、と云われると二人は恐縮してしまう。

「今日は同じ場所を回ったのに、あなた達のお陰で三千院の印象も随分と変わるから今日は愉しかった」

 と云われて宇田川由香さんをバス停まで送った。


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